F1 アゼルバイジャンGP

FIA、“縁の下の力持ち”レースオフィシャルの教育部門開設へ。ベン・スレイエム会長「Amazonでは注文できない。自ら育てなくては」

FIAはレース運営を円滑にすべく、新たにオフィシャル部門を開設する。

FIA president Mohammed Ben Sulayem

FIA president Mohammed Ben Sulayem

写真:: Dom Romney / Motorsport Images

 FIAは9月16日(月)、レースのより良い運営をサポートすべく、新たに「オフィシャル部門」を開設すると発表した。

 レースオフィシャルは、レースディレクターやスチュワード、コースマーシャルなど、全世界でレースの運営に関わる“縁の下の力持ち”とも言える。FIAのモハメド・ベン・スレイエム会長は、出来合いのモノでは対応できないとして、オフィシャル部門を設立することが非常に重要であると語った。

 FIAのオフィシャル部門開設の動きは、レースを監督するスチュワードの増員を求める声を受けてのモノ。F1はここ数年、1シーズンあたり24戦でカレンダーが構成され、人材面でのサポートが論点のひとつとなってきた。

 F1アゼルバイジャンGPでmotorsport.comの独占インタビューに応じたベン・スレイエム会長は、次のように語った。

「とても重要なことだ。漫然と進むことはできない。そういうモノだ。改善しなければならない」

「オフィシャルやレースディレクターに目を向けると、我々には問題がある。そして問題は(十分な数の)レースディレクターがいないことだ」

「では、ただ単にレースディレクターを手配すれば良いのだろうか? そうではない。私は『AmazonやGoogleでは注文できない。そうではなく、彼らを自ら育てる必要がある』とツイートしたことがある」

 またベン・スレイエム会長は、F1がグランプリの週末にレースディレクターひとりに頼るのは「危険だ」と考えている。

「今のF1の状況だけを考えれば、ひとりに頼ることはできない。神に誓って、彼の身に何かあってはならないし、(緊急事態の時は)遠くにいる誰かを連れてくることになる……」

「では、どうするべきか? 完璧ではない誰かを連れてくるのか? スペアがひとりかふたりいるとしよう。もし万が一、健康状態や何かしら起きた場合、彼らをここに連れてくるのにどれだけの時間がかかるだろうか? だから、我々は需要のレベルを満たす必要があるし、良い供給路を確保する必要がある」

Niels Wittich, Race Director, FIA

Niels Wittich, Race Director, FIA

Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images

 FIAの新オフィシャル部門は、レース運用における可視性と効率性を高め、まとまりのあるプロセスを作り上げるべく、地域レベルでオフィシャルの人材確保もサポートしていく。しかしベン・スレイエム会長は、新しいボランティアを見つけることは簡単ではないと認めている。

「人々は今、自身の時間を捧げる場所と方法を選んでいる。だから病院へ行って、人々を助けることを好むのだ」

 ベン・スレイエム会長はそう語る。

「しかし、彼らが愛するスポーツのために『こうしたい(オフィシャルとして貢献したい)』と思った時、我々は『申し訳ない』と言って、古いシステムに固執するのだろうか? そうではない」

 新しいオフィシャル部門は、2025年初頭から全てのレベルのオフィシャルをサポートすることになり、ベン・スレイエム会長は待望の開設だったと語った。

「私は素晴らしいことだと言った。色々な部門があるが、スチュワーディングとレースディレクションという我々にとっての脊髄のような部門がない。そして我々は今、適切な部門を手にした」

 新しい部門の開設と並行して、FIAではレギュレーションの見直しと変更が必要に応じて行なわれる他、オフィシャルのライセンス取得、維持、アップグレードの基準が定義されていく。これが新しいオフィシャルの採用と、才能ある人材の登用を行なう機会に繋がるとFIAは考えている。

 ベン・スレイエム会長は、過去にはオフィシャルの人事活動がギリギリな状態になっていたと説明した。

「これまでは『もうひとりレースディレクターが必要だから連れてこよう』とか『スチュワードが必要だから彼を起用しよう』という状態だった。こうはいかない。それ危険だし、間違っている」とベン・スレイエム会長は言う。

「若い女性や男性で、このスポーツに関わりたいと思っている人たちは沢山いる。しかし彼らを指導し、訓練し、手を差し伸べる必要がある。この部門が正式にそれを担当する」

「ボランディアでもできるが、それ専門の部門が必要だ。必要なのだ。適切な部門を持たずに、どうやって長年運営してきたのか分からないよ」

 

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