F1メカ解説|最初のテストは非公開……でも見えてきたトレンド、そしてチームによる違い「今は他チームの写真を山ほど持っているんだ」
バルセロナで行なわれたF1のシェイクダウンテストでは、11チーム中10チームが2026年型のマシンを走らせた。公開された写真は限られていたが、ここから今季のトレンドが見えてくるのだろうか?
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先週、バルセロナ-カタルニア・サーキットを舞台に、今季最初の合同テストが行なわれた。このテストはシェイクダウンテストと銘打たれ、完全非公開で行なわれた……最初に問われるべきはまさにその点。このテストを秘密裏に行なう必要があったのだろうかということだ。
もちろん、”公式プレシーズンテスト”という名を名乗れるのはバーレーンだけということは、商業的に見れば大変重要であろう。しかし、今季大きくレギュレーションが変わるため、2014年の時と同じようにトラブルが多発するのではないかという懸念は、杞憂に終わった。
ウイリアムズは不参加、新規参入のアウディは複数のトラブルに見舞われた。赤旗中断となるタイミングも複数回あった。ただこれは、新シーズンの開幕前にはよくあることであり、決して大惨事というようなモノではない。結果として見れば、多くのチームが順調に周回数をこなしたことは、賞賛に値すると言えよう。
今回のテストは非公開だったため、公開された画像はごく僅か。正確な情報を手にするためには、バーレーンでのテストを待つしかない。しかし今回登場したのは、あくまで各マシンの最初のバージョンに過ぎず、開幕までの間に数多くの開発が加えられるのは必至だ。しかも新レギュレーションとなったため、開発スピードは例年と比べて信じられないほど速くなるだろう。
とはいえ、第一印象は非常に興味深いものだ。今季のレギュレーションは、デザインの自由度が圧倒的に小さいと言われることもあった。しかし蓋を開けて見れば、それぞれの違いは明らかであった。
■フロントウイング:アウトウォッシュをどう活用?
De voorkant van de Mercedes W17, waarbij duidelijk te zien is dat de neus rust op het tweede vleugelelement
FIAは、近年のトレンドとも言えるアウトウォッシュを低減するため、フロントウイングに多大な注意を払っている。しかしそれでも、各チームにはデザイン上の自由度が与えられている。そのためフロントウイングは、チームによってその扱いに差が生じた。
ほとんどのチームは、フロントウイングのメインプレーンにステーを接続し、ノーズから吊り下げている。そして2枚のフラップをアクティブエアロとして可動させる構成だ。しかしメルセデスとアストンマーティンがバルセロナに持ち込んだフロントウイングは、中央のフラップがノーズと接続されている。つまりアクティブエアロとして可動するフラップは、最上部の1枚のみとなっていたのだ。
メインプレーンではなく中央のフラップをノーズから吊り下げることで、アクティブエアロの効果はいくらか犠牲にされているはずだ。ただその一方で、メリットがあるからこそ、この処理を採用してきたはずだ。
そのうちのひとつは、ノーズを短くできるということ。つまりこの2チームは、ノーズを短くした方が、空力面でのメリットがあると考えているのではないかということだ。またフラップとノーズを繋ぐことで、メインプレーンのデザインの自由度が高まるという理由もあるかもしれない。実際のアストンマーティンAMR26は、この点を存分に活かしたようなフロントウイング・メインプレーンの形状になっている。
ただ、サーキットによってノーズやフロントウイングのデザインが変わってくる可能性も十分にある。そのため、今回持ち込まれたノーズが、メルボルンでの開幕戦で使われるかどうかはわからない。
フロントウイング自体にも違いが生じていた。どのチームも、翼端板部分で何らかの渦流を生み出すエレメントを備えている。しかしその考え方については、大きな違いがある。路面と垂直のフィンを立ててアウトウォッシュを生み出そうとするチームもあれば、路面と水平方向のフィンを翼端板外側に取り付けて、気流を跳ね上げようとするチームもあった。つまり各チームが、許された範囲内で最大限の効果を発揮しようと、創意工夫を凝らしていることがよく分かる。
