F1アブダビGP決勝:フェルスタッペンが最終ラップバトルを制し戴冠&ホンダに悲願のタイトルを届ける。角田裕毅は自己最高4位
F1最終戦アブダビGPで今季のF1ドライバーズ・チャンピオンに輝いたのは、レースを制したマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)。ホンダF1としても有終の美を飾る勝利を遂げ、角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)は自己最高の4位を獲得した。
写真:: Simon Galloway / Motorsport Images
2021年シーズンを締めくくるF1第22戦アブダビGPの決勝レースを制し、年間ドライバーズチャンピオンに輝いたのはマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)だった。
近年稀に見る激しいシーズンもいよいよ最終戦を迎えた。
特筆すべきは、フェルスタッペンとハミルトンのドライバーズタイトル争い。開幕戦バーレーンGPから毎戦のようにコース上でバトルを繰り広げ、時には接触や相討ち、場外乱闘さえもこれまでの21戦で展開されてきた。フェルスタッペンが今季9勝、ハミルトンが8勝を上げたため、ランキング上ではフェルスタッペンが首位に立っていたが、最終戦を前にふたりは369.5ポイントで並んだ。タイトル候補が同点で最終戦に望むというのは、F1としては1974年以来、史上2度目の出来事だという。
決勝グリッドではそのふたりがフロントロウに並んだ。フェルスタッペンがポールポールポジション、ハミルトンが2番手に並んだ。
また、2015年からF1に参戦し、7シーズンをパワーユニット(PU)サプライヤーとして戦ったホンダF1もこのグランプリがラストレースとなる。同じくF1ラストレースを迎えるキミ・ライコネン(アルファロメオ)への引退セレモニーを終え、西日が差し込むヤス・マリーナ・サーキットのボルテージは最高潮に高まり、それぞれの最終戦に向けスターティンググリッドは緊張感に包まれた。
5つ灯ったスタートシグナルがブラックアウト。ターン1に向けて抜群のスタートダッシュを見せたのはハミルトン。ホイールスピンを起こしたフェルスタッペンは何とか挽回しようと、ターン6のインに飛び込んだ。
行き場を失ったハミルトンはランオフエリアに飛び出し、そのまま首位でコースに戻った。レッドブルはポジションを明け渡すように求めたが、スチュワードはフェルスタッペンがハミルトンを押し出したとして調査の必要なしと判断。ミディアムタイヤを履くハミルトンは、ソフトタイヤのフェルスタッペンに対して少しずつ差を開いていった。
10周終了時点のふたりのタイム差は3.5秒。タイヤ戦略でアドバンテージを持つハミルトンはフェルスタッペンを引き離しにかかった。3番手セルジオ・ペレス(レッドブル)以下、サインツ・Jr.、ランド・ノリス(マクラーレン)、シャルル・ルクレール(フェラーリ)が並ぶというオーダー。オープニングラップでバルテリ・ボッタス(メルセデス)を抜いた角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)が、7番手でそれを追いかけた。
リヤタイヤのデグラデーションに苦しみ、ハミルトンから大きく離され始めたフェルスタッペンは13周目の終わりにピットイン。新品のハードタイヤに履き替えた。
翌周にメルセデス陣営も反応しハミルトンをピットへ呼び込んだ。ハミルトンはフェルスタッペンの5秒前、2番手でハードタイヤを履いてコースに復帰した。
ソフトタイヤを履くペレスは、ライバルがピットへ入る中でステイアウト。ハミルトンを抑え込むチームプレーに出た。
20周目にペレスとハミルトンはバトル開始。周回を重ねたソフトタイヤでもペレスは素晴らしいディフェンスを見せ、ハミルトンを1周半に渡り抑え込んだ。ハミルトンとフェルスタッペンの差は一時8秒にまで開いたが、フェルスタッペンはペレスの援護で一気に追いつき、その差を1秒にまで縮めてみせた。
フェルスタッペンは自己ベストタイムで周回を重ねていくも、再び自力に勝るハミルトンが徐々に差を開いていく。レース30周目突入時点でその差は4秒にまで拡大した。フェルスタッペンが差を詰めると、ハミルトンが追撃を諦めさせるかのようにファステストラップを叩き出していった。
35周目にアントニオ・ジョビナッツィ(アルファロメオ)にマシントラブルが発生。ターン9出口でマシンを止め、コース上にはバーチャル・セーフティカー出動が宣言された。フェルスタッペンはこの機を活かすべく、37周目の終わりにピットイン。ペレスとともに新品のハードタイヤに履き替えた。
38周目にVSCが解除され、フェルスタッペンは17秒まで開いたハミルトンとの差を縮めるべくフルプッシュを開始した。しかし、ハミルトンは周回を重ねたタイヤでも自己ベストタイムを記録し必死の抵抗を見せ、フェルスタッペンは残り15周時点で14秒差と大きくそのギャップを縮められないでいた。
しかし、レース53周目に後方でミック・シューマッハー(ハース)とポジションを争い、コントロールを失ったニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)がターン14でクラッシュ。マシンはコース上に止まり、セーフティカーが出動。レッドブル勢がここでソフトタイヤに履き替えた一方、ハミルトンはフェルスタッペンに逆転される可能性があったことから、ピットに入れなかった。
