【F1分析】”エクレストンの時代”を終えた新時代F1の方向性とは?

F1は運営陣の大幅変更により新しい時代を迎えたF1を、motorsport.comのF1編集者ジョナサン・ノーブルが考える。

 今週は、F1にとって歴史に残るような1週間となった。F1の新オーナーとなったアメリカの巨大メディアであるリバティ・メディアが、これまでF1に君臨していたバーニー・エクレストンを名誉会長という職に追いやり、リバティ・メディアのチェイス・キャリーをCEOに就任させた。リバティの株主たちがF1の買収を承認してから、わずか7日の”クーデター”だった。

 ここ数年F1は停滞状態であり、状況に対して後手に回っているF1には変化が必要だと、チーム代表たちは感じていた。しかし、未来のビジョンを良くするためにもエクレストンの”統治”が終わるのを待たなければならないとして、この状況を黙って受け入れていた。意思決定能力が欠如していたストラテジーグループや既得権益を守りたいチーム、成り行きを見守るだけの人々などが合わさり、エクレストンの支配を甘んじて受け入れていたのだ。

 エクレストン肝入りのダブルポイントシステムや、エリミネーション(脱落)方式の予選がチームの満場一致で採用されたことからも、意思決定システムがどこか壊れていたことがわかるだろう。たとえ彼らが個人的には提案されたコンセプトは失敗すると確信し、F1には必要ないだろうと考えていたとしても、これらのコンセプトは導入され、厳しい批判を受けて廃止されていった。

 しかし、エクレストンはF1を80億ドル規模の世界的ビジネスに昇華させた男であり、分割統治の戦術に長けていたため、”革命”を起こすための十分な支援は集まらなかっただろう。

 エクレストンは毎回一歩先を行っている。2011年にチームが団結し始めたまさにその時、フェラーリとレッドブルをFOTA(フォーミュラ・ワン・チームズ・アソシエイション/チームによる協会組織。2014年に解散)から脱退させ、F1のコスト削減に関する合意を阻止したことは有名だ。

 最終的にF1はリバティ・メディアという外部からの介入を受け、状況が変わった。エクレストンに最も忠実な味方でさえ、リバティの『F1をもっと大きく、もっと良く、もっと人気にする』という提案を受け入れた。つまり、F1は正しい方向に向かい始めたのだ。

新たなF1のための長期的ビジョン

 おそらくF1が今抱えている問題を解決することのできる鍵、”長期的ビジョン”をリバティは提案していくだろう。それまでエクレストンが全く定義してこなかったものだ。

 確かにエクレストンよりもその場の状況に正しく対処できた者は過去にいなかったが、物事が急速に変化する現代では、日々の問題に対処できるだけでは時代の波を乗り切ることはできないだろう。

 昨シーズンの終盤、おそらくエクレストンに最も近いF1チームの首脳であろうレッドブルのクリスチャン・ホーナーは、全てのF1関係者が考え方を変える必要性について話し合い、今後のF1のために適切な戦略が導入されるべきだと述べた。

「元々、短絡的な感情を持たず、先々を考えるべきだというのが私の見解だ」とホーナーはmotorsport.comに語った。

「我々を含め、全F1チームが”有罪”だ。F1チームが直面している問題は、それぞれが今持っている競争力のある立場を守ろうとしていることだ」

「5年先のことは誰にもわからない。それなのに、なぜ5年後に風洞を無くし、CFD(数値流体力学)を行う時間を制限することは我々に禁じられているのかが理解できない。どうして自然吸気エンジンを復活させ、普通のハイブリッドシステムやKERSを導入することができないんだ?」

「(F1に必要なのは)ショーに貢献するような目玉を作って、大幅にコストを削減して、素晴らしい光景を作り出す。それが全てだ」

 今回からF1には、チェイス・キャリーやショーン・ブラッチス、ロス・ブラウンという非常に知的な3人が集まった。彼らはF1が”再び素晴らしいもの”になるために何が必要なのか理解している。

 F1には劇的な体制変更がもたらされた。そして今すぐにでも”我々が知り得ない何か”を根本的に見直さなければいけない。

 我々はリバティが目論んでいる計画の一端を掴んだ。それは、アメリカ開催のレースを増やすこと、ヨーロッパを中心とした”スーパーボウル”型のグランプリを開催すること、デジタルメディアを多用すること、賞金の仕組みを変えること、ファンベースの構築、そして有料TVからの収益を増幅させ、VR(バーチャルリアルティ)をF1に組み込むことだ。

 それらは瞬間的に生まれた計画ではない。昨年ブラウンは「もしF1を形成する手助けができる役割につくのであれば、今のF1に必要なもの」について語っていた時に、あるヒントを我々にもたらしていた。

「F1に必要なものが何かと訊かれたら、計画だと答えるだろう。3年計画と5年計画だ」と彼は昨年にデイリーテレグラフとのインタビューで語った。

「私の見解では、”時間をかけて計画し、実施する”という創造における理想的な構造が今のF1にはない」

 たった一晩でF1が生まれ変わることはできないかもしれないが、今こそが明るい未来を必要としているF1がシェイプアップされるタイミングなのかもしれない。

 現行のエンジン規制と同様に、2020年でチームとF1を結びつける協定は失効する。

 ホーナーは2017年の”より速く、より挑戦的な”というワンパターンなレギュレーションの改訂が、実際のF1に必要としていたものではなく、もっと基本的な改善が必要だと指摘している。

「今の我々はまるで、ショーウインドウを飾り付けをしているようなものだ」

「いまだに私はかつてサーキット中を轟かせたあのエンジンに戻ることを賛成している。なぜならそれはF1のDNAの一部なのだから」

「去年の日本で、ホンダがアイルトン・セナが乗ったV10エンジンのマクラーレン(MP4/5)を復活させたのを我々は見ていた。以前もストレートを駆け抜けていくそのマクラーレンを見るために、ガレージにいたメンバー全員が表に出たものだ。F1にはそういうものが失くなってしまったと思う。F1を取り戻すためにも長期的な計画に取り組む必要がある」

「確かに(V6ハイブリッド)エンジンの技術は素晴らしく、賢い選択だと思う。しかし、レースを見に来ている大半の人にとっては、今のF1に何が起こっているのか理解することはできないだろう。F1はショーとしてエンターテイメント方向に振り切るべきだと思う。そのエンターテイメントの一端を担うのはそういったエンジンだ」

 2021年から全く新しいF1の基礎が形成され、今とは全く異なるマシンとエンジンが全く異なるプラットフォームで視聴することができるようになるのも現実的な話だ。

 おそらく現段階では、”エンターテイメント”性を重視することがF1の基本的な方向性になっている。

 マクラーレンのエグゼクティブディレクターであるザク・ブラウンは、F1の方向性は至ってシンプルだと語った。

「次の10年間のF1は、より自由でファンフレンドリーになると期待している。デジタルとソーシャルメディア、ゲームなどを積極的に取り込むことで、新世代のF1ファンを獲得することができるだろう」

「最近のファンのエンゲージメントが高まってきているが、それがリバティ・メディアの功績だということは明らかだ」

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