F1分析|角田裕毅、2回目のピットストップを先延ばししたのは、それほど問題ではない。それ以上に疑問なのはアルファタウリのフリー走行でのタイヤの使い方だ!
鈴鹿サーキットで行なわれたF1日本GPでは、アルファタウリの角田裕毅は12位でフィニッシュし、入賞を逃した。戦闘力が増しつつある同チームは、週末へ向けた考え方を変える必要がありそうだ。
F1日本GPで、アルファタウリの角田裕毅は12位でフィニッシュした。角田はミディアムタイヤを履いていた第2スティントを長く取ったことで、チームメイトのリアム・ローソンに先行されてしまい、レース終盤にはその真後ろに追いついたものの、結局抜くことができなかった。
この戦略については「失敗だ」という声が多いが、レースペースを分析すると、あながち失敗だったとは言えないかもしれない。しかし決勝レーススタート時に残っていたタイヤのことを考えれば、11位が精一杯。金曜日からのタイヤの使い方については、明らかに失策だと言えるだろう。
角田は日本GPの決勝レースを、9番グリッドからソフトタイヤを履いてスタート。しかし8周目にふたつ後ろを走っていたニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)がピットストップを行なったのに反応して、9周目にピットイン。続く10周目には、ローソンもピットインした。
敢えて言えば、この判断には疑問が残る。角田とローソンのレースペースを見ると、ソフトタイヤにはまだデグラデーションの兆候は見られない。しかもハース勢はデグラデーションに苦しんでいるのは、ここ数戦明らかなことであり、チームもそう公言していた。そのため3ストップになる可能性が高いということは明らかだったはず。実際に3ストップでレースを走り切った。
一方でアルファタウリは2ストップで走り切った。そもそも、アルファタウリ勢はハードタイヤとミディアムタイヤをそれぞれ1セットずつ残した状況で決勝に挑んでいた。この残りタイヤのことを考えれば2ストップ以外有り得ず、3ストップの可能性が高いハースに反応する必要があったのかというところはどうしても疑問だ。
実際、角田とヒュルケンベルグの間にいたランス・ストロール(アストンマーチン)は反応せず、走行を続けた。このストロールもミディアムとハードが1セットずつしか残っていないドライバーのひとりだった。
第2スティントでは、角田もローソンもミディアムタイヤで走行。ローソンは24周目にピットインしてハードタイヤに履き替えたのに対し、角田はこの第2スティントを29周目まで引っ張ってピットに飛び込んだ。
これでローソンにアンダーカットされることになり、結局は12番手となったわけだが、この角田の作戦はあながち失敗とは言い切れない。
2023年F1第17戦日本GP決勝レースペース分析:中団グループ
Photo by: Motorsport.com / Japan
上のグラフで示したレースペースの推移を見ると、ローソンが24周目にピットインした後、角田のペースは上がっている。つまり、まだデグラデーションは酷くはなっていなかったのだ。もしかしたら、もう少し伸ばしてもよかったのかもしれない。
それは、第3スティントのペース推移を見れば分かる。ハードタイヤに履き替えた角田は、ローソンよりも1周あたり0.5秒ほど速いペースで猛追。すぐにローソンの真後ろに迫った。ただここにもうひとつの誤算があった。角田はローソンを抜けなかったのだ。
もし、手の届きそうなところに前のマシンが走っていれば、チームとしてはローソンに角田を先行させるように指示し、角田には入賞を狙うことを厳命することもできたかもしれない。今回のアルピーヌがピエール・ガスリーとエステバン・オコンに対してそう指示したように。
そのアルピーヌ勢がアルファタウリ2台のすぐ前を走っていたマシンだった。しかしその差は20秒ほどであり、ペースは角田とほぼ同等……角田が追いつける可能性はほぼ皆無であり、チームがふたりのドライバーにチームオーダーを出さなかった意味は十分理解できる。
なおこのオコンは、1周目にセーフティカーが出動したことですぐにピットインし、スタート時に履いていたソフトタイヤを捨て、ハードタイヤに履き替えた。そして28周を走り切ったところでピットインし、再びハードタイヤを装着。つまり、ハード→ハードと繋ぐ、実質的な1ストップでレースを走り切ったのだ。この結果ピットストップ1回分のタイムロスを”得した”格好となり、アルファタウリ勢に20秒の差を築いた。これが入賞の決め手となったと言えよう。チームメイトのガスリーも、2セットのハードタイヤを持っていたことで、レースで力強い走りを披露したのだ。
とにもかくにも、アルピーヌがこの作戦を成功させることができたのは、フリー走行から決勝レースのことを考え、ハードタイヤを使わずに残しておいたからであると言えよう。
一方でアルファタウリは、予選結果を重視しすぎたように感じられる。そのため、確かに予選には潤沢にソフトタイヤが残り、存分にアタックすることができた。観客も、それによって角田がQ3に進出するのを楽しんだわけだ。しかしながら鈴鹿はタイヤに厳しいコースであり、ハードとミディアムが主流になりそうなのは明らかなことだった。決勝にハードとミディアムをそれぞれ1セットずつしか残していなかったのは、アルファタウリの2人以外には3人だけ……今回は苦しんでいたアルファロメオの2人と、前述のストロールのみだった。
もしタイヤの残り数が今回の形だったら、ソフトタイヤでスタートせず、ミディアム→ハードと繋ぐ1ストップを目指すべきだったとも思える。
このタイヤ選択については、ライバルであり、アルファタウリ(トロロッソ時代)卒業生であるアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)からも「彼らのタイヤ選択には、本当に驚いたよ。自ら困難な状況を招いたようなものだ」と言われる始末だ。
予選では、たとえポールポジションを獲得したとしても、1ポイントも獲得することはできない。アルファタウリには、決勝レースを見据えたプランの組み立てをすることが、より重要であるように思う。
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