分析

F1 バーレーンGP

【F1分析:バーレーンGP決勝】ハミルトンの秀逸すぎるタイヤマネジメント……絶体絶命の状況を打破

下馬評を覆し、2021年のF1開幕戦バーレーンGPを制したルイス・ハミルトン。決勝レースのペースを分析してみると、彼の抜群なタイヤマネジメント術が見えてきた。

田中 健一

編集: 2021/03/30 9:14

Copy link

Facebookでシェアする

Twitterでシェアする

WhatsAppでシェア

Linkedinでシェアする

Pinterestでシェアする

Viberでシェア

Google検索でmotorsport.comをお気に入り登録

Lewis Hamilton, Mercedes, 1st position, celebrates on arrival in Parc Ferme

 2021年のF1開幕戦バーレーンGP。勝利を手にしたのは、メルセデスのルイス・ハミルトンだった。

 下馬評では、ポールポジションを獲得したレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが圧倒的に有利である……そんな見方が強かった。しかし蓋を開けて見れば、ハミルトンが激戦を制し、トップチェッカーを受ける結果に終わった。

Read Also:

 フリー走行のデータを分析すれば、ペースのみならず、デグラデーション(タイヤの性能劣化)の面でも、メルセデスはレッドブルに対して分が悪かった。つまりメルセデスとしては”絶体絶命”とも言える状況。そのためか、メルセデスは決勝レースに向け新品のハードタイヤを2セット温存。レッドブルのフェルスタッペンはハードとミディアムをそれぞれ1セットずつ新品として残し、決勝レースを迎えた。

 その決勝レースでハミルトンは、ミディアム-ハード-ハードと繋ぐ戦略を遂行。対するフェルスタッペンはミディアム-ミディアム-ハードと繋いだ。しかもハミルトンは、ハードタイヤを履いた2スティント目を短く終え、28周目で2回目のストップを実施……つまり最後のハードタイヤで、28周という超ロングスティントを走ったわけだ。

 この時チームは、早めにピットストップを行なった理由について無線で「フェルスタッペンにアンダーカットされるの可能があるため」と説明していた。しかしあまりにもタイミングが早すぎる……当時はそう思った人も多かったのではないか。これでは最後にもう一度タイヤを交換する3ストップも避けられないだろう……と。

 1回目のタイヤ交換明けと同じように走り出していたら、ハミルトンのタイヤはおそらく最後までもたず、もう一度ピットストップをするか、あるいはコース上で抜かれるかして、フェルスタッペンに勝利を献上していたはずだ。しかしハミルトンはそうさせなかった。

 レース中のラップタイム推移(ページ下部に記載)を見ると、2回目のタイヤ交換を行なった後、実に慎重に走り出しているのが分かる。1回目のピットストップでハードタイヤを履いた直後のラップタイムは1分34秒057(15周目)だったのに対し、2回目のピットストップ直後のペースは1分34秒365(30周目)……通常なら、燃料を消費しマシンが軽くなっている状態であるため、ラップタイムは上がって当然。しかしハミルトンはプッシュせず、最後までタイヤのライフをもたせることに集中したのだ。

 これが功を奏し、ハミルトンは1分34秒台のラップタイムをずーっと並べ、チェッカーまで駆け抜けた。

 対するフェルスタッペンは、2回目のタイヤ交換を終えてハードタイヤを履いた後、1分33秒228(41周目)という驚異的なペースで、先行するハミルトンを追った。これでハミルトンに追いつきはしたものの、デグラデーションが生じてしまっており、追いついた時には当時履いていたタイヤの走行距離が短いというアドバンテージは消滅……ハミルトンを攻略するチャンスは一度しかなかった。しかしそのチャンスは、コース外に出てしまったことで消滅。もう彼に余力は残っていなかった。

 様々な観点から、今回のグランプリはレッドブル+フェルスタッペンが圧倒的有利であったはずだ。しかしハミルトン+メルセデスが完璧な頭脳プレーを成功させ、勝利をもぎ取った。そんなレースだったと言えるだろう。

 ただこれはたらればではあるが、もしレッドブルのもう1台、セルジオ・ペレスが上位を走っていれば、ハミルトンが今回のような戦略を実施するのは簡単ではなかったはずだ。ペレスは予選での失敗、そしてフォーメーションラップでトラブルに見舞われたことで、後方からのレースを強いられ、上位争いには加われなかった。

 ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターも、次のように語っている。

「ペレス選手が下がってしまったこともあり、敵(メルセデス)は2台で作戦を分けることができる。2対1の対決になってしまったことで、ポールポジションは獲ったものの、1台のストラテジーに反応してしまうと、もう1台にカバーされてしまう……チームとしては、非常に気を遣うレースになってしまったと思います」

 この問題は、ここ数年のレッドブルの悩みだった。フェルスタッペンのチームメイトは、彼と同様のパフォーマンスを発揮することができず、レース展開はメルセデス有利になっていった……そのため今季、ベテランであるペレスに白羽の矢が立ったのだ。

 しかしペレスのレースペースは秀逸だった。次戦で予選をしっかり戦うことができさえすれば、メルセデスに今回のような振る舞いを許さず、動きを封じることができるはずだ。

 とはいえメルセデスとハミルトンが、それに対処するためどんな底力を発揮してくるのだろうか? 今シーズンの見どころのひとつと言えるかもしれない。

2021年バーレーンGP決勝ラップタイム分析

2021年バーレーンGP決勝ラップタイム分析

Photo by: Motorsport.com / Japan

 

 

Read Also:

あなたの意見が聞きたい!

