【日本人F1ドライバーの系譜】美しきF1マシン:「速いが脆い……鈴木亜久里、予選トップ10常連に」フットワークFA14
角田裕毅が今年F1デビューする。彼が乗るのは、アルファタウリ・ホンダ。久々の日本人ドライバーの登場に、期待が大きく高まっている。これまでにも、数人の日本人ドライバーが印象的な活躍を見せた。1993年の鈴木亜久里もそのひとり。入賞は叶わなかったが、フットワークFA14を駆り、度々上位グリッドを獲得したのだった。
2020年、FIA F2参戦初年度ながら、ランキング3位でシーズンを終えた角田裕毅。その活躍により、彼は2021年のアルファタウリ・ホンダのシートを手にし、F1デビューを果たすことになった。彼の活躍には、大きな期待が集まっている。
しかしこれまでの日本人F1ドライバーたちも、日本のF1ファンを興奮させ、魅了してきた。彼ら歴代の日本人F1ドライバーに関する記事をピックアップ。ここに再度掲載する……。
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鈴木亜久里のF1ベストシーズンと言えば、多くの人が1990年だと言うだろう。ローラLC90を駆り、入賞3回。日本GPでの3位は、日本人ドライバーとして初のF1表彰台という快挙だった。
ただ中には、1993年こそ鈴木亜久里にとってのF1ベストシーズンだったのではないかと考える人もいるだろう。同年の相棒となったマシンは、フットワークFA14だった。
このFA14は無限ホンダのV10エンジン(MF-351HB)を搭載。アラン・ジェンキンスが手掛けた1台で、第3戦ヨーロッパGPでデビューした。このマシンを鈴木と、同年からチームに加入したベテラン、デレック・ワーウィックがドライブしたのだ。
当初の成績は、特に目を見張るようなモノではない。ワーウィックも鈴木も、予選順位は20番手前後。中団グループの後方というポジションであったことは否めなかった。
ただし、ある時から状況が一変する。第9戦イギリスGPである。ふたりの予選順位は一気に改善し、ワーウィックが8番手、鈴木が10番手と好グリッドを手にしたのだ。しかもワーウィックはこのグランプリで、シーズン初となる6位入賞を果たしている。
実はこのイギリスGPから、FA14にアクティブサスペンションが搭載されたのだ。
当時のF1はハイテクデバイス全盛期。このアクティブサスペンションやセミオートマチック・トランスミッション、トラクションコントロール、アンチロック・ブレーキシステムなど、様々な電子デバイスが各チームによって開発された。その出来不出来が、チームの成績を左右したと言っても過言ではない。
そのハイテクデバイスを昇華させ、当時完璧なまでの強さを誇ったのがウイリアムズ。1992年にはシーズンを席巻し、1993年にも強さを誇った。しかし他チームがハイテクデバイスを熟成させると、その差は徐々に縮まっていった。
そのうちのひとつ、マクラーレン製のアクティブサスペンションが、フットワークに供給され、それが抜群の効果を上げたのだ。
その速さはイギリスGP以降全レースにわたって続いた。ワーウィックは、最終戦こそ予選17番手だったものの、それ意外は7〜11番手とトップチームに次ぐ位置を常にキープ。鈴木も第14戦ポルトガルGP以外は全てトップ10圏内。第12戦ベルギーGPでは6番グリッドを獲得し、アイルトン・セナの横にマシンを並べてみせた。
毎レース安定して上位グリッドにつける鈴木の姿に、1990年日本GPでの3位と同等、またはそれ以上の成績を残すことに対する期待感が膨らんでいった。
しかし、ワーウィックがハンガリーGPで4位になったことはあったものの、その速さが決勝結果に安定して繋がることはなかった。結局ワーウィックは入賞わずか2回。鈴木に至っては第9戦イギリスGPから第15戦日本GPまで、7戦連続リタイアだった。
この原因は、マシンの信頼性不足。特にセミオートマチック・トランスミッションのトラブルが頻発していたため、リタイアを積み重ねることになってしまったのだ。速いが脆い……フットワークFA14は、そんな1台だったと言うことができよう。
ちなみにフットワークは日本の運送企業であり、1990年にアロウズを買収。1991年からチーム名もフットワークとなった。しかし本業の業績悪化により、1993年限りでチームを売却。1997年からは再びアロウズと名を変え、2002年までF1活動を行なった。
なおこの最終年に使われたA23のモノコックを流用したマシンを使い、2006年からあるチームがF1に参戦した。その名もスーパーアグリ。鈴木亜久里が代表を務めたチームである。
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