【F1分析】なぜF1にシャークフィンが蘇ったのか?
マシンやタイヤの幅が広くなった今季のF1は概ね好評だが、一部不評な箇所もある。シャークフィンやTウイング は、なぜ取り付けられたのか?
写真:: XPB Images
新レギュレーション下で生み出された今年のF1マシンは、多くの関係者やファンの間で好評を博している。しかし、ノーズ先端の突起やシャークフィン、Tウイングを除いては……という条件付きだ。
新しいレギュレーションが導入される時は、矛盾と、意図しない結果を伴うことが多い。このシャークフィンやTウイングは、まさにその典型と言えるだろう。しかし、なぜチームはこの領域に注目し、開発を加速させているのだろうか?
シャークフィン
シャークフィンは、今回初めて登場したパーツではない。F1では2008年にレッドブルやトヨタ、ルノーなどが初めて登場させた。その後、リヤウイングを効果的に機能させるための”Fダクト”を構成するために必要不可欠な構造としても機能した。最近では、WEC(世界耐久選手権)やスーパーフォーミュラのマシンにも、このシャークフィンが取り付けられている。
このシャークフィンがF1に復活した背景には、リヤウイングの高さが変更されたことがある。昨年までのリヤウイングの最大高は950mmだったが、今年からは800mmに低められた。これを最大限活用するために、このシャークフィンが用いられているのだ。
では、実際にはどんな作用を及ぼしているのだろうか?
ひとつには、フロントウイングやサスペンションで跳ね上げられた気流を、安定させるという働きがある。乱れた気流をそのままリヤウイングに当ててしまうと、発生するダウンフォースは不安定なモノになってしまう可能性がある。それを制御するため、このシャークフィンが用いられているのだ。特に今年からは、タイヤの幅が広げられたため、この領域の制御は実に大切になった。
また、エアボックスとシャシーで発生する乱流は、リヤウイングの高さに直接影響を及ぼす。シャークフィンはこの気流を整え、改善することも目的とする。
さらに、マシンの挙動を安定させる効果がある。それは特に、コーナリング時に効果的。横方向から流れてくる気流をシャークフィンで安定させ、リヤウイングで発生するダウンフォースを向上すると共に、ドラッグを減少させるという働きもあるのだ。
Tウイング
このTウイングの存在が可能になった背景には、昨年の10月に行われた2017年のレギュレーション変更の存在がある。このレギュレーションは、それまでに多くの変更が加えられており、その間に現在Tウイングが存在する位置に”空白”が生じるというミスが起きてしまったのだ。実際に、それ以前のバージョンのレギュレーションでは、この位置にTウイングが存在できないようになっていた。
最新のテクニカルレギュレーションでは、ボディワークが存在できる位置は、以下”線”で囲まれた箇所と指定されている。
・リヤホイール中心線の前方1330mmの垂直線
・基準面よりも550mm上方の水平線
・基準面より925mm上方の水平線
・リヤホイール中心線の前方1000mmの位置で高さ925mmの位置と、リヤホイール中心線の前方50mmの位置で高さ550mmの位置を交差する対角線
(テクニカルレギュレーション第3条15.1項)
しかし、リヤホイール中心線と、その50mm前方の位置については特に規定はない。つまり、この位置にTウイングが存在できるのだ。
このグレーゾーンを発見したメルセデス、フェラーリ、ウイリアムズ、そしてハースのデザイナーは、すぐさまTウイングの開発を思いついた。
このウイングレット単体では、ほとんどダウンフォースを生まない。しかし、リヤウイングへ流れる気流を整える働きがあると考えられる。ディフューザーとリヤウイングが跳ね上げる上方気流を、このTウイングを通過した気流で整えているはずだ。
FIAはシャークフィンとTウイングのデザインを問題視していない。しかし、バルセロナのテストではTウイングにはフレキシブル性があるのではないかと思われるシーンがあった。もしTウイングを禁止するならば、しなるために危険もしくは”可動空力装置”と判断されることになるだろう。
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