【F1】メルセデス、2戦連続ギヤボックス交換。その裏側にあるもの

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【F1】メルセデス、2戦連続ギヤボックス交換。その裏側にあるもの
Jonathan Noble
執筆: Jonathan Noble
協力: Edd Straw
2017/07/25 4:27

メルセデスは、オーストリアGPとイギリスGPで2台のギヤボックスを立て続けに交換した。その原因と真相に迫る。

James Allison, Technical Director, Mercedes AMG
James Allison, Mercedes AMG F1 Technical Director
James Allison, Technical Director, Mercedes AMG F1, talks to a colleague
Valtteri Bottas, Mercedes AMG F1 W08
Valtteri Bottas, Mercedes AMG F1 W08
Lewis Hamilton, Mercedes AMG F1 W08
Valtteri Bottas, Mercedes AMG F1 W08
Lewis Hamilton, Mercedes AMG F1 W08
Valtteri Bottas, Mercedes AMG F1 W08
Lewis Hamilton, Mercedes AMG F1 W08
Lewis Hamilton, Mercedes AMG F1 W08, Valtteri Bottas, Mercedes AMG F1 W08
Lewis Hamilton, Mercedes AMG F1 W08, Kimi Raikkonen, Ferrari SF70H
Valtteri Bottas, Mercedes AMG F1 W08
Race winner Lewis Hamilton, Mercedes AMG F1
Race winner Lewis Hamilton, Mercedes AMG F1
Race winner Lewis Hamilton, Mercedes AMG F1, celebrates in Parc Ferme, Valtteri Bottas, Mercedes AMG F1 W08
Lewis Hamilton, Mercedes AMG F1
Lewis Hamilton, Mercedes AMG F1 W08, Kimi Raikkonen, Ferrari SF70H, Max Verstappen, Red Bull Racing RB13, Sebastian Vettel, Ferrari SF70H

 F1においてひとつの信頼性に関するトラブルが発生した時、その原因が時に不運によるものである場合もあるが、チーム内で同じコンポーネントを使用し、ほぼ同時に2台がトラブルを抱えた時は、大抵の場合チームが根本的なミスを犯していることの方が多い。

 オーストリアGPでルイス・ハミルトンがギヤボックス交換を行ったその1週間後、イギリスGPの予選前にバルテリ・ボッタスもギヤボックス交換を決行。そこでいわゆるメルセデスの"落ち目"が初めて浮き彫りになった。

 当初ハミルトンのギヤボックス交換の原因は、バクー戦でセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)に体当たりされたことによってギヤボックスの破損が引き起こされたのではないかと言われていた。その一方のボッタスは、金曜日の2セッションでトップタイムを記録していたのにも関わらず、急遽ギヤボックス交換を行った。

 ギヤボックスを6レース連続で使用し続けなければいけないという競技規則を破ったことで、グリッド降格ペナルティを被ったハミルトンとボッタス。前述したような”憶測”もあったとはいえ、メルセデスがギヤボックスを立て続けに交換したという事実は、コンポーネント自体に重大な欠陥があったのではないかとの疑いを投げかけるには十分なものだった。

 しかし、当時のメルセデスの態度は毅然としていた。表面上は劇的に見えただけであって、彼らは簡単に状況を立て直すことができることを理解していたのだ。

行き過ぎた積極性

 簡単に言ってしまえば、メルセデスはシームレスシフトのタイミングを、非常にアグレッシブに設定していたという。それがギヤボックス内部の破損につながったと彼らは説明した。

 メルセデスのテクニカルディレクターであるジェームズ・アリソンは、マシンのパフォーマンスを最大限に出力することにチームが全力を尽くした結果、シフトタイムを1000分の数秒単位で削るということに行き着いたという。

「かつてのギヤは、自分で入れるものだった。ギヤを抜いたら、別のギヤを入れなければならない。その間は駆動を失っていた」

「しかし、現在はシフトがシームレス化されたことで、ギヤは瞬時に次のギヤへとシフトできるようになった。これにより駆動のロスを最小限にすることができた」

「低速ギヤから高速ギヤにシフトアップしようとする時、ローギヤは高速で回転している。これを変速する場合には、次のギヤと噛み合わせるために回転速度を減速しなければならない」