その中でも、マクラーレンは独特であった。彼らも翼端板外側に路面と水平方向のフィンを取り付けていたが、これは前が高く、後ろが低くなっていた。これにより、ダウンウォッシュを生み出そうとしているはずだ。
■フロントサスペンション:プッシュロッドが主流だが、斬新なデザインも
De pushrod voorwielophanging van de McLaren MCL40, met een behoorlijke anti-dive
フロントサスペンションは、ほとんどのチームがプッシュロッドを選択してきた。昨年まではプルロッドが主流だったが、レギュレーション変更に伴い、そのトレンドが大きく変わった格好だ。
プッシュロッドとプルロッドには、それぞれ長所と短所がある。
プルロッドは、ダンパーなどを車体の下に置くことができるため、重心を下げやすい。一方でプッシュロッドは、ダンパー等をモノコックの上面に置かなければならず、重心が上がる。しかしメカニックが作業しやすくなる。
さらにプッシュロッドの方が、理論的には僅かに軽量化できるという。2026年の車両重量規定がかなり厳しいモノであることを考えると、これは一部のチームにとっては歓迎すべきことかもしれない。しかしプッシュロッドを選ぶか、あるいはプルロッドを選ぶかは、主に空力面での理由である。
昨年までのレギュレーションでは多くのチームが、フロア下に気流を適切に導くためにはプルロッドの方が適していると考えていた。しかし今季からのレギュレーションでは、グラウンドエフェクト効果が大幅に低減したため、プルロッドのメリットは少なくなった。実際このプルロッドを選んだのは、現状ではアルピーヌとキャデラックの2チームのみである。なおアルピーヌは、マシン発表時にはプッシュロッドとなっていたが、実車ではこれがプルロッドに変わったという点は興味深い。
また各チームはアンチダイブ(ブレーキング時にフロントエンドが沈み込むのを防ぐこと)を試みている。これを目指すため、フロントサスペンションのアッパーウイッシュボーンの前後アームの高さを変えているチームが多い。通常では前の方が高く、後ろの方が低い。マクラーレンは昨年、かなり極端なアンチダイブを採用したが、今年もそれは変わらない。
アストンマーティンも、これを極限まで追求しているようだ。アッパーウイッシュボーンの前アームはできるだけ高く、後ろのアームはできるだけ低く配置されている。これはアンチダイブだけでなく、車体の下に気流を送るための策でもあるはずだ。
■サイドポンツーン:トレンドに反するチームも!
De AMR26 van Newey, met de neus op het tweede vleugelelement, agressieve sidepods met underbite-inlet en hoorns naast de airbox
今季のF1マシンには、以前のF1マシンで見られたバージボードのような板が、コクピット横に取り付けられることになった。この部分は昨年までは各チームがアウトウォッシュを生み出すために使ってきたが、FIAはインボードの気流を作り出し、マシン後方に発生する乱気流を削減しようとしている。
しかし各チームはFIAの意図に反した使い方をしようと、試行錯誤している模様だ。その結果、それぞれのチームが採ってきた選択肢は異なっているようだ。
このアイデアによりアウトウォッシュが増えてしまったら、FIAがどう反応するのか……それは実に興味深い。2026年マシンの計画段階では、この部分でアウトウォッシュが生み出されるとは、想定されていなかったからだ。
そしてサイドポンツーンも見ていこう。遅れて登場したアストンマーティンAMR26は、このサイドポンツーンにおいて大きな注目を集めた。上面は極端なダウンウォッシュ、そして下部は極端に抉られ、アンダーカットを形成している。つまり、ラジエターの面積がほとんど取れないように思えるほど、非常にコンパクトになっているのだ。
注目すべきは、サイドポンツーン前面の開口部にアンダーバイト……つまり受け口型(上端が短く、下端が前方に伸びた形)のデザインを採用しているということだ。エイドリアン・ニューウェイは、レッドブル在籍時にも同様のデザインを好んでいたため、これは驚くべきことではないかもしれない。
なおこの形状を採用したことで、空気抵抗は非常に小さくなっているはず。電力の使用量が大きく増えた新レギュレーション下においては、このことは非常に重要かもしれない。
ダウンウォッシュ+アンダーカットのサイドポンツーンのデザインは、多くのチームが採用している。しかし異なるソリューションを投入したのが、レッドブルとアルピーヌだ。
