F1新車”雑感”解説2022「フェラーリF1-75」:美しい跳ね馬復活? またも独特のサイドポンツーンデザイン&ノーズも凄い!
フェラーリが発表した2022年用F1マシン”F1-75”は、独特な形状のサイドポンツーンを備えた、これまで発表されたマシンとは異なる印象を持つ1台だった。またそのカラーリングは1990年代を彷彿とさせる。

フェラーリF1が発表したニューマシン”F1-75”。このマシンもまた、これまで発表された各チームの2022年型車とは趣が異なる。新レギュレーションにより、全てのマシンが同じような形状になるのではないかと言われていたが、そんな懸念をまたしても払拭してくれた。
まず目を引くのはそのカラーリングだ。前後のウイングとフロアは黒、そしてボディは濃い赤……F1ブーム時代のファンは「あの時代のフェラーリが帰ってきた!」と歓喜してしまう、そんな配色になっている。

Ferrari F1-75 detail
Photo by: Ferrari
サスペンションは、前がプッシュロッド、後がプルロッドであり、今季の最大勢力の一角である。ただリヤのサスペンションは面白い。ウイッシュボーンのアッパーアームは、車体側の非常に前の方に接続されており、大きな後退角がつけられてタイヤ側に繋がっている。これにより車体の最後端を、できるだけ低くしようとしているのだろう。一方ロワアームは、車体側は後方に接続されており、その外側をプルロッドが通るレイアウトになっている。こちらは、大きくなったディフューザーとベンチュリトンネルを避ける解決策であろうとも考えられる。
このリヤに空気を流すサイドポンツーンとエンジンカウルの形状も、他のチームとは異なる。

Ferrari F1-75 detail
Photo by: Ferrari
ハロの幅の分のボディワークは後方に向けて緩やかに外側に傾斜しながら、マシンのリヤエンドへと向かう。サイドポンツーンはショルダー部が盛り上がり、上面にエアダムを形成している。後端では再び盛り上がり、エンジンカウルを降ってきた気流と、サイドポンツーン上面を流れてきた気流を合流させているようだ。なおこのサイドポンツーン上面からエンジンカウルにかけ、大きくルーバーが設けられている。このルーバーにはもちろん排熱の効果もあるだろうが、間違いなく空力的な意味合いも持たされているのだろう。
サイドポンツーンの側面も、他のマシンにはない独特の形状。下部に向けて直線的にストンと落ちている。ただ下部にはきつくアンダーカットが設けられ、そこを通って気流がリヤサスペンションの下〜ディフューザーの周りに抜けるようにデザインされているように見える。カラーリングも相まって、1992年のフェラーリF92Aのダブルフロアのようにも見えてしまう。
サイドポンツーンのインテークは、3D形状。こちらは1994年のフェラーリ412T1に似ていると言ったら、言い過ぎだろうか?
ノーズは緩い曲線を描くスラントノーズで、比較的長い印象。フロントウイングの全てのフラップがノーズに接続され、その先端は鋭く尖っている。またノーズの下側も抉られていて、非常に細くスリムになり、スペースが確保されている。
このノーズはただ細いだけではない。衝撃吸収構造となっているモノコックに近い部分と、ウイングが取り付けられている先端部分の”二分割”構成になっているのだ。これにより、新たなノーズを登場させる度にクラッシュテストを受ける必要はなく、開発を迅速に進めることができる。またコスト削減という面でもメリットがあるだろう。実に面白いアイデアだ。
全体的に見渡しても、このフェラーリF1-75は独自のソリューションが随所に見える、意欲作であると言えよう。
2019年以来の優勝を目指すフェラーリ。パワーユニットがどれほど進歩したのかも気になるところだ。

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