ホンダ田辺F1テクニカルディレクター「もらい事故……またもクラッシュ絡みで、レッドブルには悔しい結果」|F1ハンガリーGP
ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは、レッドブル勢がわずか1ポイントのみの獲得にとどまったハンガリーGPを振り返り、非常に残念なシーズン前半最終戦になったと語った。
写真:: Mark Sutton / Motorsport Images
レッドブル・ホンダにとって、F1ハンガリーGPは悔しい結果となった。1周目のターン1で、メルセデスのバルテリ・ボッタスがマクラーレンのランド・ノリスに追突したことを発端とした多重クラッシュに2台ともが巻き込まれてしまったのだ。
マックス・フェルスタッペンはマシンに大ダメージを受け、最後まで走り切ることはできたものの10位でフィニッシュするのが精一杯。チームメイトのセルジオ・ペレスは、このクラッシュの直後にコース上にマシンを止め、リタイアすることになった。
このレースの結果、ドライバーズランキングでもコンストラクターズランキングでも、メルセデス勢に首位を奪われることになってしまった。
「1コーナーで多重クラッシュが発生してしまいました。そこで前を走っていたフェルスタッペンとペレスが巻き込まれ、両者共に大きなダメージを負ってしまいました」
ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは、そう当時を振り返る。
「ペレスはあまりにもダメージが大きかったので、コース上にストップしました。フェルスタッペンはなんとか戻ってくることができ、赤旗中断の時にできるだけの修復をしてコースに出すということになりました。しかしそういうダメージを負ったクルマではペースが上がらず、それでも10位に入って入賞できました」
中でもペレスのマシンは、パワーユニット(PU)にまでダメージが及んでいる可能性があるという。
「HRD Sakuraに戻して確認しますが、データ上にも(問題が)出ている部分がありますので、結構厳しいかもしれないという感じです。もらい事故です」
なお今回のレース前には、フェルスタッペンのPUを交換することになった。その理由について田辺テクニカルディレクターは、次のように説明した。
「予選後、クルマが戻ってきて、カウルやカバーを外してPUのチェックをしている時に問題を発見しました。予選前にも同じところを確認しましたが、まったく異常はなかった。しかし予選が終わった後にチェックしたら、クラックが入って、オイルが滲み出ているのが分かりました」
そう田辺テクニカルディレクターは語る。
「今回は金曜・土曜と予選が終わるまできっちりと使えたんですが、その状況から日曜日のレースに向けて継続使用するのは危険であるという判断から、エンジン交換を決めました」
フェルスタッペンが予選まで使ったPUは、イギリスGPの決勝レース1周目にクラッシュした際に搭載していたそのモノ。イギリスGP後の検査では問題ないと判断され金曜日から使っていたが、予選後に問題が発見されたということだ。
「前回のクラッシュで、足回りやギヤボックス、モノコックがひどいダメージを受けている中、PUもダメージを受けました。目で見てわかる範囲で傷がついたパーツで、FIAの封印を剥がさずに交換できるものは全て交換しました」
田辺テクニカルディレクターはそう説明する。
「その他大きなストレスがかかった部分は点検しました。車体側の締結点、ギヤボックス側の締結点、その他の部分も入念にチェックしました。PUは封印されていますから、全てを分解して中身を検査することはできません。外観でチェックできる部分、そしてファイバースコープで中を覗いて確認できる部分をチェックし、その結果大丈夫だということで金曜日と土曜日に使いました。しかし、強い衝撃がかかったのは分かっていましたから、入念にチェックした中でクラックが入っているのが確認されたということになります」
今回クラックが入っているのが確認されたのはエンジン(ICE)。MGU-HやMGU-K、TC(ターボチャージャー)には問題ないという。ただ、このICEを今後も使えるかどうか分からないと、田辺テクニカルディレクターは説明する。
「HRD Sakuraに送り返して、クラックの状況とそれが入った位置を見て、今後どうなっていきそうかというところを確認し、修復可能なのかどうかということを検討します。部品交換にできる部分ではないので、なんとか外から補修ができないかを検討します。その結果によって、この先も使えるかどうかが決まります。しかし、かなり厳しいかなという感触はあります」
「レース結果は別としても、ある意味予選の後に発見できてラッキーだったと捉えるしかないと思います。もしそのまま使っていて、そこから外れてしまう……他の構成部品もあるのですぐに脱落することはありませんが、何らかの機能障害をレース中に起こして、それが事故や何かの原因になったり、オイルが急に漏れ出してクルマに火がついてしまうとか、そういう可能性もありました」
「せっかく新しいPUを入れたのに、レース結果を考えれば残念だったという部分もあります。でも、事前に見つかってよかったと思います」
なお一方で同じホンダPUを使うアルファタウリは、ピエール・ガスリーが6位、角田裕毅が7位とダブル入賞を果たした。
「アルファタウリの2台は、混乱に巻き込まれず、レースをきっちりと走り切りました。コンストラクターズランキングでは7番手まで転落してしまいましたが、この先も中団グループの厳しい戦いが続いていく中、ふたりが揃ってポイントを持って帰るというのは重要です。しかもガスリーは、ファステストラップの1ポイントも手にしました。このポイントは、レッドブルから見ればハミルトンから1ポイントを奪ったということになります。そういう意味では良いチームプレイだったと思います」
これで2021年のF1もシーズン前半戦が終了。束の間の夏休みに入る。田辺テクニカルディレクターは、「気分良く」とはいかないものの、しっかりとリフレッシュし、後半戦に臨む準備を整えたいと語った。
「前半戦がこれで終了して、サマーシャットダウンに入ります。レース前には、良いレースをして気持ちよく夏休みを過ごし、リフレッシュして後半に向かいたいと思っていたのですが、レッドブルとしてはまたクラッシュ絡みのレースとなってしまい、悔しい結果でした」
「気分良くというわけにはいきませんが、前半戦の振り返りをしっかりとして、HRD Sakuraのメンバーとも、ミルトンキーンズのメンバーとも、サーキットのメンバーとも、しっかりとコミュニケーションを取って後半戦に向けていきたいと思います。コロナ禍で予断を許さない状況ではありますが、ゆっくりして、気持ちも身体もリフレッシュして後半戦に臨みたいと思います」
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