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【先行レビュー】Netflix『F1:栄光のグランプリ』シーズン4:欠かせない存在だが、物足りなさと無理矢理感は否めない

motorsport.comは『Formula1:栄光のグランプリ』シーズン4のNetflixでの一般公開に先駆けて行われた試写会に参加。先行レビューをお届けする。

Lewis Hamilton, Mercedes, 2nd position, congratulates Max Verstappen, Red Bull Racing, 1st position, in Parc Ferme

 motorsport.comは、F1のドキュメンタリーシリーズ『Formula1:栄光のグランプリ』の試写会に参加。先行レビューをお届けする。

 3月11日(金)にNetflixで独占配信されるこのシリーズは2019年に初登場して以降、続くシリーズでも大きな成功を収めてきた。2020年のF1を追ったシーズン4は、バーレンでのプレシーズンテストから最終戦アブダビGPまで、スリリングかつドラマチック、時には物議を醸した1年を10エピソードに集約している。

Formula1:栄光のグランプリ シーズン4 公式トレーラー


 Netflixのドキュメンタリーシリーズは、これまで大きな成功を収めてきた。この“Netflix効果”によってF1は新たな視聴者を獲得し、“ライト層”から“ヘビー層”まで、ファンの幅が大きく広がることになった。

 前作のシーズン3では、公開直後にNetflixの世界ランキングで1位に。昨年Netflixで公開された中で最も再生された番組となり、Netflixでは珍しく視聴率でファーストシーズンを上回った。

 しかし、新作のシーズン4は間違いなくこれまでで最も重要なシリーズと言えよう。その成功に加えて、これまでの主たる批判であった「創作上の特権(話の脚色)」の度合いが注目されている。映像作品として色をつけるのか、スポーツとしての事実に忠実でいるのか……適切なバランス感覚が求められているのだ。

 昨年のF1には、このドキュメンタリーシリーズにはもってこいの“正真正銘の”タイトル争いがあった。マックス・フェルスタッペン(レッドブル)とルイス・ハミルトン(メルセデス)の一年を通じたドッグファイトに焦点が置かれるのは当然ではある。また、F1をNetflixのドキュメンタリーシリーズでのみ知る人向けに、このスポーツの基本的な説明がエピソード1で上手にまとめられている。

 一方で、シリーズを通じてフェルスタッペンに関する部分の“物足りなさ”は否めない。フェルスタッペンは昨年、「Netflixはライバル関係を捏造している」としてNetflixの撮影協力を断っており、チャンピオン獲得までのストーリーの多くはチーム代表のクリスチャン・ホーナーが語りを務めている。役どころを抑えているからか、ホーナーは“ヒール”役としてライバルチームであるメルセデスのトト・ウルフ代表に辛辣な言葉を浴びせかけていた。ひとつ例を挙げると、テレビ画面に映ったウルフに対し、ホーナーは「ああ、黙ってくれよ……アイツは何ひとつ考えてないんだ」と口にする場面もあった。

 そしてこうした構図は、かなり繰り返し登場していた。ふたりの、そしてメルセデスとレッドブルのライバル関係については、泥仕合のような“いがみ合い”ではなく、もう少しニュアンスを含んだ説明が必要だったのかもしれない。

The Wolff-Horner rivalry could have done with more nuance instead of mud-slinging.

The Wolff-Horner rivalry could have done with more nuance instead of mud-slinging.

Photo by: Sam Bloxham / Motorsport Images

 また、ハミルトンのシーズン4での登場シーンは控えめではあったが、彼のインタビューではこれまで世間が知ることはなかった彼の姿が垣間見えた。アゼルバイジャンGPの最終盤で自らのミスで勝利を逃した際に、ウルフへそのフラストレーションを漏らし、チケットが完売になったイギリスGPを前に新型コロナウイルスの感染が再び広まる不安を語るなど、F1の舞台裏をカメラが追うNetflixのシリーズならではのシーンも見受けられた。

 フェルスタッペン以外にも、本稿執筆時点でメディア向けに公開されている8つのエピソードを通じて、多くの物足りなさを感じる。フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)やセバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)のふたりはほとんど登場せず、フェラーリやマクラーレンをメインに据えたふたつのエピソードに押し込められていた。

 シーズン3でランド・ノリス(マクラーレン)とカルロス・サインツJr.(当時マクラーレン/現フェラーリ)のライバル関係が捻じ曲げられていたように、シーズン4でもノリスと新加入のダニエル・リカルドのライバル関係が緊迫する様子が全面に押し出されているが、それが正しいモノだとは全く感じられない。

 栄光のグランプリは、F1ドライバーやチーム代表などひとりひとりの個性にスポットライトを当てた編集で成功を収めてきたが、今シーズンもその例に漏れることはない。

 明るくオープンな性格が故に過去3シーズン多く登場してきたリカルドは、イタリアGPでの勝利に関するエピソードにやや物足りなさを感じるものの、シーズン4でも相変わらずよく映っている。トト・ウルフの妻のスージー・ウルフやクリスチャン・ホーナーの妻ジェリ・ハリウェルの登場というのも新鮮だ。

 角田裕毅(アルファタウリ)をメインに据えたエピソードで彼が見せる、ありのままの姿も見どころのひとつ。同じエピソード内でエステバン・オコン(アルピーヌ)についても触れられており、アルファタウリとアルピーヌのコンストラクターズランキング5位争いを軸にしたエピソードではあるが、不思議な組み合わせとも言える。角田とオコンで別々のエピソードがあっても良かったのに……と思う節もあるが、オコンのハンガリーGPでの勝利は、彼のこのシリーズでの役どころを考えれば適切にカバーされていると言えよう。

Haas and Gunther Steiner, Drive to Survive's cult hero, get a full episode to document their struggles.

Haas and Gunther Steiner, Drive to Survive's cult hero, get a full episode to document their struggles.

Photo by: Andy Hone / Motorsport Images

 そして、その激しい口調と人相からカルト的人気を誇るハースのギュンター・シュタイナー代表とそのチームも、シーズン4で再びスポットライトを浴びている。ファンにとっては喜ばしいことではあるが、その内容はやや緊張感のあるモノとなっている。

 ハースに焦点を置いたエピソードでは、ニキータ・マゼピンのデビュー当初の苦悩と、マゼピンがチームメイトのミック・シューマッハーと同等のマシンを手にしていないことからチームへの資金援助打ち切りをチラつかせるマゼピンの父ドミトリーの影響についてを描いている。ロシアGPでのマゼピンのパフォーマンスを大きく扱うことで、彼の成長を描こうとしたようだが、結局のところ彼は最下位に終わっている。如何せん無理があった。

 F1 2021年最大のドラマは、メディア向けの試写会ではまだ公開されなかった最後の2エピソードに集約されているようだ。ハミルトンとフェルスタッペンのチャンピオン争いの顛末を描く際、このシリーズのターゲットとなる視聴者層は脚色をさらに推し進めることを看過するかもしれないが、従来のF1ファンが戻ってくることを望むのならば、最終戦アブダビGPとその混乱については現実に忠実であるべきであり、“ごまかし”はできないはずだ。

 2021年はF1史上最も苛烈な1年であったのにも関わらず、Netflixのドキュメンタリーシリーズが肝心な点で"浅い"のでは意味がない。それがシーズン4における最大の試練となるだろう。

 
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