【F1分析】新規則で増すパワーユニットの負荷。救世主は燃料とオイル!?

2017年F1の規制変更に伴い、PU内部のオイル配合のパターンにも制限が設けられる。いわばマシンの血液を制限される影響は計り知れない。

 2017年F1の大規模なレギュレーション変更に伴い、エアロに関するレギュレーションが大幅に改良されたことで1周あたりのラップタイムが速くなり、さらにマシンの見た目も良くなると言われている。

 しかし、2017年シーズンに変更されるのはマシンの外見だけではなく、普段は見ることのできないカウルの中身、つまりパワーユニットにも及んでいる。

 例えば今回廃止されたパワーユニットのトークンシステムは、これまでホンダのパワーユニットが取り入れていた”サイズゼロ”のような独特なコンセプトを苦しめていた。パワーユニットの全面的な見直しを行うためには多くのトークンを消費しなければならず、これまでホンダはパワーユニットにおける課題の抜本的な解決に取り組むことができなかった。

 2017年はトークンシステムが廃止される代わりに、コンポーネントの重量や材質などに新たな規制が設けられ、各チームの設計の方向性が統一されている。他にもシーズン中にチームが使用することができる燃料の配合を5種類に限定させ、1グランプリで使用できる種類にも制限を設けた。

トークンシステムの廃止

 トークンシステムとは、2014年のターボハイブリッドシステム導入を前に課されたレギュレーションであり、開発を制限することで各チームの運営コスト高騰を抑制し、シーズンを経るごとに使うことのできるトークンの数を減らしていくことでマシンの開発費をさらに絞っていくことを目的としていた。

 しかし、それは圧倒的な速さを誇るパワーユニットをさらに改善するメルセデスと、そのギャップを埋めようと限られた中で懸命に開発するライバルチームという構図を助長させることになったのだ。

 2017年のレギュレーション変更でメーカーとFIAは、開発の回数ではなく重量と寸法を制限するという新たなアプローチに同意した。

 新たなレギュレーションでは、MGU-K(エネルギー回生)が7kg以上、MGU-H(熱回生)が4kg以上、ピストンとコンロッドは300g以上、クランクシャフトのアッセンブリーは5300g以上という重量制限が設けられることになる。

 さらに、クランクシャフトベアリングの寸法が制限され、シリンダーの圧縮比を18.0以下に設計するように求められている。それらのコーティングは金やプラチナ、ルテニウム、イリジウム、レニウムのいずれかを使ったものに制限され、厚さも0.035mm以上は認められていない。

 このように新しいレギュレーションは各メーカーが限られた中で公平に開発を行えるように制定されているが、その一方、ひとりのドライバーが1シーズンで使用することができるパワーユニットの最大数は4基であるため、アップデートをする際には慎重な作業が求められる。

The 2015 Renault Energy F1 engine
The 2015 Renault Energy F1 engine

Renault F1

使用できる燃料配合数を制限

 パワーユニット内部で起きる変化は他にもある。

 2017年、チームは1シーズンで使用できる燃料の配合パターンを5種指定し、レースの週末に使用できるのは指定したうちの2種類に制限されることになる。

 これまでのF1では、燃料の配合に関する制限は設けられていなかった。F1チームは予選と決勝でマシンに求められる条件が大きく異なるため、燃料の配合を自由に変更していたのだ。しかし2017年からは、シーズンを通し、サーキットごとに調整されていた燃料の配合を制限することで、チームの選択肢が狭められることになる。

 これらの変更は、燃料や潤滑油の製造会社であるペトロナスと親密な関係であるメルセデスにおそらく大きな衝撃を与えるだろう。

 しかし、2017年シーズンに向けて、レッドブルがエクソン・モービルとパートナー関係を結び、マクラーレンがBP/カストロールと契約締結したようだが、それらにも少なからず影響を与えると考えられる。ルノーに関しては、トタルとのパートナー関係の解消に向かっているようだ。

 少なくともレッドブルは、このシナリオの中でも優位に立つことができると予測される。なぜなら彼らは、以前マクラーレンやメルセデス、ホンダと締結したことで豊富な経験を蓄えたモービルをパートナーして迎え入れることになるからである。

 またBPのF1への完全復帰は、開発に対する知識や経験を得るために3シーズン後になると考えられるが、もしルノーやトロロッソとも提携することになれば、データベースをより早く構築することも可能になるかもしれない。

潤滑油

 潤滑油はおそらくパワーユニットのコンポーネントの中でも目立たない存在であるが、適切な潤滑油がなければ内燃機関は正しく作動せず、マシンに走るためのパワーを送ることはできない。

 F1マシンに供給されている潤滑油は、全ての回転数で最大限かつ、効率的に出力を上げていくためには重要な要素になる。

 全てのグランプリで最高のパフォーマンスを発揮するためには、潤滑油の劣化を防がなくてはならない。そのためにも潤滑油のライフサイクルを正確に管理していかなければならない。それがドライバーにパワーユニットが厳密に割り当てられている大きな理由のひとつでもある。

 今回のレギュレーションが反映されることになれば、モナコの低速サーキットやモンツァの高速サーキット、メキシコに位置する高地のサーキットのような非常に異なる特性を持つサーキットに対応するために、これまでとは全く違ったオペレーションをチーム側は要求されることになるだろう。

Mercedes AMG F1 W06 Mercedes PU106-Type Hybrid
Mercedes AMG F1 W06 Mercedes PU106-Type Hybrid

Photo by: Mercedes AMG

オイルの品質管理

 オイルのサプライヤーたちはチームと行動をともにし、燃料や潤滑油の品質を管理するためにピットレーンにラボを設置し、状況に応じてどのような仕様の燃料や潤滑油を使用するのか検討し、場合によっては支障をきたす前に予防線を張っている。それほど燃料や潤滑油はF1マシンにとって重要性が高いのだ。

 燃料は各グランプリごとに支給されている。その担当エンジニアたちの最初の仕事は、燃料に異物が混入していないかチェックするところから始まる。

 そのチェックとは、ガスクロマトグラフィー装置により燃料を分析し、燃料の分子構造がFIAが保持しているサンプルと一致するかどうか確認するという手順を踏み、彼らはグランプリの前に約40項目ものサンプルを検査しなければならない。

 燃料サプライヤーはトラックサイドに設けられたラボで燃料の精密検査を行うだけでなく、パワーユニットとギヤボックスの潤滑油のテストも同様に行う。

 例えばシェルは、回転ディスク電極光学イメージング装置(RDEOES)を使用し、異物混入がないか確認し、摩耗によるパワーユニット内部の劣化の進み具合をチェックしている。これによりシェルは、フェラーリの危機を予測し、未然にトラブルを防いだ例が数多くあるが、昨年セバスチャン・ベッテルに起きた数々のギヤボックスの故障から察するに、現在の科学はマシンの信頼性を確実に保証できるわけではないようだ。

限界突破

 エアロのレギュレーション変更により、マシンは過去数年に比べ、大きく増したダウンフォースを生み出せるようになる。FIAはいくつかのコーナリングスピードが、40km/hほどアップするのではないかと期待している。

 緩やかなコーナーはストレートと同じように走れるようになり、より高いスピードでクリアできるため、ドライバーにとっては魅力的な体験になるだろう。

 しかしこのコーナリングスピードの高速化は、これまでデータを蓄積してきた燃料や潤滑油のサプライヤーたちの常識を捻じ曲げ、パワーユニットの性能と寿命に大きな影響を及ぼす。

 レースの秩序に影響を与える可能性のある燃料や潤滑油のオペレーションは、これまでの形を新たなものに適応させていかなければいけない。

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