F1シンガポールGP決勝分析:ライコネンが失った”1秒”はどこにいった?

F1シンガポールGP決勝、ライコネンの敗因はハミルトンのピットインに反応したことだが……

 先日行われたシンガポールGPは、戦略が光ったレースだった。もちろん、最後のピットストップでのキミ・ライコネン(フェラーリ)とルイス・ハミルトン(メルセデス)の順位逆転、そしてダニエル・リカルド(レッドブル)がピットインしたのに対してステイアウトして勝利を手にしたニコ・ロズベルグ(メルセデス)の判断である。

ライコネン、ピットイン&アウトラップで失った”1秒”が命取りに?

 まず、ライコネンとハミルトンの事例から見てみよう。

 44周目、3番手のポジションを走っていたライコネンと、その後ろを走っていたハミルトンとの差は2.134秒であった。しかし、45周を走り終えた時点でハミルトンがピットインし、それまでのソフトタイヤから中古のスーパーソフトタイヤに交換した。ライコネンはこれに反応し、46周を走り終えた時点でピットイン。彼はソフトタイヤから中古のウルトラソフトタイヤに交換。コースに戻った時には、ハミルトンが1.007秒先行し、順位が逆転していたのだ。つまりハミルトンは、この数周の間にライコネンに対して、3.141秒稼ぐことができたということになる。

 ライバルより早いタイミングでピットインして新しいタイヤに交換し、そのメリットを活かしてライバルのピットインに乗じてポジションを奪う。これが俗に言う”アンダーカット”である。単純計算をすれば、今回のレースでハミルトンがアンダーカットにより得たメリットは、1.56秒(ライコネンの45周目のラップタイムと、ハミルトンの47周目のラップタイムの差)であると言える。ただ、これだけでは実際にハミルトンが稼いだタイムとの間には、まだ1.5秒程度の差がある。では、それはどこから生み出されたのか?

 ピットイン&ピットアウトのラップタイムを見ると、その差が歴然としているのが分かる。ハミルトンが45〜46周目の2周に要したタイムは2分4秒655、対してライコネンが46〜47周目に要したタイムは2分6秒236。つまりライコネンは、1.581秒ここで失っているわけだ。このうち0.639秒は、ピットレーンの所要時間(ピットレーン入り口から出口までに要した時間)で失っているのが確認できるが、0.942秒は明らかにコース上で失っている。

 とはいえ前述の通り、ライコネンがコースに戻った際、ハミルトンは1.007秒先行していた。つまり、ピット作業がメルセデスと同等であり、ピットイン/アウトラップを同じラップタイムで走ることができたとしても、0.5秒程度先行できるかどうかというところ。これはあまりにもギリギリであり、小さなミス(それが今回実際に生じたわけだが)が命取りとなる。ここから考えれば、今回フェラーリが採った、ハミルトンのピットインに反応するという判断は、あまりにもリスクが高すぎる戦略だった。むしろ5番手以下のマシンが大きく離れていたため、仮にハミルトンにオーバーテイクされなければ3位の可能性も残すことができたステイアウトの方が、正しい判断だったと言えるだろう。

ステイアウトするしかなかったロズベルグ

 この作戦を採ったのは、先頭を走っていたロズベルグである。彼のポジションを狙っていたリカルドが47周目に入っても動じず、ステイアウトをして首位のポジションをキープ。わずか0.5秒リカルドを抑えきって、勝利を手にした。

 ロズベルグの場合は、”こうするしかなかった”というポイントをしっかりと実践できたことが、勝利につながったという印象がある。

 前述のライコネンとハミルトンの場合、ライコネンがピットインする直前のふたりの差は、26.766秒だった。これでも、順位の逆転が起きてしまったわけである。対して、リカルドがピットインした翌周にロズベルグがピットレーン入り口に差し掛かる直前、ふたりの差は26.862秒。前述の例とほぼ同じタイム差だったわけだ。ただ、ライコネンとハミルトンは、その差で順位の逆転が起きてしまった。ロズベルグもライコネン同様にライバルに反応してピットインしてしまえば、リカルドの順位を奪われるリスクが非常に高い。しかも、抜きにくいシンガポールである。コース上でリカルドをオーバーテイクできるという保証は全くなかったのだ。なので、ロズベルグとしてはステイアウトするしかなかった……と言うことができるだろう。

 ただ、事前のデータやその時々のリアルタイムの情報を精査し、実際に最適な戦略を判断する能力の差、これが垣間見えた1シーンだったと言えよう。戦略のミスとまでは言えないが、その微妙な差を感じ取り判断できるかどうか、メルセデスとフェラーリの差が、如実に現れたシーンだったように思える。

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この記事について
シリーズ F1
イベント名 シンガポールGP
サブイベント 日曜日 レース
サーキット シンガポール市街地コース
ドライバー ダニエル リカルド , キミ ライコネン , ルイス ハミルトン , ニコ ロズベルグ
チーム メルセデス , フェラーリ , レッドブル
記事タイプ 分析