F1 Monaco GP

【伝説のモナコGP】チェッカーに辿り着いたの僅か3台のみ……超サバイバルをパニスが制す:1996年

伝統のモナコGPが今年も開催される。これまで行なわれてきたモナコGPの中には、伝説となったレースもいくつか存在する。そのうちのひとつが、1996年。リジェ・無限ホンダを駆るオリビエ・パニスが優勝した、あのレースだ。

編集: 2022/05/26 10:19

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Race winner Olivier Panis, Ligier JS43

Olivier Panis, Ligier JS43

Olivier Panis, Ligier JS43

Olivier Panis, Ligier JS43

David Coulthard, McLaren MP4/11B, wearing Michael Schumacher's spare helmet

5

 1996年のモナコGPも、ある意味伝説と言えるレースだった。同年はウイリアムズとフェラーリが強さを発揮し、それにベネトン勢が一矢報いるという時代。リジェはそれなりの戦闘力を手にしながらも、優勝候補とは程遠い存在だった。

 しかし同一周回での完走台数僅か3台……そんな超サバイバルレースを、リジェ・無限ホンダのオリビエ・パニスが制したのだった。

 午前中に降った雨により、スタート時の路面は完全にウエット。しかし雨粒は落ちておらず、徐々にコンディションは改善していくものと見られていた。この時点でパニスは14番手スタート。誰もパニスが優勝するとは思っていなかった。

 レースは序盤から波乱の展開。濡れた路面に足を取られてクラッシュしたり、トラブルに見舞われたりして、次々とマシンが脱落していった。

 そんな中、路面は徐々に乾いていき、レースも1/3が消化するとほぼドライコンディションに。各車ドライタイヤに交換することとなった。

 パニスはピットストップのタイミングでポジションを上げ、コース上でもオーバーテイクし、表彰台圏内に浮上する。そして首位をいくデイモン・ヒル(ウイリアムズ)、2番手を走っていたジャン・アレジ(ベネトン)も揃ってマシントラブルに見舞われてリタイア。これでパニスが労せずして首位に立つ。そして、コースには再び雨が落ちてきた。

 パニスはその後も堅実な走行を続けた。後方からはマクラーレンのデビッド・クルサードが迫ったが、パニスはこの追撃を阻止。2時間ルールが適用され75周に短縮されたレースで、トップチェッカーを受けた。

 これはF1デビュー3年目のパニスにとってF1初勝利。無限ホンダにとっても1勝目ということになった。

 なおこの年、パニスが入賞したのは、このモナコも入れて3回のみ。そういう意味では、大番狂わせの結果だったと言えよう。

 なお前述の通り、このレースはアレジもリタイアしている。ただ、もし彼のマシンにサスペンショントラブルが起きなければ、前年のカナダGPに次ぐ2勝目を挙げていたかもしれない。アレジは雨に滅法強かった。

Jean Alesi, Benetton B196

Jean Alesi, Benetton B196

Photo by: Rainer W. Schlegelmilch / Motorsport Images

 アレジはウイリアムズのデイモン・ヒルがリタイアしたことでレースリーダーとなった。この時点で残るマシンは10台前後となっており、波乱に乗じてパニスが順位を大きく上げていたが、アレジは後続に30秒近いリードを築いていた。

 キャリア2勝目が見えたアレジは残り21周でピットインし、燃料を補給してスリックタイヤを装着した。そしてパニスの10秒前でコースに復帰。伝統のモナコGP制覇に向け、盤石と思われた。しかしその勝利は、するりとその手から抜け落ちてしまう。

 残り15周でアレジは3度目のピットイン。クルーは準備しておらず、緊急ピットインであったことは明らかだった。メカニック達がマシンを見渡して何が問題なのか問題なのか見ている中で、アレジは右手を上げ、親指を右リヤに向けた。明らかにフラストレーションをあらわにしていた。クルーは新しいタイヤをリヤに装着し、アレジを7番手で戦列に戻した。

 交換したタイヤをチームが調べたところ、パンクなどは見当たらなかった。つまりアレジが抱えているトラブルはタイヤによるものではなかったのだ。アレジは次の周に再びピットに戻ると、ステアリングを外してマシンを降りた。

 さらなる調査の結果、アレジのリタイアはサスペンションの故障が原因であることが判明した。テレビカメラが捉えたガレージの奥でのアレジの虚ろな表情は、このリタイアがいかに堪え難い屈辱であるかを如実に表していた。

「優勝に限りなく近付いた後(のリタイア)だから、本当にガッカリした。特にここはモナコだからだ」

 アレジは後にそう語っている。

「マシンは素晴らしかったし、リヤに違和感を感じるまで何も問題はなかった。僕はピットに入ってマシンをチェックし、タイヤを交換して出ていった」

「その後、サスペンションのトラブルで再びピットに戻らなければいけなかった。この週末はチームにとって非常に期待の持てる週末だった。僕たちは前を向いて次のレースで優勝に近付けることを目指さないといけない」

 しかしアレジに”次の優勝”の機会が訪れることはなかった。続くスペインGPをはじめ、7度の2位はあったが、優勝はゼロだったのだ。

 このレースをパニスではなくアレジが優勝していれば、それほど衝撃的で思い出深いものとはならず、F1ファンが今日まで伝説として語り継ぐようなレースとはならなかったかもしれない。そうは言ってもアレジの波乱万丈なF1キャリアを考えると、彼がもしモナコで優勝していれば、今でも敬意と愛情を込めて思い出されるレースになったのではないか……そうも思わされる。 

 そういう意味ではこの年のモナコGPは、アレジらしいレースでもあったのかもしれない。

 なお結局このレースでチェッカーを受けたのは、表彰台に乗った3台……パニス、クルサード、そして3位ジョニー・ハーバート(ザウバー)のみである。パニスは14番グリッド、ハーバートは13番グリッドからのスタートであり、まさに大穴の決着だった。また4位以下はチェッカーを受けられておらず、ピットもしくはコース脇でレース終了を迎えた。ただ7位までが完走扱いとなっている。

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