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F1は再び『走る実験室』になった。今季限りで撤退のホンダが、燃料とバッテリーの開発に込めた”未来”

本田技術研究所 HRD Sakuraセンター長兼F1プロジェクトLPLの浅木泰昭が、オンライン会見に登場し、今のF1は再び「走る実験室」としての立場を取り戻しつつあると語った。

The Honda tribute livery on the car of Max Verstappen, Red Bull Racing RB16B

The Honda tribute livery on the car of Max Verstappen, Red Bull Racing RB16B

Steven Tee / Motorsport Images

 昔からF1は、『走る実験室』と言われてきた。様々な新技術がF1に投入され、それがやがて姿形を変え、市販車に転用されていく……F1はそのための開発の場であったわけだ。

 しかし近年では、F1に求められるモノと市販車の技術の間には乖離が進み、F1はF1のための開発、市販車は市販車としての開発……つまりF1は、メーカーにとって広告宣伝塔としての色合いが強くなっていった。

 ただここ最近、F1が再び『走る実験室』としての役割を担うことができるようになりつつあるという。そう語るのは、ホンダのF1パワーユニット(PU)開発を率いる、本田技術研究所 HRD Sakuraセンター長兼F1プロジェクトLPLの浅木泰昭である。浅木は、10月21日に行なわれた『Honda F1 2021 シーズンクライマックス 取材会』で、次のように語った。

「(F1エンジンの)燃焼を市販車へというのは難しいです。『走る実験室』と言っていましたが、それはなかなか難しかったんです」

 そう浅木LPLは語る。

「でも逆にここにきてカーボンニュートラルのための燃料とか、空を飛ぼうと思った時のバッテリーやモーターやコントロールユニットと、F1の開発が急に近づいてきた。今のF1なら、走る実験室になりうるという時代が近づいてきたと思います」

「(F1で開発している)バッテリーや燃料は、市販車にも活かせると思います」

「F1をやっていたから、これだけ急速に進歩することができたと思います。燃料でもバッテリーでも、実際に走れば、耐久・信頼性のテストをするという意味で、テスト室を超えた実証実験ができます。そういうことを証明するためにも、急いで新型のバッテリー(エナジーストア/ES)を投入しました」

「今後はHRC(ホンダ・レーシング/これまでは二輪レースを担っていた部門)が四輪レースの活動も担うことになっていきますが、そういう実証実験の場としてレースをどう活用していくのかということを、ホンダ全体として、そしてHRCの中でもテーマとして持っていただくのがいいのではないかと、私としては思っています」

 世界中で、カーボンニュートラル(二酸化炭素排出量実質ゼロ)が声高に叫ばれている時代。欧州の一部の国では、近い将来エンジン車の販売を禁止することを決めており、街中の道路を走る自動車に占める電気自動車の割合は、大きくなっていくことが予想される。

 しかし内燃機関(エンジン車)を完全撤廃するのは現実的とは言えない。そのため、現行のエンジンで”カーボンニュートラル”を実現するための燃料(持続可能燃料)の開発が急がれている。実際F1でも2022年からバイオエタノールを10%含んだE10燃料を使用することになっており、この持続可能燃料への道を一歩進めることになる。

 浅木LPLは、この持続可能燃料の開発が、最も重要であると考えているようだ。

 現在のF1パワーユニットには、MGU-Hと呼ばれる熱エネルギー回生システムが使われている。これはまだ、市販車にはほとんどフィードバックされていないシステムだ。ただエンジンで発生する熱をエネルギーとして再利用するという点では、パワーユニットの効率を上げるという意味で非常に画期的なシステムであると言えよう。

 ただその開発には多額の資金を必要とするため、2025年にも導入される予定で話し合いが進められている次世代F1パワーユニットには、搭載されない方向で話が進められている。

 この熱回生技術について尋ねられた浅木LPLは、熱回生技術を開発するよりも、まずは持続可能燃料を開発する方が優先度が高いと語る。そして持続可能燃料によりエンジンが生き残ることができれば、熱回生の技術が活かせることになるかもしれないと考えているという。

「MGU-Hは、一生懸命開発してきた我々としては、ぜひ(F1に)残って欲しいと思っています。ですが、新規参入の妨げになっているということですので、総合的な判断になると理解しています」

「熱回生には当然可能性はあると思います。しかし、今の内燃機関が置かれている厳しさを考えると、優先順位は低いかもしれません」

「内燃機関の将来が見えない根本は、再生可能燃料の将来が見えないということだと思います。開発の優先順位としては、そっちの方が高いと思います。内燃機関が生き残っていけることになった時の効率アップという意味で言えば、次に熱回生など、大気中に捨てているエネルギーを回生するという方向になっていくんじゃないかと思います」

「燃料に関しては、国内レースでも絶対にそちらの方に進んでいくと読んでいます。開発は続けていくと思いますし、今後もレースを実証実験の場にしていきたいと思っています」

 一方F1で開発したバッテリーは、市販車よりも、ホンダが最近参入を発表したeVTOLやロケットで活かすことになるのでは……と浅木LPLは説明する。

「EVはバッテリーの容量が大事です。でもハイブリッドは瞬発力を優先して作っています。中でもF1では、量産車とは比較にならないくらいの高出力を、同じ体積の時にどうやって出すかということを考えています」

「これは技術的に言うと、eVTOLやロケットに活かせると思います。空を飛ぼうとした時には、重量あたりの出力が非常に大切です」

「(2021年シーズン後半戦で投入したESは)特許を出願したということになっています。普通レースでは、特許の申請なんてしないんです。他に何をやっているのかがバレてしまいますからね。でも今回は、ホンダが今後進んで行く技術のために、特許を出願して戦っています。新しい未来のために、レースを実証実験の場にしようとしているからです」

 浅木LPLが語るように、今のF1は、市販車、そしてそれを超えて未来の技術開発のために、確実に活きるレースになりつつある。しかしそんな最中、ホンダは今年限りでF1を撤退することになった。

 浅木LPLはこのことに悔しさを滲ませるように次のようにも語っていた。

「ホンダにとっては技術者を育てるためのレースですが、裏では燃料やバッテリーなど、レースを実証実験の場として使って世の中のために役立てるということも目論んでいました。今回撤退するということで急いで開発をしましたけど、今後のレースでもただレースをやるだけじゃなくて、そういうことにも関わっていければ、世の中のために役立つ技術者を育てていくことになると思います」

 

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