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F1分析|大ギャンブルを成功させたアルボン、成功できなかったストロール……明暗分かれた最後尾スタートのふたり

F1オーストラリアGPの決勝レースでは、ウイリアムズのアレクサンダー・アルボンが、最後尾グリッドからスタートし、大ギャンブルの戦略を成功させ10位。失うモノのないポジションを存分に活かしてみせた。

Alex Albon, Williams FW44

写真:: Carl Bingham / Motorsport Images

 フェラーリのシャルル・ルクレールが圧勝したF1オーストラリアGP。このレースでは特異なタイヤ戦略を採ったドライバーもいた。ひとりはアストンマーチンのランス・ストロール、もうひとりはウイリアムズのアレクサンダー・アルボンである。

 本稿ではこのふたりの戦略を分析してみる。

 まずはアルボンだ。アルボンは予選で十分な燃料サンプルを提出できなかったため最後尾グリッドからのスタートとなった。ハードタイヤを装着したアルボンは、セーフティカーが出ても、バーチャル・セーフティカーが宣言されても、一向にピットに入る気配はなし。最終盤になっても、まだハードタイヤを履き続けていた。タイヤを交換せず、チェッカーを受けてしまえば、そのドライバーは失格処分となってしまう……。

 結局アルボンがピットインしたのは、58周レースの57周を走り切ったところだった。アルボンはソフトタイヤに履き替えてコースに戻ると、アルファロメオの周冠宇の前、10番手。そのままチェッカーまで走り切り、貴重な1ポイントをもぎ取ってみせた。

F1オーストラリアGP決勝レースのレースペース分析(アルボン&ストロール)

F1オーストラリアGP決勝レースのレースペース分析(アルボン&ストロール)

Photo by: Motorsport.com / Japan

 レースペースをグラフ化してみると、アルボンが終始好ペースで走っていたのが分かる。アルボンは周回を重ねるごとにペースアップ。終盤には、スタート時よりもなんと4秒もペースを上げていたのだ。

 これはマシンに搭載された燃料が消費されていったことにより生じたペースアップ。重量がラップタイムに与える影響を考えると、タイヤにはほとんどデグラデーション(性能劣化)が生じていなかったと思われる。

 レイアウトが変わったので単純な比較はできないかもしれないが、かつてこのアルバートパークのフューエルエフェクト(燃料搭載量によるラップタイムへの影響)は、10kgあたり0.4秒程度だった。レース中の燃料消費量は100kg程度であるはずなので、それを考えればレース中に4秒速くなるという計算ができる。本来ならば、タイヤのデグラデーションも生じるため、計算通りに速くなるということはないはずだ。しかし今回のアルボンが実際に4秒速くなっているため、デグラデーションがゼロだったと言うことができるだろう。

F1オーストラリアGP決勝レースのギャップ分析(中団グループ)

F1オーストラリアGP決勝レースのギャップ分析(中団グループ)

Photo by: Motorsport.com / Japan

 そして最終ラップまでピットストップを遅らせたのは、後方との差を見ていたからに他ならない。ストロールの前でコースに戻ることができれば、入賞1ポイントを手にすることができる。しかしストロールの前でコースに戻るためには、ピットストップで失うタイムを考えると、20秒以上の差をつける必要があった。ただこの20秒間隔に開くことがなかなかできず、しかもその間にストロールはよりペースの良い周に抜かれてしまった……そのため最後の最後まで、ピットストップを遅らせるしかなかったのだ。

 アルボンは57周目、セクター1を自己ベストで駆け抜け、ピットに飛び込んだ。そのタイミングでの周との差は20.2秒……前に出られるかどうか、ぎりぎりのところである。

 ウイリアムズのこの時のピット作業は、特に早いものではなかった。しかしアルボンがコースに飛び出した場所は、周の0.366秒前。これで10番手をキープし、そのままチェッカーを受けることになった。

 当然、マシンの特性がタイヤに優しいということもあるかもしれない。しかしアルボンの巧みなタイヤマネジメントがなければ、今回のレースを展開することはできなかっただろう。そしてチームとしても、SCやVCSという”誘惑”にも動じず、アルボンに的確な指示を送って”超ロングスティント”戦略を成功させたのは、あっぱれと言う他ない。

 確かにここ数年は、マシンのパフォーマンス面では苦しい日々が続いている。しかし、かつての最強を誇ったウイリアムズのDNAは今も受け継がれている……それを証明するレースだったと言ってもいいのではないだろうか?

 もうひとり面白い戦略を採ったドライバーはストロールである。

 ストロールはレース序盤にフェラーリのカルロス・サインツJr.がグラベルにストップしたことで出されたセーフティカーのタイミングでピットインし、ミディアムタイヤに履き替えた。すると翌周、ストロールは再びピットイン。ミディアムタイヤを1周で”捨て”、ハードタイヤに履き替えた。

 ストロールはこれで、タイヤの使用義務を消化。しかもセーフティカー中に2回のタイヤ交換を完了し、長い距離を走れるハードタイヤに履き直して隊列の最後尾でレース再開を迎えることができた。つまりそのままタイヤを交換せず、レースを最後まで走り切ることができれば、前のマシンがピットインする度にポジションを上げることができるという、非常に有利なポジションに着くことができたわけだ。

 ただストロールは、アルボンのようにレースの最後までタイヤをもたせることができなかった。2回目のセーフティカー走行の際に3度目のタイヤ交換を実施し、再び走行履歴の少ないハードタイヤに履き替えた。にも関わらずストロールのペースは上がらず、レース最終盤には逆にペースが低下。アルファロメオの周冠宇にも抜かれてしまうことになった。

 アグレッシブな戦略を成功させたアルボン、そして成功させることができなかったストロール……両者に共通しているのは、グリッドの最後列からスタートしたということ。失うモノは何もない立場でなら、ギャンブルに挑むことができる……そしてそれがバッチリとハマれば、今回のアルボンのような好結果を手にすることができる。今回のレースは、その典型例だったということだろう。

 
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