『世界のレーシングカー博物館探訪記〜百聞は一見にしかず〜』:第1回 日本F1の聖地? ホンダ・コレクションホール

世界中に存在する、レーシングカーを扱った博物館……有名どころからマイナーどころまで、“趣味”が高じて世界150箇所以上のミュージアムを訪れてきたモータースポーツジャーナリストが、その魅力を紹介する連載企画第1回。

『世界のレーシングカー博物館探訪記〜百聞は一見にしかず〜』:第1回 日本F1の聖地? ホンダ・コレクションホール

 唸るエンジン! 最新のテクノロジー! 白熱するスリリングな接近戦! 超クールなレースマシン!……これらはモータースポーツの魅力として語られることの多い要素で、浪漫であると言えるのではないか。

 幸い現在はレースに関する情報もインターネットで多々手に入る……しかし、こう思ったことはないだろうか?

『そういえば、間近でレースマシン見たこと無いな?』と。

 画面越しのクルマもバイクも、たしかにカッコいい。超クールだ。だがレース史を彩ってきた“実物”を見ればあなたは更に虜になることだろう……そしてそれは直ぐにでも体験できる。各国に存在する“レーシングカー博物館”で。

 この連載では、世界各国に存在する150箇所以上のレーシングカー博物館を、半分“趣味”で回ってきたモータースポーツジャーナリスト原田了が、魅力たっぷりに文章と写真で紹介する。

 第1回は日本から世界へ打って出た日本モータースポーツのパイオニアであるホンダの企業博物館“ホンダ・コレクションホール”だ。


 1998年の3月にオープンしたホンダ・コレクション・ホールは、本田技研工業(ホンダ)の創立50周年記念事業の一環として企画整備されたもので、やはり同社の創立50周年記念事業の一環として開発が進められてきたツインリンクもてぎの一角に位置している。

 ホンダの企業博物館であり、同社がこれまでに販売してきた製品の多くを収蔵展示しているのはもちろんのことだが、やはり同社がこれまでにチャレンジを続けてきたモータースポーツ参戦車両も多く収蔵展示。F1マシンも数多く展示されていることから、F1の聖地としても知られている。

 実は、ホンダの創業社長である本田宗一郎さんは、過去を振り返ることが嫌いだった、と伝えられている。

 技術者として過去を振り返り、思い出に浸っているくらいなら、その分、新たな技術的チャレンジをすべき、ということだったのだろう。創業社長が「(昔を振り返ることは)必要ない!」と言った以上、社員としては従うしかない。それでも、宗一郎さんの本心を見抜いていた社員は、宗一郎さんに隠すように、かつてホンダがリリースしてきた商品群を集めていったのだ。

1989 McLaren MP4/5 Honda RA109E
1989 McLaren MP4/5 Honda RA109E
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写真:: Ryo Harada

1987 Lotus 99 Honda RA166E
1987 Lotus 99 Honda RA166E
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写真:: Ryo Harada

2002 Jordan EJ12
2002 Jordan EJ12
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写真:: Ryo Harada

1988 Honda V6 Turbo Formula 1 Engine Type RA168E for McLaren
1988 Honda V6 Turbo Formula 1 Engine Type RA168E for McLaren
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写真:: Ryo Harada

1983 Spirit 201C(R) ,1984 Williams FW09(L)
1983 Spirit 201C(R) ,1984 Williams FW09(L)
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写真:: Ryo Harada

 そして集められた個体は、鈴鹿サーキットの敷地内にあったボーリング場の地下倉庫に集められ、1998年3月、コレクションホールのオープンに向け、栃木県の茂木町にあるツインリンクへと移送された。

 ちなみに、宗一郎さんは『製品は企業の顔。ホンダを知ってもらうにはホンダの製品をお見せすればいい』とも語っており、自らが生み出してきた商品に、無類の愛着と、並々ならぬ自信を持っていたことも容易に想像できる。

 コレクションホールにおける収蔵展示の方針は動態保存(※レーシングマシンなどを走行可能な状態に保つこと)を謳っており、ホンダ初の4輪車である軽トラックのT360からF1マシンや2輪のロードレーサーまで、ほとんどの個体が動態保蔵されている。その確認のために付属のミニコースやツインリンクもてぎのロードコースを使っての動態確認テストも行なわれており、コレクションホールの目玉コンテンツのひとつとなっている。

