新たに施行されるF1”空力開発制限”は、”努力と効率”が報われるハンデキャップ?

2021年シーズンから、F1には様々な新しい規則が導入される。各チームの空力開発時間を制限する”空力試験制限”もそのひとつ。強いチームほど少なく、弱いチームほど多く風洞実験やCFDを行なうことができるのだ。ある意味F1で初の”ハンデ”ということになる。

新たに施行されるF1”空力開発制限”は、”努力と効率”が報われるハンデキャップ?

 2021年から、各チームの年間予算上限額が制定され、新たな時代を迎えるF1。ただ、予算額の上限が定められただけではない。各チームが空力開発に充てられる時間も定められることになっている。

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 今シーズンから各チームの空力開発時間は、空力試験制限(ATR/Aerodynamic Testing Restrictions)と称されるこの規則によって決められることになっている。ただこれは、全チーム一律で開発時間の上限が定められるというわけではない。前年のコンストラクターズランキングによって、各チームが開発に使える時間が定められるのだ。しかもコンストラクターズランキング上位だったチームは少なく、下位だったチームは多く、空力開発を行なうことができるのだ。

 今年の例でいえば、2020年コンストラクターズランキング最下位だったウイリアムズが風洞とCFD(計算流体力学)に最も多くの時間を費やすことができ、チャンピオンだったメルセデスが、最も少ない時間しか空力開発に充てられないということになる。

 このレギュレーションは、チーム間の格差を縮めることを目指して導入されるものである。つまり下位のチームは多くの時間開発にかけてパフォーマンスを向上させ、上位のチームは開発が制限されることでパフォーマンスの伸びを抑えようとしているのだ。

 今年が施行1年目ということもあるため、この割り当て時間の差は比較的少なめに抑えられている。しかし2022年以降はこの差が拡大するため、チーム間格差を縮める作用が高まることが期待される。

 上位チームにペナルティを科す、あるいは下位チームを手助けする……そういう原則が導入されるのは、F1では初めてのことだと言えるだろう。しかしMotoGPでは以前から、新たなメーカーや下位のメーカーに対して、テスト時間やエンジンのアップデートの面において優遇措置を与えるレギュレーションが存在する。

 F1ではかなり前から、チーム間の差を縮めるための策が検討されてきた。サクセスバラストやリバースグリッドなど、その間には様々な案が提示されてきたが、いずれも人工的すぎるということで同意されなかった。そのため、トップチームが他に差をつける主要因である開発能力に焦点が充てられ、その中でも現代のF1で最も重要な要素とも言える空力開発に制限を加えることになったのだ。

「穏やかな形で修正されるので、私はこの案に満足している」

 F1のモータースポーツ面のマネージングディレクターを務めるロス・ブラウンは昨年、motorsport.comにそう語った。

「この案が導入されても、まだ実力主義は維持されることになる。コースに出て、レースに勝たねばいけないんだからね」

「コースに出るドライバーに、ハンデキャップを科すことはない。サクセスバラストではないんだ」

「それは、言ってみればNFLなどで行なわれるドラフトのようなモノだ。最初は成功していないチームが最大のチャンスを得るが、それでも彼らは、職務を実行しなければいけない。その時点で彼らにポイントが与えられているわけではないんだ」

「この策は、F1本来の形を歪めることなく、勢力図のバランスを修正するのに穏やかな効果があると思う」

 グリッドの下位に沈んでいるチーム、そして前に追いつこうと必死になっているチームは、このアイデアを歓迎した。

「これは、F1が探求するハンデキャップシステムの興味深い形だ」

 昨シーズンまでルノーのマネージングディレクターを務めていたシリル・アビテブールはそう語った。

「私の意見では、バラストやマシンの競争力に基づいてバランスを調整するよりも、F1のDNAにはるかに関連した形だと思う」

「問題はファクトリーで起きている。とにかく、ファクトリーでの投資や人的リソースなどでは、平等ではない」

「そのレベルに達していないチームにとってそれは、平等という意味では非常に小さな歪みなのだ」

「私の考えでは、この変更はグリッドの競争力を高めるために、非常に効果的なハンデキャップシステムの最初の試みだ。これは、このスポーツにとって素晴らしいことになるだろう」

 ブラウンが語った通り、空力開発の”時間”というハンデキャップは導入されたものの、まだ実力主義。賢く、効率的な仕事をした人は報われるようになっている。

「この規制は、効率的な風洞実験プログラムを持っている人に報いることになるだろう」

 そう語るのは、アストンマーチンF1のチーム代表を務めるオットマー・サフナウアーである。

「効率的に実験を行ない、複数回同じ実験を行なうことなく、風洞で優れた再現性を発揮できる……重要なのはその全てなんだ」

「常に再検証を行なうことなく、パフォーマンスを向上させることができる。そういう質の高い効率的な風洞実験のプログラムを実現することができれば、メリットを享受できるだろう」

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シリーズ F1
執筆者 Adam Cooper