F1空力開発ハンデ導入で、翌年向け開発へ”注力”のタイミングは変わる?

F1に2021年から導入されるいわゆる”空力開発ハンデキャップ”。これにより、各チームが翌年用マシンの開発にリソースを振り分けるタイミングに、どんな影響を及ぼすのだろうか?

F1空力開発ハンデ導入で、翌年向け開発へ”注力”のタイミングは変わる?

 2022年から、F1には新たなテクニカルレギュレーションが導入されることになっており、その見た目が大きく変わることになると予想されている。2021年はその過渡期。つまり各チームは、2021年マシンのアップデートを行ないつつ、2022年マシンの開発を並行して進めていかなければならないわけだ。

 全てのチームは今年の1月1日まで2022年用空力パーツのテストを禁じられていたため、昨年末までは2021年用マシンの開発に全力を注いできた。ただ、2021年用のマシンは2020年用マシンから多くの部分を引き継がねばならないものの、空力面での開発は比較的自由。そのため、2021年シーズンの開幕に向け、まだまだ手を入れる必要があり、1月1日で全てのリソースを2022年向けにシフトするというのは現実的ではない。

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 ただ今年のある時点で、全てのチームが空力開発を2022年向けにシフトすべく、今季向けの開発を徐々に縮小していくことになるはずだ。そのタイミングは、いつになるのだろうか? レギュレーションが大きく変わる前年である今年のようなシーズンでは、そのタイミングは特に注目される。

 前述の通り、マシンの基本的な部分は2020年仕様から引き継がねばならないものの、空力開発はほぼ自由……つまり競争力の面で優位に進めるためには、例年以上に空力開発が重要になると言える(制限はあるものの、パワーユニットも開発が可能であり、この出来も今季の戦闘力において重要な点だ)。

 さらに、タイヤへの負荷を抑える目的でダウンフォースを減らすための規則も追加された。これにより、マシンの周りの気流には大きな変化が生じる。この影響をしっかりと見極めるためにも、空力開発は重要なのだ。

 とはいえF1を戦っていく上で、翌年用のマシンの開発にリソースを傾けるタイミングは、競争力という点で非常に重要になってくる。

 他チームと僅差で戦っているチームが、早い段階で翌年用マシンの開発にリソースを傾け、そのシーズン用のマシンの開発を止めてしまうと、シーズン終盤まで開発を続けたライバルに負けてしまうという可能性が高まる。

 よく知られているように、コンストラクターズランキングの順位は、名声だけでなくF1からもたらされる分配金の額にも大きく影響を及ぼす。そのため各チームは、ひとつでも上のコンストラクターズ順位でシーズンを終えたいわけだ。

 2021年から導入される空力開発ハンデキャップとも言えるATR(空力試験制限)は、コンストラクターズランキング7位のチームを基準として空力開発量の差を設けるというものだ。2021年の制限値は、以下の通りになっている。

メルセデス 90%
レッドブル 92.5%
マクラーレン 95%
アストンマーチン 97.5%
アルピーヌ 100%
フェラーリ 102.5%
アルファタウリ 105%
アルファロメオ 107.5%
ハース

110%

ウイリアムズ

112.5%

 しかし2022年からは下記のような制限値となり、2021年よりもパーセンテージがさらに広げられている。そのため、コンストラクターズランキングが競争力に及ぼす影響が大きくなるということだ。

 
1位 70%
2位 75%
3位 80%
4位 85%
5位 90%
6位 95%
7位 100%
8位 105%
9位 110%
10位 115%
 この表が示すように、チーム間の差は大きくなるため、成功した時に受けるハンデはより大きくなる。例えばランキング1位と6位の空力稼働回数の差は、120回から240回に倍増することになる。

 つまり2022年の新しいルールで飛躍的なスタートを切り、タイトルを獲得したチームがいるとすれば、他のチームが”空力開発ハンデ”をうまく活用してしまうと、2023年以降もその勢いを維持するのが、これまでよりもはるかに困難になるということを意味する。

 ただ、効率的なCFDプログラムと、正確に調整された風洞実験設備を持ち、才能ある空力開発担当者を備えたチームには、常に利点があるということになるだろう。言い換えれば、量より質が重要な役割を果たすということになるだろう。

 とはいえチーム間の差は大きく、ある程度の影響は間違いなく出るはずだ。そうなれば、シーズン間で競争力の差が大きく変わる可能性はある。それがまさに、F1とFIAが望んでいることだ。

 このシステムが正しいのか、それとも間違ったものなのか。その影響は今後数シーズンの間で明らかになっていくだろう。

「それは実に興味深いことだった」

 F1のモータースポーツ面のマネージングディレクターを務めるロス・ブラウンはそう語った。

「メルセデスのひとりが、これについて私に不満を言っていた。そして私は言ったんだ。『あなたは常に勝つつもりだと思っているんだろう。でも少し考えてみてほしい。2位か3位だった時、少しサポートが必要だとは思わないか?』とね」

「彼らはその時、勝てなかった場合には、このレギュレーションが非常に役に立つだろうということに突然気付いたんだ」

 

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この記事について

シリーズ F1
執筆者 Adam Cooper