
いよいよ開幕する2017年のF1。その前夜、ホンダのF1プロジェクト総責任者である長谷川祐介が、motorsport.comのインタビューに応じた。
バルセロナで行われたプレシーズンテストで、ホンダのパワーユニットにはトラブルが頻発した。この詳細について尋ねると、長谷川は次のように説明した。
「1週目は初日にオイルタンク、2日目にエンジン本体にトラブルが出ました。これがどういうトラブルだったのかは公表していませんが、対策はしました」
「オイルタンクのトラブルは、構造の問題です。タンクの中にバッフルプレートがありますが、その形状がよくなかったのか、オイルをうまく吸い上げることができなかったようです。それについては変更してきました。大変初歩的な問題だったので、それだけがトラブルの原因だと言われるのは残念です」
「2週目の初日には、高電圧系が絶縁状態になりました。これについても対策を打ってきました。どこまでできているか分かりませんが、大きな問題は解決できていると思います。また2日目にはラジエターの水漏れもありました」
ホンダが見舞われたトラブルはこれだけではなかった。バルセロナテスト2週目の終盤、今度は振動に起因するトラブルに見舞われてしまったのだ。ただ、一概に”パワーユニットの問題”と言い切ることができないようだ。
「最後の2日間はクルマの振動によって起きたトラブルです。エンジンそのもののトラブルではありません。実際のトラブルは車体側のカーボンパイプのクラック(亀裂)だったり、ハーネス(のコネクタ)が外れるというものでした」
「エンジンの振動がなくなれば起こらなかったかといえば、それは分かりません。縁石に乗り上げてクルマが振動し、その影響があったことも確かです。車体側にそういう弱さがあったとすれば、それは心配ですね」
ホンダはテストを通じて5基のパワーユニットが壊れたと言われているが、これについてはホンダが公表したものではないと、長谷川は語る。
「補器類を直すために何度かエンジンを交換しました。それで5基のエンジンが壊れたと思われたんでしょうが、我々はエンジンの数までは発表していません」
フェルナンド・アロンソは、テストで走らせた今季のマシンについて、「パワー不足」と指摘した。しかし長谷川は、目標値に達していないと認めつつも、パワーアップを果たし、ドライバビリティについても向上していると語る。
「ドライバビリティについては、向上していると思います。これはさくら研究所のテストベンチで対応できるので、それはやってきました。ただ、まだ実際に走っていないので、本当の効果は今日の時点では分かりません」
「アロンソが指摘したパワー不足、スピード不足に関しては、他のクルマと比較していないので正直分かりません。ただ、それが我々の課題だと認識しています。目標値にはまだ届いていませんから」
「とはいえ、数値までは申し上げられませんが、昨年のアブダビの時点よりも、パワーは出ていると思います。しかし、ドラッグが増えていますし、タイヤ幅も広がっているので、ドライバーはスピードが落ちたように感じるかもしれません」
マクラーレンはしびれを切らし、すでにメルセデスに対してパワーユニット供給の可能性について問い合わせを行ったとも言われている。これについて長谷川は次のように答えた。
「マクラーレンがメルセデスと交渉しているという噂は、チームからのものではなく、メディアが書いたものです。なので、それに関してはホンダとしてはノーコメントです。でも、どのチームでも良いエンジンが欲しいというのは当然のこと。かつてクリスチャン・ホーナーだってルノーエンジンが不調の時、もっと良いエンジンが欲しいと言っていました。良いエンジンが欲しいのはどこのチームも同じなんです。ホンダとしては、そう言われない準備をしなければいけないということです」
ホンダが施した対策は、どれほどの効果を見せるのか? そのパワーユニットを搭載したマシンは、いよいよ明日、アルバート・パークを走る。
インタビュー:赤井邦彦
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この記事について
シリーズ | F1 |
イベント | オーストラリアGP |
ロケーション | アルバートパーク・サーキット |
執筆者 | 赤井邦彦 |