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【F1分析】ハミルトンがアンダーカットできず、オーバーカットを許したこれだけの理由

メルセデスのルイス・ハミルトンは、F1モナコGPでアンダーカット作戦を成功させることができず、逆にオーバーカットを許してしまったことで、7位に終わった。その原因をラップタイムの推移から紐解く。

Lewis Hamilton, Mercedes, arrives in Parc Ferme

Lewis Hamilton, Mercedes, arrives in Parc Ferme

Steve Etherington / Motorsport Images

 メルセデスF1のルイス・ハミルトンは、先日行なわれたモナコGPで7位と大惨敗を喫した。抜きにくいモナコのコースで、前を行くマシンよりも前に出るためにアンダーカット作戦を実施したがこれは成功せず、さらにライバルのオーバーカットを許してしまったことで、この順位となってしまったのだ。

 ハミルトンとメルセデスの目論見は、なぜこうも崩れてしまったのか。ラップタイムの推移から読み解いてみよう。

 F1のレースで前を行くマシンをコース上で抜くに抜けない……そんな時に多用される戦略がアンダーカットである。

 このアンダーカットとは、前を行くマシンよりも先に新品タイヤに交換し、そのタイヤのパフォーマンスを最大限に活かし、古いタイヤで多くの距離を走った、前を行くマシンの前に出ようというモノである。

 この典型例が、今季の第4戦スペインGPである。同レースはレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンがリードしていたが、後方からはメルセデスのルイス・ハミルトンが激しくプレッシャーをかけていた。ただハミルトンは抜くことができず……結局意表を突いてピットストップを行なう。ピットアウトしたハミルトンは猛プッシュし、フェルスタッペンとの差を縮めた。これによりたとえ1周後にフェルスタッペンがタイヤ交換を行なっても、ピットアウトした時にはハミルトンの方が前……という状況に持ち込み、勝負を決めたのだ。

 そのハミルトンは、モナコGPでアルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリーを抜きあぐねていた。そのためチームは、ハミルトンを早々にピットに呼び戻し、ガスリーをアンダーカットしようとした。

 しかしこの目論見は脆くも崩れてしまった。ガスリーはハミルトンの翌周にピットイン……本来ならばハミルトンが前に出るはずだったがそうはならず、ガスリーが再びハミルトンの前に立ち塞がったのだ。

 なぜこんな形になったのか? これにはいくつかの原因があることが、ラップタイムの推移を見ると分かる。

F1モナコGP決勝レースペース分析

F1モナコGP決勝レースペース分析

Photo by: Motorsport.com / Japan

 まずハミルトンのピットインラップ、そしてピットアウト以降のラップタイムが非常に遅いのだ。

 ハミルトンはピットに入る前の周に、1分17秒044を記録している。それまでハミルトンは1分16秒台前半〜中盤で走っていたにもかかわらず、一気に0.5秒ほどペースを落としたことで、ガスリーとの差が1.3秒ほどに広がった。この段階でピットストップを行なったのだ。

 そしてピットアウトした直後はガスリーに前を抑えられたという事情はあるものの、その後一旦ガスリーとの差が広がっている。

 ハミルトンはモナコGPの走行初日から、タイヤのウォームアップに苦しんでいる旨を語っていた。つまり、先に新品タイヤを履いたものの、そのパフォーマンスをすぐに発揮することができず……1周後にピットインしたガスリーよりも速く走ることができなかったわけだ。

 ハミルトンが第2スティントで履いたタイヤはハード。つまり、最も硬いタイヤだ。これがもしミディアムに履き替えることができるタイミングだったのなら、定石通りアンダーカットを成功させていた可能性もある。

 ただ、ハミルトンの受難はこれでは終わらなかった。後にピットストップを行なったセバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)とセルジオ・ペレス(レッドブル)に先行されてしまったのだ。

 これもラップタイムの推移から読み解いてみよう。

 ハミルトンとガスリーは、ピットストップ前の周回で1分16秒台後半〜1分17秒台というペースだった。ところが、ハミルトンの2周後、ガスリーの1周後にピットストップを行なったベッテルは、ピットストップ直前の周回で1分16秒フラットを計測(グラフ中1の部分)。つまりこの1周で、ハミルトンやガスリーよりも約1秒タイムを稼いでいるのだ。そして前述の通り、ハミルトンはピットアウト後のペースに苦戦。ベッテルが先行することになった。

 ペレスはもっと顕著だ。彼は前が開けたと見るや、1分14秒台までペースアップ(グラフ中2の部分)。そしてベッテル、ガスリー、ハミルトンよりもピットインを遅らせた。しかもペレスのスピードアップしたペースは、先に新品タイヤに交換していた3人よりも優れており、さらにメルセデスのバルテリ・ボッタスがピットイン時にタイヤが外れないというトラブルに見舞われたことも加わり、4つもポジションを上げることに成功したのだ。

 これによって隊列の順序が決定……そして特に抜けないモナコであり、いくら今季のポイントリーダーに君臨していたハミルトンをもってしても、ライバルを攻略することができなかった。

 アンダーカットを成功させるには、ふたつの要素が必要だ。ひとつは、新品タイヤを履いた時にしっかりとウォームアップさせることだ。これは、今回のハミルトンにはできなかったことだ。

 そしてもうひとつは、タイヤのデグラデーションが大きいこと。デグラデーションとは、タイヤが走行を重ねるごとに消耗し、パフォーマンスが低下する現象のことを指す。今回のモナコでは、各車ともにデグラデーションが非常に小さく、全くと言っていいほどタイムを落とさずにレースを走り切っている。逆を言えば、タイヤを新品に交換しても、ペースアップを果たすことができていない。本稿に添付したグラフを見てもそれは明らかで、タイヤ交換後にペースアップしたのはペレスのみ。それも前が開けたため、本来持っていたペースをようやく発揮できた……ということだろう。

 デグラデーションが小さければ、新品タイヤとのパフォーマンス差が小さく、先に新品タイヤに交換することの優位性はゼロに等しいわけだ。

 今回のグランプリは、様々な状況から、アンダーカットしにくい条件が揃っていた。しかしガスリーを攻略するためには、アンダーカットが成功する可能性に賭けるしかなかった。加えて普段のレースではまず考えにくいオーバーカットがしやすい状況が揃っていたことで、先に動き、本来のペースを発揮できない状況に”閉じ込め”られたハミルトンは、絶好の標的となってしまったのだ。

 メルセデスとハミルトンにとっては、厳しいレースだったと言えよう。

 

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