 そんなコレクションホールには、F1の1964年シーズン第6戦、ドイツGPでデビューを果たしたホンダ製F1グランプリ実戦マシン第1号のホンダRA271をはじめ、RA272、RA273、RA300、RA301と歴代のホンダ製F1マシンが収蔵されている。そしてエンジン供給メーカーとして復帰した第二期のスピリットやウイリアムズ、ロータス、マクラーレン、ティレル……etc.と数多くの車両ももちろん展示されている。

 つまりコレクションホールを訪れたなら、F1グランプリにおけるホンダの挑戦の歴史が展望できるのだ。しかもホンダRA271が、開発の“お手本”としたクーパーT53・クライマックスと並べて展示されていて両車を見比べることができる。

 またRA271に搭載されていた横置き60度V型12気筒という、革新的なパッケージで組み上げられたRA271Eエンジンや、1.5L+ターボ時代の88年にマクラーレンが16戦15勝を飾りシーズンを席捲したV6ツインターボRA168Eエンジンも単体で展示されており、メカニズムに興味あるファンにとっては見応えのある展示内容になっている。

Honda RA273,Honda RA300,Honda RA301
Honda RA273,Honda RA300,Honda RA301
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写真:: Ryo Harada

1967 Honda RA300 RA273E
1967 Honda RA300 RA273E
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写真:: Ryo Harada

1964 Honda RA271E
1964 Honda RA271E
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1964 Honda RA271(R) ,1961 Cooper T53(L)
1964 Honda RA271(R) ,1961 Cooper T53(L)
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写真:: Ryo Harada

2000 Honda V10 Formula 1 Engine Type RA000E for BAR 002
2000 Honda V10 Formula 1 Engine Type RA000E for BAR 002
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写真:: Ryo Harada

Honda Cub(1953)
Honda Cub(1953)
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写真:: Ryo Harada

Honda NSX RAYBRIG NSX LM-GT2 Spec. for '1996 Suzuka 1000km
Honda NSX RAYBRIG NSX LM-GT2 Spec. for '1996 Suzuka 1000km
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写真:: Ryo Harada

1979 Honda NR500(OX)
1979 Honda NR500(OX)
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写真:: Ryo Harada

1976 Honda RCB1000
1976 Honda RCB1000
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写真:: Ryo Harada

1975 Honda CB500R
1975 Honda CB500R
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写真:: Ryo Harada

2013 Honda RC213V (Marc Marquez)
2013 Honda RC213V (Marc Marquez)
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写真:: Ryo Harada

 個人的には、ホンダが在英のコンストラクター、ローラ社とジョイントして組み上げたRA300に興味津々。1967年のイタリアGPでジョン・サーティーズが勝利を飾ったマシンだ。軽量化を追求したローラのインディ500マイル用シャシーを手直しして組み上げられたRA300は、ホンダに新たな価値観を与えるだけでなく、ローラにも影響を与えたはずだった。フルモノコックが当たり前だった当時、コクピット後部のセンターバルクヘッドでモノコックを切り落とし、エンジンをストレスマウントするパッケージは、ローラにとっても初の体験だったに違いないのだから。

 ホンダ・コレクションホールの楽しみは、もちろんF1マシンに限ったことではない。NSXやアコードをベースとしたツーリングカーレース用の競技車両もあれば、ロードレースからモトクロス、トライアル、さらにはパリ・ダカのようなラリーレイドまでの様々な2輪の競技車両も目白押し。またロードゴーイングの市販車両(4輪&2輪)に加え、発電機や芝刈り機、船外機などのパワープロダクツもある。モビリティ・カンパニーと謳うホンダならではの品揃え(?)だ。館内を1日中歩き回っても、飽きることはないはずだ。


【施設情報】ホンダ・コレクション・ホール

公式サイト https://www.twinring.jp/collection-hall/

所在地:栃木県芳賀郡茂木町桧山120-1 ツインリンクもてぎ場内

開館時間:公式サイト参照

料金:無料(ツインリンクもてぎ入場料・駐車料は別途)

 

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