Nostalgia

美しきF1マシン:「”戦うチーム”に生まれ変わった、記念樹的1台」レッドブルRB3

現代の天才F1デザイナーのひとり、エイドリアン・ニューウェイ。彼がレッドブルに加入し最初に手掛けたのが、RB3である。

David Coulthard, Red Bull Racing RB3
Mark Webber, Red Bull Racing RB3 Renault
Mark Webber, Red Bull Racing RB3 Renault
Mark Webber, Red Bull Racing RB3 Renault
Mark Webber, Red Bull Racing RB3-Renault
Mark Webber, Red Bull Racing RB3 Renault
Mark Webber, Red Bull Racing RB3 Renault
Mark Webber, Red Bull Racing RB3 Renault
Mark Webber, Red Bull Racing RB3
David Coulthard, Red Bull Racing RB3
Left front suspension of the Red Bull Racing RB3
Red Bull Racing RB3 front wings
Red Bull Racing RB3 detail
13

 現代を代表するF1デザイナーといえば、エイドリアン・ニューウェイを置いて他にはいない。

 1988年のマーチ881が、ニューウェイがデザインした最初のF1マシン。当時はターボエンジン搭載車が圧倒的な強さを見せていた時代だったが、自然吸気エンジン搭載のマーチにも関わらず、時折目覚しい速さを発揮。チームがレイトンハウスに名称を変えると、テクニカルディレクターを務めるなどした。

 しかし1990年のシーズン途中で同チームを解雇されると、これをウイリアムズが獲得。FW14以降、圧倒的な強さを発揮した同チームのマシンを一挙に手がけ、天才デザイナーの評価を確実なモノとした。

 その後1997年からマクラーレンに移籍し、ミカ・ハッキネンの2年連続タイトル獲得に貢献するなど、まさに優勝請負人とも言える存在となった。

 そのニューウェイは、2006年に当時はまだ新興チームだったレッドブルに加入する。このニューウェイの選択は、周囲に驚きを持って迎えられた。そして誰もがご存知の通り、レッドブルは2009年に初勝利を挙げると、2010年にタイトルを獲得。今やメルセデス、フェラーリと並び、トップチームの一角に数えられるまでになった。

 そのニューウェイがレッドブルで最初に手掛けたのが、2007年シーズン用マシンRB3である。

 前年までのレッドブルのマシンは、シンプルでどちらかと言うと無骨なデザインだった。しかしこのRB3は、ノーズは幅広ではあるものの、複雑な形状に変更。ニューウェイが在籍していた時代のマクラーレンを彷彿とさせる、美しい外観に仕上がった。またフロントサスペンションのロワアームがモノコックへ直に取り付けられ、当時のトレンドとも言える”キール”を排除。フロアへ向かう気流を遮るモノを無くした。

 サイドポンツーンも、その前半部分から下部を大きく抉り、気流の通り道を作った。そしてこの周辺に取り付けられた様々な空力パーツを使ってダウンフォースを生むことが目指されている。さらにサイドポンツーン上面にはエアダムが形成され、リヤウイングに向かって気流を流そうとしている。

 実際このRB3は速さを発揮し、マーク・ウェーバーとデビッド・クルサードは、揃って予選上位の常連となった。ただその一方で信頼性は大いに不足し、悩まされることになった。ヨーロッパGPでは乱戦を戦い抜いてウェーバーが3位表彰台を手にしたものの、チームのこの年の獲得ポイントは24。ランキング5位となった。

 この信頼性の問題は、チームの生産能力の欠如にあったと言える。前述のとおり同年のレッドブルは、F1参戦開始からまだ3年目という段階。加えて2006年からは兄弟チームのトロロッソも参戦をスタートしたばかりで、パーツの生産能力が逼迫した。そのため、クオリティをコントロールするよりも、パーツを”とりあえず間に合わせる”ということに重点が置かれた。そのため、前半戦を中心にリタイアが相次ぐこととなった。

 ただその生産能力も年が経つに連れて向上。翌2008年にはリタイア数がグッと減ることになる。

 F1デビュー直後から、その特異なプロモーション戦略で注目を集めていたレッドブル。しかしこの2007年からは、人員が揃い、ファクトリーの能力も向上し、そして優秀なドライバーが育て上げられていった。ある意味RB3は、レッドブルが”戦うためのチーム”に変わった、記念樹的な1台だと言うことができよう。

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