「シフトがシームレス化されても、シフトアップする時は回転速度を減速させなければいけないという原則は依然としてある」

「様々なやり方があると思うが、例えばエンジントルクを減少させることで、ギヤの負担を軽減するという対策がある。そういったアイデアを実際に全開走行で試すことができないのが難しいのだ。エンジントルクを減少させる方法を、F1における常識だと思っていないエンジニアはいないと私は思う。問題はそれをどれくらい大胆にやるのかということだ」

Gフォース

 つまりメルセデスは、”大胆すぎる”手を打ってしまったのだ。開発を進めていくにあたって徹底的に信頼性を確認していたが、テストベンチやシミュレータ上で完全に再現することができないGフォースなどの現実世界にある要素が、問題を引き起こしたとアリソンは説明した。

「我々には新しい戦略や設計を承認するプロセスがある。そのプロセスはエンジニアの観点からしても、かなりシビアなものだ」

「可能な限りトラックで試そうとしているが、リスクなくトラック走行を行える機会は限られてしまう。だから我々はある程度のレベルまで現実世界を再現することができる動力計を用いている」

「我々はこれまでよりもアグレッシブに攻められるようなシフト設定を、通常のプロセスを踏んでクルマに導入した。その過程では計画は成功していたように見えていたが、悲しいことに現実のトラック上では通用しなかった。ギヤボックス内のオイルは、テストベンチやシミュレータと実際の環境の間では、違う動きを見せた」

「それで我々はマージンを超えてしまい、その代償を支払うこととなった」

フェラーリからのプレッシャー

 今回のギヤボックスに関する騒動から読み取れるのは、メルセデスがこれまで以上にマシンの限界を高めていかなければならない状況に置かれているということだろう。

 これまでの3年間、F1を支配してきたメルセデスは、今季に入ってからチーム内で争い合うだけでなく、フェラーリにも対抗しなければならないという新たな局面にある。その勝敗を分けるのはコンマ数秒の差であるため、どの領域においても抜かりなく十分なパフォーマンスが発揮された状態であることを要求されている。

 メルセデスのチーム代表であるトト・ウルフは、燃料とオイルのサプライヤーであるペトロナスの貢献について次のように語っている。

「私はさらなるパフォーマンスを引き出してくれる流体がクルマの中を流れていることを知らなかったため、驚きを感じている」

「オイル次第で、冷却関連システムなら0.005秒、油圧関係ならば0.015秒も変わる。オイルと燃料の元々の性質とその密度によって、内燃機関を筆頭とした重要な全パーツのさらなるパフォーマンスを引き出すことができる」

「ギヤボックスも良い例だ。ギヤボックスに適切なオイルを入れることで、パフォーマンスが向上する。ギヤシフトの面でも、積極的にレースすることができるようになる。それが時に”チームの過信”に繋がってしまう時もある」

「今回問題が起きたのは、ギヤボックスだった。おそらく今回導入したシフト設定を使用するのは難しいだろう。バクーで出鼻をくじかれたことで、ようやくそれに気がついたのだ」

 しかしウルフは、最終的に競技規則変更後も、強力なチーム体制を敷くことができているメルセデスを誇りに思っているという。彼は今回のレースで競争力を懸命に引き上げようとしたことで代償を払ったと理解しているが、少しでもマシンを速くするためにもこの問題の解決に取り組んでいるようだ。

「我々の目標は、規制改革後も王者であることだ」

「私が知る限りでは、これまで複数年F1を支配し、規制の変更後もトップの座に君臨し続けたチームはいない。我々はそれを現実のものとするのだ」

「今は我々だけで戦っているわけではないと言えるだろう。スポーツの面でもエンターテイメント性を考えても、フェラーリと争い合っていた方が健全だ。しかし、その中で我々は猛プッシュしている」

「開発の進行度を早めたまま維持すると、つまづくこともあるだろう。ヘッドレストが外れることもあるだろうし、ギヤボックスが壊れることもある。なぜなら、通常のパフォーマンスとは関連性のないところから、少しでも限界を上に引き上げようとしているからだ」

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シリーズ F1
ドライバー ルイス ハミルトン 発売中 , バルテリ ボッタス 発売中
チーム メルセデス 発売中
執筆者 Jonathan Noble
記事タイプ 分析