Motorsport.comで何を見たいですか?

5分間のアンケートにご協力ください。

- Motorsport.comチーム

コメントを読んで投稿する

関連ニュース :

記事をシェアもしくは保存

Copy link

Facebookでシェアする

Twitterでシェアする

WhatsAppでシェア

Linkedinでシェアする

Pinterestでシェアする

Viberでシェア

前の記事 角田裕毅の鮮烈なデビュー戦をF1公式YouTubeも紹介! 得意のブレーキングで王者を次々パス

次の記事 マゼピン、ほろ苦デビューとなった開幕戦に落胆隠せず「完全に僕のミス。チームに申し訳ない」

Top Comments

コメントはまだありません。 最初のコメントを投稿しませんか?

View More & Comment

More from

田中 健一



凱旋トヨタ、平川亮のドライブで8号車が最速発進。7号車は8番手|WEC富士6時間FP1

WEC

WEC

Fuji

2 時間前

凱旋トヨタ、平川亮のドライブで8号車が最速発進。7号車は8番手|WEC富士6時間FP1



WECは本当に分裂してしまうのか? 独誌発信の報道について中嶋一貴ディレクター「このシリーズを良くしていきたいと、誰もが思っているはず」

WEC

WEC

Fuji

19 時間前

WECは本当に分裂してしまうのか? 独誌発信の報道について中嶋一貴ディレクター「このシリーズを良くしていきたいと、誰もが思っているはず」



今季のル・マン24時間王者、トヨタ母国戦富士に凱旋。中嶋一貴チームディレクター「涼しいドライだと嫌だな……雨なら雨の方がいいかも」

WEC

WEC

Fuji

22 時間前

今季のル・マン24時間王者、トヨタ母国戦富士に凱旋。中嶋一貴チームディレクター「涼しいドライだと嫌だな……雨なら雨の方がいいかも」

More from

ルイス ハミルトン



ハミルトン、フェラーリにスタッフ入れ替えを要求? 伊メディアの報道を本人が否定

F1

F1

スペインGP

6 日前

ハミルトン、フェラーリにスタッフ入れ替えを要求? 伊メディアの報道を本人が否定



フェラーリ、4戦連続表彰台ナシ。それでもバスール代表前向き「あと1回、SCなどがあれば今回は優勝を争えた」

F1

F1

スペインGP

8 日前

フェラーリ、4戦連続表彰台ナシ。それでもバスール代表前向き「あと1回、SCなどがあれば今回は優勝を争えた」



「無事に戻って来れてラッキーだった」ブレーキペダルが底に……ハミルトン、市街地コースで危険なトラブル発生。序盤にガレージへ

F1

F1

スペインGP

10 日前

「無事に戻って来れてラッキーだった」ブレーキペダルが底に……ハミルトン、市街地コースで危険なトラブル発生。序盤にガレージへ

More from

メルセデス



圧倒的タイムのメルセデス、それでも慎重姿勢キープ「実力をそのまま反映した差だとは思わない」

F1

F1

アゼルバイジャンGP

2 時間前

圧倒的タイムのメルセデス、それでも慎重姿勢キープ「実力をそのまま反映した差だとは思わない」



アントネッリ「早く終われば、それに越したことはない」タイトル争い大幅リードで“終わり”を流石に意識?

F1

F1

アゼルバイジャンGP

20 時間前

アントネッリ「早く終われば、それに越したことはない」タイトル争い大幅リードで“終わり”を流石に意識?



メルセデスF1、マレーシアでのバーレーンGPに大規模アップデート投入へ「ポールポジション争いに戻りたい」

F1

F1

スペインGP

2 日前

メルセデスF1、マレーシアでのバーレーンGPに大規模アップデート投入へ「ポールポジション争いに戻りたい」

最新ニュース



苦戦ウイリアムズ、バクーで“ほぼBスペック”マシン投入も「開幕時にあるべきだったモノ」とサインツ……失敗すれば誰かの首が飛ぶとの声も

F1

F1 F1

アゼルバイジャンGP

1 時間前

苦戦ウイリアムズ、バクーで“ほぼBスペック”マシン投入も「開幕時にあるべきだったモノ」とサインツ……失敗すれば誰かの首が飛ぶとの声も



中東戦中止に備える『プランB』イモラの設営にGOサイン判明。最終判断は10月中旬に?

F1

F1 F1

アゼルバイジャンGP

1 時間前

中東戦中止に備える『プランB』イモラの設営にGOサイン判明。最終判断は10月中旬に?



ノリス、アゼルバイジャン初日のペース不足に悩む「心臓にナイフを突き刺されたような気分」

F1

F1 F1

アゼルバイジャンGP

2 時間前

ノリス、アゼルバイジャン初日のペース不足に悩む「心臓にナイフを突き刺されたような気分」



凱旋トヨタ、平川亮のドライブで8号車が最速発進。7号車は8番手|WEC富士6時間FP1

WEC

WEC WEC

Fuji

2 時間前

凱旋トヨタ、平川亮のドライブで8号車が最速発進。7号車は8番手|WEC富士6時間FP1

Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.

フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。

次の 2 つのオプションがあります。

購読中 すでに購読していますか? ここからサインインします

広告ブロッカーを無効にしましたか?
ページをリロード

お知らせの管理

登録