F1分析|フェルスタッペンの”早め早め”戦略を成功させた「判断と労り」
F1アメリカGPを勝利したマックス・フェルスタッペンとレッドブル。早め早めにピットストップをする戦略が功を奏したわけだが、この戦略を実現するためには、そのタイミングをしっかりと判断し、さらにしっかりとタイヤを労る必要があった。
Max Verstappen, Red Bull Racing RB16B, battles with Lewis Hamilton, Mercedes W12, at the start
Steve Etherington / Motorsport Images
先日行なわれたF1アメリカGP。優勝を手にしたのは、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンだった。
フェルスタッペンは、早め早めにタイヤを交換する戦略を成功させたのが勝因だと言える。
ポールポジションからスタートしたフェルスタッペンだったが、抜群の蹴り出しを見せた2番グリッドのルイス・ハミルトン(メルセデス)に、1コーナーのブレーキングで先行されてしまう。しかし1回目のピットストップを10周目というかなり早い段階で行なったことで、アンダーカットを成功させて首位を奪還。その後2回目のピットストップも早々に行なったことで、ハミルトンにアンダーカットされることを阻止した。
このレースの結果、フェルスタッペンはドライバーズランキングにおけるリードを12ポイントに拡大することになった。
ただラップタイムの推移を見ると、ただ早め早めのピットストップを行なった……というだけではなさそうに見える。
F1アメリカGP決勝 マックス・フェルスタッペンとルイス・ハミルトンのラップタイム推移
Photo by: Motorsport.com / Japan
上のグラフは、フェルスタッペンとハミルトンのアメリカGPの決勝レース中のラップタイムの推移を表したものだ。下に行けば遅く、上に行けば速いということを示している。
まずはグラフ左の赤丸がついた場所を見ていただきたい。10周目にフェルスタッペンがピットに入った後も、ハミルトンはコースに留まっていた際のラップタイム推移が示された場所だ。
フェルスタッペンからのプレッシャーから解放されたハミルトンは、本来ならばディフェンスのためのドライビングをする必要がなくなり、ラップタイムが上がることも少なくない。しかしハミルトンのペースは下がり続けている。つまりタイヤの性能は劣化し、ペースが落ち続けているということだ。その結果、フェルスタッペンから3周遅れてピットに入っている。
一方のフェルスタッペンは、タイヤの性能が劣化してペースが落ちる前にピットストップを実施している。もしピットストップをもっと先延ばししていれば、ハミルトン同様ペースが落ちていた可能性も少なくない。
これは、グラフ右側の赤丸の地点でも同じような傾向が示されている。フェルスタッペンはやはりペースが落ちる前にピットストップを実施。しかしハミルトンはコースに留まり、ペースを落としている。
これらのことを考えると、フェルスタッペンとレッドブルは、しっかりとタイヤの性能をレース中に把握し、ここぞというタイミングでタイヤを交換していたのではないかということが想像できる。
ハミルトンがフェルスタッペンよりもタイヤ交換を遅らせた理由、それは第3スティントの走行周回数が極度に長くなることを避けたためだ。そのため、タイヤの性能が劣化し、ペースが落ちていった後も走行を続けなければならなかったのだ。
当然、フェルスタッペンにもその懸念はあった。実際、第2スティントでフェルスタッペンが使ったタイヤは、完全摩耗一歩手前だったといい、レッドブルのチーム代表であるクリスチャン・ホーナーも、第3スティントでフェルスタッペンがチェッカーまでタイヤを労ることができるかどうか、確信が持てなかったと認めている。
しかしフェルスタッペンは、しっかりとタイヤを労り、チェッカーまでマシンを無事に運んでみせた。
そのためのフェルスタッペンの努力が垣間見えるのが、青丸で示された部分だ。
フェルスタッペンは2回目のピットストップで新品のハードタイヤを装着した。しかし交換直後のペースは、第2スティントのペースよりも少し上げた程度というモノだった。当時のハミルトンはタイヤの性能劣化に苦しんでいたため、差を開いていくためにはそのペースで十分だったのだ。
ハミルトンが2回目のピットストップでタイヤを交換し、猛烈なペースで差を縮めてくると見るや、フェルスタッペンもここでようやくペースアップ。ハミルトンはタイヤ交換直後からペースを上げていたためか、最終的にはフェルスタッペンに攻撃を仕掛けるだけの余力は残っていなかったように見える。
レッドブル&フェルスタッペンの勝因は、確かに早め早めのピットストップだった。しかしそれを実現するためには、ピットストップのタイミングを的確に判断し、そしてしっかりとタイヤを労るという努力も必要だったと言えるだろう。
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