2021年のF1レギュレーションはどう変わる? 開幕を前にチェック!
2021年のF1がいよいよ開幕する。角田裕毅のデビュー、ホンダF1の最終年ということもあり大きく注目を集めているが、そのシーズンを楽しむためにも、今一度その詳細をおさらいしておこう。
写真:: Sam Bloxham / Motorsport Images
まもなく開幕する2021年のF1。昨年は新型コロナウイルスの影響により、開幕が7月まで遅れることになったが、今のところ今年は、予定通り3月28日決勝のバーレーンGPで初戦を迎えることができそうだ。
本来ならば2021年は、マシンのコンセプトを一新させる、大規模なテクニカルレギュレーションの変更が実施される予定だった。しかしコロナ禍により各チームとも経済的に大きな打撃を受けたため、この新テクニカルレギュレーションの導入が1年延期されることになった。
ただ、昨年と全く同じレギュレーションで、2021年のF1が行なわれるわけではない。本稿では、今季改訂されるレギュレーションをおさらいしておこう。
■開発制限
前述の通り、各チームの開発コストを削減するため、今季は基本的には昨年のマシンを継続して使うことになっている。ただ、空力面での開発は基本的に今季も自由に行なうことができ、開発が禁止されている部分でも、各チームに割り当てられているトークンを使うことで、手を加えることができる。とはいえ各チームが持っているトークンは”2”のみであり、変更できるエリアは非常に限られている。
またパワーユニットについては、ICE(エンジン)、TC(ターボチャージャー)、MGU-H(熱エネルギー回生システム)は昨シーズン末から今シーズン末までの間に1回限りアップデート可能、MGU-K(運動エネルギー回生システム)、ES(エナジーストア/回生システム用のバッテリー)、ECU(コントロールシステム)は、昨シーズン中に変更が行なわれていなければ、今シーズン末までに1度限りアップデート可能とされている。
■ダウンフォース削減
昨シーズンと同じマシンを使いながら、空力開発が比較的自由であるということは、何の規制も加えなければダウンフォース(空気の力によって、マシンを路面に押さえつける力)が向上し、コーナリングスピードが速くなるということを意味する。そうなってしまうとタイヤにかかる負荷が増し、タイヤに重大なダメージが及ぶ可能性が出てくる。
それを防ぐため、レギュレーションに一部変更が加えられ、ダウンフォースの発生量を削減することが目指されている。
この最たる例が、フロア面積の削減だ。フロアは、ダウンフォースを獲得する上で特に重要なパーツであると言える。その面積が大きければ大きいほど、ダウンフォース量を増やすことができる可能性が高まる。ただ今季はその後方、リヤタイヤ直前の部分を斜めに切り取り、その面積が減らされることになった。
さらに昨年まで各チームは、このフロアの端に開口部を設け、エアカーテンのような効果を発生させることで、効率的にダウンフォースを生み出すフロア下の気流を守ってきた。しかし今季はこの開口部を設けることも禁止された。さらにこの気流を加速させるため、マシンの後方に取り付けられているディフューザー内部のスプリッター(整流板)の高さが短くされ、リヤのブレーキダクトにも制限が加えられた。
これらにより、ダウンフォース量を10%削減することが目指されているのだ。
この変更は、小さな変化のように見える。しかしテストを見る限り、その勢力図に大きな影響を与えることになったかもしれない。
■新タイヤの導入
ダウンフォースを減らすだけでなく、ピレリもタイヤの構造を強化することで、タイヤにトラブルが発生することを避けようとしている。
前述のダウンフォース削減、そして新構造のタイヤが導入されることで、今季のF1マシンは昨年のマシンと比べて、1周につき約1秒遅くなるだろうと予想されていた。しかしピレリのF1及びカーレーシング責任者のマリオ・イゾラは、今季のF1マシンは既に2020年と同じくらいの速さを備えていると語っている。
■DASの使用禁止
メルセデスが昨年導入したDAS(二重軸ステアリングシステム)も、今季からは使用が禁止されることになった。このシステムは、ステアリングホイールを前後に押し引きすることで、フロントタイヤのトー角をコントロールしようとしたもの。これによって、直線走行時の空気抵抗を減らしたり、セーフティカー走行中にタイヤを温めたりするのに効果を発揮していた。メルセデスはそのアドバンテージを、今季は失うことになったのだが……その影響はいかほどだろうか?
■予算制限の導入
以前から検討が進められていた、各チームの活動予算に上限額が設けられた。2021年の各チームの活動予算は、上限が1億4500万ドル(約150億円/21戦の場合)と規定される。これにはドライバーのサラリー、パワーユニット供給に関する費用、チーム内の給与が最も高い3人の賃金などは含まれない。さらに、マーケティングや従業員に対するボーナス、そして移動費用なども免除される。
この規則によりメルセデス、レッドブル、フェラーリなどは、支出を大幅に削減することが必須となった。一方小規模なチームは、そもそもこの上限に満たない金額で活動していたが、この規則導入に伴い、チーム間の格差が縮まることが期待されている。
なお2022年以降は、この上限額がさらに引き下げられる予定だ。
■空力開発ハンデキャップ
チーム間の差を縮めるために導入されるもうひとつの施策が、いわゆる”空力開発ハンデキャップ”だ。
これは前年のコンストラクターズランキングに応じて、ファクトリーで行なうことができる風洞実験やCFD(計算流体力学)の回数や時間に制限が加えられるというもの。つまり2020年のコンストラクターズランキング1位だったメルセデスが最も少ない時間/回数しか空力開発のための実験を行なうことができず、逆にコンストラクターズランキング最下位だったウイリアムズが、もっとも多くの実験を行なうことできるというものだ。
今季はこのシステム導入1年目であるため、その差は比較的小さなモノに抑えられている。しかしウイリアムズは、メルセデスよりも22.5%も長い時間、風洞実験ができるということになる。
ただこの差は今後さらに拡大し、2022年以降は1位と最下位の差は45%になる見通しだ。これは、チャンピオンシップに大きな影響を及ぼす可能性があると考えられる。
■スプリント”予選”レースの実施
今季のレース週末は、昨年まで90分で実施されていたフリー走行1回目と2回目の時間が60分に削減される。つまり、チームが予選や決勝に向け、データを収集する時間が1時間短くなるということだ。
ただそれだけではない。2021年には3つのグランプリで、決勝とは別にスプリントレースを行なうことが目指されている。
これが実現すれば、従来の方式の予選が金曜日に前倒して行なわれ、土曜日に100kmのスプリントレースを実施。その順位によって、日曜日の決勝レースのスターティンググリッドを決めるという形になるとされている。
ただこの実施やフォーマットについては、まだ最終決定が行なわれていない。シーズンが始まる前(もうほとんど時間がないが)までに決められるとされている。
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