社内には”F1参戦を継続すべき”という声もあった。ホンダ八郷社長「最後は私が判断した」

2021年限りでのF1参戦終了を決断したホンダ。社内には参戦を継続すべきだと声もあったというが、将来を見据え、八郷社長が最終的な判断を下したと明かした。

社内には”F1参戦を継続すべき”という声もあった。ホンダ八郷社長「最後は私が判断した」

 ホンダが、2021年シーズン限りでF1への参戦を終了することを発表した。2019年からレッドブルと組み、ようやく”第4期”初勝利を遂げた。そして2020年、2021年、さらにその先へと、さらなる活躍やタイトル争いへの期待が高まりつつあった矢先のことだった。

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 そんな突然の参戦終了発表は、世間に大きな波紋を広げた。

 オンラインで開催された記者会見に登壇した本田技研工業の八郷隆弘社長は、参戦終了の理由を「2050年のカーボンニュートラル実現」に向け、リソースを振り分けるためと説明した。

 ただ今年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、世界経済は大打撃を受けている。それも撤退理由になったのではないか? そう会見に出席したメディアから質問を受けると、八郷社長はそれを完全否定した。

「昨年、1年間の参戦延長を決めた時から、色々なことを考えました。そして今年の8月にレッドブルに我々の考えを伝え、最終的には9月末に決断しました」

 そう八郷社長は語る。

「(新型コロナウイルスの影響など)短期的な収益の関係ではなく、2030年に四輪車販売の2/3を電動化することを目指して技術者のリソースを振り分けるために、今回の決断をしました。新型コロナウイルスの影響ではありません」

「F1は世界最高峰のレースです。技術面ではエネルギーマネジメント技術の進化、ジェットや量産など、オールホンダでの技術連携などを得ることができました。人材育成の面では、パワーユニットや燃料技術、カーボンニュートラルの実現に貢献できる、若い技術者が育ったと思います。そして結果を出すことに対する苦しさ、辛さ、諦めないチャレンジ精神を学べたと思います」

「F1参戦は、技術の進歩と人材育成という意味があると考えており、ある一定の成果が出せたと考えています」

 さらに八郷社長は、現時点では再参戦のことは考えていないと断言する。

「今回は2050年のカーボンニュートラル実現という目標に向けて判断したものです。再参戦のことは考えていません。ただ、レースはホンダのDNAであり、今参戦しているレースには、熱い情熱を持ってそこに参加していきたいと思います」

「その一方で、環境への対応も、ホンダのDNAだと思います。F1で培った先進のPUとエネルギーも、ホンダのブランドの価値になっていくと思います。そういう意味で、先進パワーユニット・エネルギー研究所を設立し、そこから出る技術、商品で、他社とは違うモノを作っていきたいと思います」

 また今F1を担当している技術者には、「F1で培ってきた技術を、2050年のカーボンフリーに向け、新たなPU、エネルギーの研究に従事してもらうよう、話をしたいと思っています」と八郷社長は語った。

「その挑戦は、F1同様難しい挑戦になります。その挑戦にチャレンジするのも、技術者としてのチャレンジだと思ってくれると思います。その方向で、身に付けたモノを活かすマネジメントをしたいと思っています」

「それをやることで、ホンダに入りたいと思う人が出てくるように、これからのしっかりとした商品を発表していきたいです」

 ファンに対してはどう説明するか? そう尋ねられた八郷社長は、次のように答えた。

「ファンの皆様には、これからも応援していただきたいと考えています。これまでに5勝を達成することができました。我々としてはある程度の成果が残せたと考えています。来年に向けてさらに全力を尽くしていきますので、ファンの皆様には、ご声援をお願いしたいと思います」

 カーボンニュートラル、および電動車の販売増を目指すということになれば、F1ではなくフォーミュラEなど、電動レースへの参戦も視野に入るのではないかと思われる。ただ現時点ではまだその計画はないようだ。

「電動レースへの参戦については、現在は具体的に考えているものはありません。そして今回、2050年にカーボンニュートラルという目標を掲げました。これはホンダの新たな挑戦です。できれば、それに向けてもご声援をいただければと思います」

 最終的にF1参戦終了という決断を下したホンダだが、社内では継続すべきという声も上がっていたようだ。

「事業の方向性でいけば、2050年のカーボンフリーに向けた対応も重要なチャレンジになりますので、そちらに、特に技術者のリソースを傾けるべきだと判断しました。社内では参戦を継続すべきだという意見もいっぱいありましたが、社長として私が判断しました」

「F1に継続参戦してブランド力を高めていくか、将来に向けていくか……そのどちらにリソースを割いていくべきなのかということについては、経営陣の中で十分議論しました。たしかに、F1へのチャレンジを続けるという選択肢もありました。しかし、ひとつの目標である優勝も実現できましたし、環境への対応という部分も非常に重要です。そこにチャレンジしていくんだということで、最後は全員の意思を固めて、今回の決定をすることに決めました」

 ホンダのF1参戦は、あと1年と半分である。そこに向けて全力で注力し、来季はチャンピオン獲得を目指すと、八郷社長は力強く語った。

「今年まだ7レース残っていますし、来シーズンもあります。特に来季については、新しいパワーユニットを投入し、チャンピオンを獲れるようにレッドブル、アルファタウリと共に最後まで戦い抜いていきたいと思っています」

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この記事について

シリーズ F1
チーム レッドブル・ホンダ , アルファタウリ・ホンダ
執筆者 田中 健一