フェルスタッペンに続いてピットに入ったペレスだったが、セーフティカーランが続く残り3周というところでチーム側からリタイヤを告げられ、ガレージにマシンを戻した。
当初、バックマーカーがセーフティカーを追い越す許可が出されないとレースコントロールから指示があったが、レース再開直前でハミルトンとフェルスタッペンの間にいたバックマーカーのセーフティカー追い越しが許可され、残り1周でフェルスタッペンがハミルトンの後ろにピタリとつける状態でレースは再開された。圧倒的不利な状況に追い込まれたメルセデスのトト・ウルフ代表の怒号が飛ぶ中、ファイナルラップで究極のバトルが展開された。
1コーナーではハミルトンがトップを守ったが、ターン5でインを差したフェルスタッペンが首位浮上。ハミルトンは、2本目のバックストレートで抜き返しを狙うも抜ききれぬまま、フェルスタッペンがトップチェッカーを受けた。
24歳のフェルスタッペンは、自身初の年間ドライバーズチャンピオンを0.371秒差で掴み取った。なんとしてもハミルトンに追いつこうとするチームの戦略とフェルスタッペンの尽力が、最後の最後で勝利の女神を振り向かせた。父ヨス・フェルスタッペンが果たせなかった夢、オランダ人初チャンピオンの夢、レッドブルファン、ホンダファンの夢を、最後まで諦めなかったフェルスタッペンとチームが叶えてみせた。
レース後、フェルスタッペンは涙ながらにレッドブルやホンダ、ファンに感謝を伝えた。このグランプリでF1を去るホンダとしては、1991年のアイルトン・セナ以来30年ぶりのタイトル獲得となる。第4期のF1活動では、マクラーレンとF1に復帰したものの3シーズンは大きく低迷。ドン底を味わったホンダは2018年にトロロッソ(現アルファタウリ)ともに再起をかけ、翌年にはレッドブルへのPU供給を開始。そこから3シーズンを共に戦い、悲願のタイトルを手にしたのだ。
レースで終始速さを見せ、8度目のタイトル獲得が手から滑り落ちたハミルトンとしては、2位フィニッシュに納得のいかない様子だったが、パルクフェルメでフェルスタッペンと握手を交わし健闘を讃えた。やるせない思いの中、勝者を称えるその姿に王者ハミルトンを見た。
なお、メルセデスとしては8年連続のコンストラクターズチャンピオンを獲得。ペレスがリタイヤしたことで、表彰台の一角3位にはサインツJr.が登った。
4位には角田。オープニングラップでボッタスを抜き、レースで終始好走を見せた。ボッタスにはピットストップでオーバーカットを許したが、セーフティカー明けのファイナルラップで抜き返し自己最高位を最終戦で掴み取った。5位には角田のチームメイト、ピエール・ガスリーが入り、チームとしても素晴らしい形でシーズンを締めくくった。
なお、引退レースとなったキミ・ライコネンは26周目にブレーキトラブルが発生し、翌周にレース終えた。時を同じくして、ウイリアムズでのラストレースを戦ったジョージ・ラッセルにも駆動系のトラブルが発生しリタイヤとなった。
長いF1史の中でも最高のシーズンのひとつとも言える、イベントフルな2021年シーズンの最終戦がこうして幕をおろした。さあ、来年はF1に”新時代”が到来する。新レギュレーションの導入により、また新たなドラマが生まれるだろう。ただ、2022年2月23日からバルセロナでウィンターテストが始まるまでは、この余韻に浸るとしよう。
最後に、感動をありがとうホンダ。
順位 | ドライバー | 周回数 | タイム | 差 | 前車との差 | 平均速度 | ポイント |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | マックス フェルスタッペン | 58 | 1:30'17.345 | 26 | |||
2 | ルイス ハミルトン | 58 | 1:30'19.601 | 2.256 | 2.256 | 18 | |
3 | カルロス サインツ Jr. | 58 | 1:30'22.518 | 5.173 | 2.917 | 15 | |
4 | 角田 裕毅 | 58 | 1:30'23.037 | 5.692 | 0.519 | 12 | |
5 | ピエール ガスリー | 58 | 1:30'23.876 | 6.531 | 0.839 | 10 | |
6 | バルテリ ボッタス | 58 | 1:30'24.808 | 7.463 | 0.932 | 8 | |
7 | ランド ノリス | 58 | 1:31'16.545 | 59.200 | 51.737 | 6 | |
8 | フェルナンド アロンソ | 58 | 1:31'19.053 | 1'01.708 | 2.508 | 4 | |
9 | エステバン オコン | 58 | 1:31'21.371 | 1'04.026 | 2.318 | 2 | |
10 | シャルル ルクレール | 58 | 1:31'23.402 | 1'06.057 | 2.031 | 1 | |
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