レッドブルは非常に小さなサイドポンツーンを採用。ゼロポッドとまではいかないものの、側面の衝撃吸収構造(インパクトストラクチャー)の先端が飛び出してしまうほどの小ささである。
後方はさらに小さく絞り込まれており、ディフューザー方向への気流を導くための広大なエリアが確保されている。
一方でアルピーヌは、サイドポンツーンが非常に幅広くなっており、その上面から車体中心線方向に気流を導くようになっている。
このサイドポンツーンのデザインは、時間と共に各チームの考え方が収束していくはず。しかし現時点では様々な考え方があり、バリエーションも豊富。これは実に興味深いことだ。
■エンジンカバーとボディワーク
De compacte, driehoekige airbox van de Ferrari SF-26
インダクションポッドとエンジンカウルについても、注目すべき違いがいくつかある。興味深いことに、アストンマーティンAMR26には、近年のフェラーリの特徴のいくつかが見える。
AMR26は、三角形のインダクションポッド、バイキングホーン、そしてインダクションポッド下には開口部が存在する。これはまさにフェラーリで採用されてきたものだ。
アストンマーティンのテクニカルディレクターを務めるエンリコ・カルディレは、フェラーリから移籍してきた人物。そのため今年のアストンマーティンのマシンに、ニューウェイの特徴だけでなく、カルディレの特徴のいくつかも見えるわけだ。
レーシングブルズのインダクションポッドは、グリッド上で圧倒的に大きい。しかし興味深いのは、同じレッドブル・パワートレインズのパワーユニットを使うレッドブルのインダクションポッドは小さいということだ。
なおレッドブルとフェラーリは、エンジンカウルが比較的スリムであり、その後方に存在するシャークフィンが大きく目立つ。ただその段差のつき方には、現状では違いがある。
マシンのリヤに関しては、各チームとも情報を徹底的に隠そうとする。そのためリヤサスペンションの鮮明な写真はまだ入手できておらず、バーレーンでのテストまで待つ必要があるだろう。
分かっているのは、アストンマーティンがアッパーウイッシュボーンの後ろのアームを非常に高くするため、リヤウイングのピラーに接続しているということ。これは、マシン前方の考え方と一致していると言える。またかなりのレーキ角がつけられているようだが、これはニューウェイがこれまでに手がけた車両のことを考えると、驚くべきことではない。
■ディフューザー:側壁に開口部
Mercedes W17 detail
写真: Mercedes AMG
最後に、最も注目されるのがディフューザーである。
昨年までのF1マシンはグラウンド・エフェクトカーであったため、フロア下で強大なダウンフォースを発生していた。しかし今年のフロアはフラットになったため、ダウンフォースの発生量は小さくなった。とはいえ、フロア下で発生するダウンフォースが重要であることには変わりはなく、より効果的なディフューザーを生み出せるかどうかは、マシンのパフォーマンスの根源に関わってくる。
メルセデスが公開した写真で明らかになったのは、フロア端を流れる気流を導くために、ディフューザーの側壁の部分に開口部が設けられているということだ。このような開口部によって、ディフューザーの性能を向上させようとしているのは間違いない。簡単に言えば、ディフューザーに向かう気流が強ければ強いほど、より大きなダウンフォースを発生することができるのだ。
この側壁の開口部は、何もメルセデスだけが設けているわけではない。フェラーリ、アストンマーティン、レッドブルのマシンでも、この開口部が確認されている。中でもレッドブルは、それをかなりアグレッシブに設定しているようだ。マクラーレンのマシンにこれが存在するのかどうかは、まだ確認できていない。
各チームは2回設定されているバーレーンでのテスト、そしてオーストラリアでの開幕戦に向け、今後も開発を加速させていくことだろう。
マクラーレンのニール・ホールディは先日、こんなことを語っていた。
「他のチームのマシンの写真を、山ほど持っている。他のチームが何をしているかを知るため、それを持っていることは大いに役に立つんだ」
新レギュレーションが導入されて最初のシーズンに向けて、参戦11チームによる試合は、すでに始まっている。
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