【F1】フェラーリが提案した”トリック・スタート”、FIAに却下される

FIAは、スタート手順の一部を事前に設定しておくという”トリック”について、安全上の理由で許可できないと各チームに警告を行なったようだ。

 FIAは、スタート手順の一部を事前に設定しておくという”トリック”は禁止されるだろうと、各チームに警告を行なったようだ。

 2014年にF1はターボ&ハイブリッド時代に突入したが、パワーユニットの複雑さから、レースのスタート前にドライバーたちはエンジニアの言いなり状態になっていた。

 ドライバーがピットウォールからの助けを借りずに、自力でマシンをコントロールすることを求めたF1は、2015年のベルギーGPから無線での指示を含め、決勝のスタート前にドライバーを手助けすることを厳しく規制。それでもチームは、ドライバーを助けるべく、状況を改善する方法を検討してきた。そして昨シーズンは、厳しい制限の中で良いスタートを決めることの重要性が明確になったシーズンだった。

 メルセデスのルイス・ハミルトンが何度もスタートで失敗しポールポジションを活かせなかった一方で、チームメイトのニコ・ロズベルグはスタートでミスをせず、チャンピオンに輝いた。逆に、フェラーリのセバスチャン・ベッテルは2列目から何度か良いスタートを決め、オーストラリアとカナダではスタートでトップに浮上している。

 スタートで優位に立つことができるという明確なメリットを得るためにチームはシステムを微調整し、できる限りドライバーに合ったモノにしようと努力をしてきた。

 しかしF1のレースディレクターであるチャーリー・ホワイティングは最近、フェラーリが提案した『プリロード(事前設定)・スタート・システム』を却下したようだ。

 フェラーリが2017年に彼ら自身が利益を得るためにコンセプトに取り組んでいたのか、”パブリックドメイン”としてその考えを公開することを望んでいたのかは不明だが、そのコンセプトをライバルが使うことや、開発を行なうことはもはや許可されないだろう。

 フェラーリは、メルセデスやレッドブルといったライバルたちが使っているとされる『トリック・サスペンション』(2014年に禁止された油圧連動式のサスペンション”FRIC”に類似したモノ)についても疑義を提出しており、ホワイティングはこのサスペンションに対して技術規則に反する可能性が高いと答えている。

プリロード・スタート・システムとは?

 F1の厳しいスタートに関するレギュレーションの下では、ドライバーがスタート時にクラッチ・バイト・ポイント(クラッチが繋がるポイント)を見つける手助けをすることが禁止されている。

 F1技術規則第9条2.2で、『クラッチ操作装置の動程範囲に沿って、ドライバーが特定の点を確認できる、またはドライバーがある位置を保持できるよう支援する設計は禁止される』と明示されている。

「プリロード・システム」の開始手順は、この条文に抵触するのを避けることを目的としている。ドライバーがスロットルとクラッチについて良いバランスを見つけた際に、ブレーキを使うことで効果的にそのポイントを維持できるようになっているようだ。

 システムの手順はこうだ。

 まず、スタート手順が開始される前に、ドライバーはクラッチを完全につなげ、ギヤを1速に入れる。

 その後、事前に調べておいたスタート時に最適なエンジン回転数まで、スロットルを開ける。それからブレーキを踏むことで、エンジンの回転数が”設定される”のだ。

 グリッドについたドライバーは、スタートライトが消えるまでにクラッチパドルをトルクがベストだと感じる時点まで解放し始め、その位置を保持する。

 ライトが消えると、ドライバーはブレーキペダルを離すだけで、完璧なスタートを決めることができる。

 ブレーキを離す前の最終段階では、エンジンの回転数が設定された数値まで落ちるため、毎回良好で一貫性のあるスタートを決められるだけでなく、ホイールスピンの最小化にも役に立つ。

 フェラーリは、このプリロード・スタート・システムがF1のレギュレーションの2項目に合致しているかどうかの説明を求めたのだ。

 その2項目とは前述の第9条2.2に加え、『クラッチのスリップあるいは掛かりの量をドライバーに知らせる装置あるいはシステムは一切認められない』とする第9条2.7である。

アンチストールの危険性

 しかし、このスタートシステムが却下されたのはレギュレーションに抵触しているからではなく、このシステムの潜在的な危険性が問題視されたためだ。

 ホワイティングは、事前設定の段階で回転数を下げすぎてしまったり、スロットルが安全装置のしきい値を超えてしまった場合、エンジンがアンチストールモードに入ってしまい、スタート時にマシンがグリッド上に残されてしまう危険性があると主張した。

 また、プリロードの考え方を許可すれば、スロットルの安全装置を取り外したり、野心的なクラッチ開発を行なうなど、大規模な開発戦争が起こるだろうと予想される。

 ホワイティングの見解では、このスタート手順を誰かが使用することは不可能になったように思われる。しかし、ホワイティングはF1の技術部門のチーフとして意見を述べることしかできないと、各チームは認識している。

 各レースのスチュワードが、スタート手順や使用しているシステムの合法性について、決定的な判断を下す可能性は残されているが、各チームがホワイティングの見解に照らし合わせて、自身のシステムの開発を続けるというリスクを犯すかは不透明である。

※本文中のF1技術規則は、日本自動車連盟(JAF)のホームページに掲載された日本語訳より抜粋

【関連ニュース】

【F1】FIA、スタート前のピットレーン開放時間の短縮などを提案

【F1】メルセデス、スタート改善のためハミルトンのステアリングをアップデート

【F1】ハミルトン、スタートに懸念なし「スタート練習はしてきた」

【F1】FIAがグリッドスタートの新システム開発。自動化でインシデントに対処

【F1】ハミルトン、バーレーンでのスタート失敗を解説

コメント
コメントを書く
この記事について
シリーズ F1
チーム フェラーリ
記事タイプ 速報ニュース