【F1分析】アルファタウリのガスリーがカタールで使いこなせなかったのは、ソフトタイヤだけだったのか?
アルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリーは、F1カタールGPをフロントロウからスタートしながらも、決勝レースではまさかの無得点。彼が使いこなせなかったのは、スタート時に履いたソフトタイヤだけだったのか?
Pierre Gasly, AlphaTauri AT02, Lando Norris, McLaren MCL35M
Zak Mauger / Motorsport Images
先日行なわれたF1カタールGP。ロサイル・インターナショナル・サーキットで初開催のF1だったということもあり、各チームが限られた事前情報のみを手に週末を迎えた。
事前の段階で最も不明瞭だったのは、タイヤがどんな振る舞いを見せるのかということだった。ピレリもF1も、2ストップ作戦がメインになるだろうと予測していたが、実際には多くのマシンが1ストップで走り切った。
フリー走行や予選の段階では、デグラデーションは実に小さいように見えた。実際、FP2のロングランデータを見ると、多くのマシンのデグラデーションがマイナス……つまりマシンに搭載された燃料が消費される分、ペースが上がっていくという傾向が見てとれたわけだ。また予選等のアタックラップでも、1セットのタイヤで2回、3回とアタックすることができていた。つまりデグラデーションは小さかった。
しかしその一方で、タイヤの摩耗が早いという傾向もあったようで、ピレリも事前にその可能性について言及していた。
ただピットストップのロスタイムは26秒程度と、比較的大きかったため、各チームはなんとか1ストップで走り切りたい……そのため各車はタイヤを労り、レースを進めていったわけだ。その結果、各車のデグラデーション値はさらに小さくなった。ミディアムタイヤやハードタイヤはもちろん、ソフトタイヤのデグラデーション値もマイナス。
しかしそんな中で、1チームだけ”プラス”のデグラデーション、つまり走れば走るほどペースを落としてしまったチームがあった。それがアルファタウリだ。そのため、フロントロウ2番グリッドからスタートしながらも、ピエール・ガスリーは入賞圏外となる11位フィニッシュ。8番グリッドからスタートした角田裕毅も、13位となった。
角田はスタート時に履いたソフトタイヤでのパフォーマンスがすぐに下落し、9周を走ったところでピットイン。その後ミディアム、ハードと繋ぐ2ストップ作戦を採った。ただミディアムとハードのパフォーマンスはまずまずで、レース終盤には前を行くマシンに迫るスピードを見せた。
しかしガスリーに至っては、ソフトタイヤはおろか、ミディアムタイヤでもデグラデーション値が大きく、ポジションを落とす一方となってしまった。
角田のミディアムタイヤでのデグラデーション値は-0.036秒/周。その他、今回ポイントを争ったライバル勢のミディアムタイヤでのデグラデーション値は、セバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)が-0.078秒/周、ランス・ストロール(アストンマーチン)が-0.094秒、カルロス・サインツJr.(フェラーリ)は-0.079秒/周などとなっていた。
一方でガスリーのミディアムタイヤでのデグラデーション値は、第2スティントで0.006秒、第3スティントで0.046秒となっていた。ただもう少し詳しく見てみると、スティント終盤にはさらに苦しんだというのがよく分かる。
第2スティントでは、序盤15周のデグラデーションは、マイナスであり、ペースが上がっていっていた。しかし29周目を境にペースが下落。0.165秒という大きなデグラデーション……つまり崖を迎えたような形になった。第3スティントでも同様に、序盤11周はデグラデーション値がマイナスだったが、その後はプラスに転じてしまっている。
F1カタールGP 決勝レースペースグラフ
Photo by: Motorsport.com / Japan
上がカタールGPの決勝レースの中団グループ(アルピーヌ、アストンマーチン、アルファタウリ)のレースペースを示したグラフ。グラフの上にいくほど、ペースが速いということを意味している。これを見ると、アルファタウリの、特にガスリーのペースが厳しいのがお分かりいただけるだろう。
F1カタールGP決勝レースペースグラフ(単純化版)
Photo by: Motorsport.com / Japan
さらに上のグラフは、レースペースの推移をより単純化したもの。右肩上がりの線になっていれば、デグラデーションがマイナス(つまり走れば走るほど速くなっていく)ということを示している。
この中の黒線がガスリーのペースを示したモノだが、第1スティントと第3スティントが右肩下がり。つまり大きなデグラデーションが発生していたということになる。
レース後には、アルファタウリのマシンにはソフトタイヤが合わなかったのではないか……そんな分析も見てとれた。しかしここから判断するに、ミディアムタイヤも使い切れていないのが分かる。また燃料搭載量が多かろうが少なかろうが、デグラデーションは大きい。つまりガスリーは、どんな状況でもタイヤを使いこなせていなかった。
ガスリーのコメントも、それを裏付けている。
「今日は何をやってもダメだった。5回でも、3回でも、2回でも、1回でも……戦略が問題だったわけじゃないんだ。正直言って、問題だったのはペースだ。僕らは遅すぎて、セブ(セバスチャン・ベッテル/アストンマーチン)の後ろについた時さえ、彼を抜くことはできなかった。ペースも全然足りなかったし、とても苛立たしかった」
今シーズンは残り2戦。この現象がカタールGP限りのことだったのか、あるいは次のサウジアラビアGPでも同じ状況が続くのか。もし後者なら、シーズン終盤にしてアルファタウリは、大きな宿題を背負ってしまったことになる。
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