
ジョルジョ・ピオラ【F1メカ解説】
【F1メカ分析】ニューウェイはRB13をいかに洗練させたか?
ここ数戦、戦闘力を上げつつあるレッドブル。それには、ニューウェイが再び関わり始めたことが影響しているようだ。

今季のレッドブルは、相対的には進歩を遂げているように見える。しかし、エイドリアン・ニューウェイが関与して以降、RB13のデザインはどう洗練されてきたのだろうか?
2017年シーズンの開幕直後、レッドブルRB13はチームが期待していたような戦闘力を発揮できずにいた。フェラーリとメルセデスに対して遅れていることは、疑いようのない事実。そのためチームはシーズン初頭、パワーユニットの供給元であるルノーに責任を負わせようとしていた。
しかし、シャシーにも問題があることがわかったため、設計の初期段階に関わっていたエイドリアン・ニューウェイを呼び戻し、パフォーマンスの修正が目指された。本来ならばニューウェイは、今季のF1プロジェクトにはあまり関わらない予定だった。しかし、2010〜2013年の4年間にかけて4シーズンを席巻した完璧さを追求するためには、ニューウェイなしでは考えられなかったのだ。
ニューウェイ復帰後は、レギュレーションを詳細まで再度検証し、他チームがやったことを吸収、そしてすでにあるもので何ができるのかを突き詰めた。その結果、レッドブルはここ数レースで、いくつかの部分を最適化している。
フロントウイングの修正
シルバーストンは、シーズンで最初の、本当の意味でのコーナリングテストの場とも言える。そのためチームはフロントウイングを変更し、ダウンフォースの配分を修正することとした。
ウイングのメインの変更点、それはフラップの外縁の部分に、スリットを2カ所追加したことにある(黄色で強調された部分を参照のこと)。これにより、ウイングの角度をきつくしても、気流の分離を制限できるようになるのだ。
またカスケードウイングにも変更が加えられている。以前は最も車体中心側にあるフェンスの下端が、ウイング下まで突き抜けるように延びていた(イラスト円内の緑色の矢印の部分)が、修正後は丸みを帯びた処理となり、フェンスとウイングが完全に一体化したようになっている。
フロントウイング翼端板も変更
また、フロントウイング翼端板のフットプレート(矢印の部分)は、前方が上げられるように変更された。これに伴い、かつては翼端板の前方の位置していた縦方向のスリット(イラストの黄色で示した部分)は埋められている。これらの変更は、前述したフラップのスリット増加に呼応するものであると考えられる。
コクピット下のターニングベインは原点回帰!?
コクピット下のターニングベインにも、変更が加えられている。
この部分は、中国GPの際にも変更された。当初はコクピット下から伸びる3枚のフラップを一枚の板で繋ぐ形だったが、中国GP以降は最も前方のフラップが独立。さらにフットプレートには、横方向にスリットが追加された。
イギリスGPでは、このパーツを再び改良。3枚の上下方向のフラップが再び一体化し、スリットも埋められた。つまり開幕当初の形に非常によく似た形状となったのだ。
進化するバージボード
バージボードにも多くの変更が加えられている。チームはスペインで投入したバージボードの効果を最大限発揮するため、各レースで少しずつ改良を施している。
アゼルバイジャンGPの際には、バージボード本体の高さが拡大され、その後方には三角形のボードが追加された。さらにオーストリアGPでは、この三角形のボードに高い負荷がかかった際にもしっかりとパフォーマンスを発揮させるため、さらに後方にある3枚目のボードとの間が、サポートによって繋げられ、剛性向上が狙われている。
さらに3枚目のボードの下にあるフットプレートが拡大され、当初と同じ位置に取り付け直されている。
これらのアップデートは、かなり大きな変更のようにも見える。しかし、レッドブルは当初のコンセプトをキープしたまま最適化を図っているだけだとも言える。まさに同チームの設計哲学の特徴とも言えるだろう。
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この記事について
シリーズ | F1 |
チーム | フォースインディア , レッドブル・ホンダ |
執筆者 | Matt Somerfield |