F1分析|ルクレール、トラブルなくても簡単には勝てなかった? レッドブルの圧倒的ペース|アゼルバイジャンGP
F1アゼルバイジャンGPでフェラーリのシャルル・ルクレールは、早々にピットに飛び込んでタイヤ交換義務を果たした。しかしその戦略でも、レッドブルに勝てなかった可能性が高そうだ。
写真:: Andy Hone / Motorsport Images
F1アゼルバイジャンGPを制したのはレッドブル勢だった。それも、マックス・フェルスタッペンが優勝、セルジオ・ペレスが2位という1-2フィニッシュ。レッドブルの1-2フィニッシュは、今季これで3回目だ。
さて今回のレースは、序盤にフェラーリ勢が全滅したことで、レッドブルには楽なレース展開になった。レースペースを見てみると、フェラーリがいなくなったあとはほぼ横ばいのグラフになっている……これはもうこの段階でクルージングに入っていたということを示していると考えられる。
F1アゼルバイジャンGP決勝レースペース分析:トップ4
Photo by: Motorsport.com / Japan
中団グループの各車のレースペースグラフも併せてご覧いただきたい。こちらを見ると、レース終盤に向けペースが上がっていっていることが分かる。特にメルセデス勢を見るとそれが顕著だ。
F1アゼルバイジャンGP決勝レースペース分析:中団
Photo by: Motorsport.com / Japan
レッドブルはプッシュせずとも、そのポジションを脅かすライバルは存在しない……まさに楽勝という形だった。
ただひとつ気になるのは、フェラーリ勢、特にシャルル・ルクレールが生き残っていたら、果たしてフェルスタッペンは勝てたのかということだ。
ルクレールはチームメイトのカルロス・サインツJr.がストップしたことによって宣言されたバーチャル・セーフティカーの際(9周終了時点)にピットイン。スタート時に履いていたミディアムタイヤをここで諦め、ハードタイヤに交換した。レッドブル勢はタイヤ交換をせず、ステイアウト。当然両者の間隔は一旦広がるわけだが、新しいタイヤを履いたルクレールは徐々にその差を詰めていった。そこから先を考えれば、レッドブル勢がタイヤ交換をした際に先頭に出られるはずで、そのポジションを守り切ってトップチェッカー……という可能性も十分に考えられた。
しかしレースペースを見ると、どうもそう簡単にはルクレールとてレッドブル勢を打ち負かすのは難しかったように感じられる。
ルクレールはハードタイヤに交換した後徐々にペースを上げ、13周目に1分47秒531を記録している。これが、ルクレールのこのレース中のベストタイムである。同じ周のフェルスタッペンは1分48秒5、ペレスは1分48秒8と、ルクレールの方が1秒以上速かった。これだけを見れば、ルクレール圧倒的有利に見える。
ただルクレールはこのペースを維持できず、その翌周からペースが落ち、1分48秒台前半で安定する形になっている。
フェルスタッペンは、結局ルクレールがリタイアした後にピットインし、ハードタイヤを選択したわけだだ、そのペースは1分47秒台後半で推移し、徐々に1分47秒台前半に入っていった。
つまり、ルクレールがリタイアしなかったとしても、タイヤを交換した後のフェルスタッペンの方が1周につき1秒近く速く走ることができたはずであり、ルクレールの真後ろに追いつくのは時間の問題……長い全開区間とDRSを活かせば、抜き返すのは十分に可能だっただろう。
しかも今季のフェラーリは、シーズンを通じてタイヤのデグラデーションに苦しむ傾向にあり、10周目以降の41周を1セットのタイヤで走り切るのは難しいはずだ。
これらのことを考えれば、早期のピットストップを行なったのは”戦略成功”と考えられがちだが、そのまま簡単に勝利できたとは思えない。逆を返せば、それだけ今のレッドブルは盤石の体制にあるようにも思える。
それに加え、フェラーリ勢はこのところ信頼性のトラブルに見舞われることが多い(シーズン序盤はレッドブル勢が信頼性の問題に苦しめられていたのに……)。
フェラーリが信頼性、そしてレースペースの面を改善することができなければ、このままレッドブル圧勝のシーズンになってしまうだろう。
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