美しきF1マシン:「”戦うチーム”に生まれ変わった、記念樹的1台」レッドブルRB3
現代の天才F1デザイナーのひとり、エイドリアン・ニューウェイ。彼がレッドブルに加入し最初に手掛けたのが、RB3である。
現代を代表するF1デザイナーといえば、エイドリアン・ニューウェイを置いて他にはいない。
1988年のマーチ881が、ニューウェイがデザインした最初のF1マシン。当時はターボエンジン搭載車が圧倒的な強さを見せていた時代だったが、自然吸気エンジン搭載のマーチにも関わらず、時折目覚しい速さを発揮。チームがレイトンハウスに名称を変えると、テクニカルディレクターを務めるなどした。
しかし1990年のシーズン途中で同チームを解雇されると、これをウイリアムズが獲得。FW14以降、圧倒的な強さを発揮した同チームのマシンを一挙に手がけ、天才デザイナーの評価を確実なモノとした。
その後1997年からマクラーレンに移籍し、ミカ・ハッキネンの2年連続タイトル獲得に貢献するなど、まさに優勝請負人とも言える存在となった。
そのニューウェイは、2006年に当時はまだ新興チームだったレッドブルに加入する。このニューウェイの選択は、周囲に驚きを持って迎えられた。そして誰もがご存知の通り、レッドブルは2009年に初勝利を挙げると、2010年にタイトルを獲得。今やメルセデス、フェラーリと並び、トップチームの一角に数えられるまでになった。
そのニューウェイがレッドブルで最初に手掛けたのが、2007年シーズン用マシンRB3である。
前年までのレッドブルのマシンは、シンプルでどちらかと言うと無骨なデザインだった。しかしこのRB3は、ノーズは幅広ではあるものの、複雑な形状に変更。ニューウェイが在籍していた時代のマクラーレンを彷彿とさせる、美しい外観に仕上がった。またフロントサスペンションのロワアームがモノコックへ直に取り付けられ、当時のトレンドとも言える”キール”を排除。フロアへ向かう気流を遮るモノを無くした。
サイドポンツーンも、その前半部分から下部を大きく抉り、気流の通り道を作った。そしてこの周辺に取り付けられた様々な空力パーツを使ってダウンフォースを生むことが目指されている。さらにサイドポンツーン上面にはエアダムが形成され、リヤウイングに向かって気流を流そうとしている。
実際このRB3は速さを発揮し、マーク・ウェーバーとデビッド・クルサードは、揃って予選上位の常連となった。ただその一方で信頼性は大いに不足し、悩まされることになった。ヨーロッパGPでは乱戦を戦い抜いてウェーバーが3位表彰台を手にしたものの、チームのこの年の獲得ポイントは24。ランキング5位となった。
この信頼性の問題は、チームの生産能力の欠如にあったと言える。前述のとおり同年のレッドブルは、F1参戦開始からまだ3年目という段階。加えて2006年からは兄弟チームのトロロッソも参戦をスタートしたばかりで、パーツの生産能力が逼迫した。そのため、クオリティをコントロールするよりも、パーツを”とりあえず間に合わせる”ということに重点が置かれた。そのため、前半戦を中心にリタイアが相次ぐこととなった。
ただその生産能力も年が経つに連れて向上。翌2008年にはリタイア数がグッと減ることになる。
F1デビュー直後から、その特異なプロモーション戦略で注目を集めていたレッドブル。しかしこの2007年からは、人員が揃い、ファクトリーの能力も向上し、そして優秀なドライバーが育て上げられていった。ある意味RB3は、レッドブルが”戦うためのチーム”に変わった、記念樹的な1台だと言うことができよう。
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