F1 オーストラリアGP

F1分析|見た目は大混乱。しかし実際には手に汗握る接近戦だったオーストラリアGP……それでもフェルスタッペンの余裕は垣間見える

F1オーストラリアGPは、赤旗中断複数回という荒れたレースになったが、そんな見た目の派手さとは裏腹に、レースペースを詳しく見ると、ほんの僅かな差を競う精神戦が繰り広げられていたように思える。

田中 健一

編集: 2023/04/03 11:28

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Lewis Hamilton, Mercedes-AMG, 2nd position, Fernando Alonso, Aston Martin F1 Team, 3rd position, greet each other on the podium

 2023年のF1第3戦オーストラリアGPは、赤旗掲出3回(チェッカー後も入れれば4回)という、近年稀に見る大混乱のレースとなった。しかしレース中、特に各車がハードタイヤに履き替えてからは、非常に細かい部分を競い合う、手に汗握るレースだったと言えよう。

 今回のレースでは、多くのマシンがスタート時にミディアムタイヤを履くことを選択。1ストップ作戦のレースになるのは必至と見られていて、いつハードタイヤに切り替えることになるのかという点が争点となっていた。

 しかし7周目に、ウイリアムズのアレクサンダー・アルボンがターン6でクラッシュしたことで、赤旗が掲出されることになった。この間に各車はタイヤ交換義務を消化し、ハードタイヤに履き替えることになった。

 その後は、我慢のレースであった。ハードタイヤはデグラデーション(性能劣化に伴うペースの下落)がゼロであり、走れば走るほどペースが上がっていく状況。そんな中でライバルに最後まで隙を見せないよう、我慢の走りが続いた。

 そんなこともあって、各車のペース差はほんの僅か。その僅かな差が優劣を決めることになった。

 そんな中でも、やはりレッドブルのマックス・フェルスタッペンは、ある意味群を抜いていた。ポールポジションながら、スタートではメルセデス勢2台に先行されてしまっていたフェルスタッペンは、赤旗中断からの再スタート時には、メルセデスのルイス・ハミルトンに次ぐ2番手。しかし、再スタートから3周目の12周目にはハミルトンを攻略し、首位に立った。ただその直後、メルセデスのジョージ・ラッセルがトラブルによって停まったことで、セーフティカー(SC)が出動。ただこのセーフティカーがピットに戻ってレースが再開されると、一気にハミルトンとの差を開き、独走状態に持ち込んだ。

 フェルスタッペンの強さは、このSC解除後のペースに現れている。下のグラフをご覧いただこう。

F1オーストラリアGP決勝レースペース分析:トップ3

F1オーストラリアGP決勝レースペース分析:トップ3

Photo by: Motorsport.com / Japan

 SC解除直後、フェルスタッペンはいきなり1分22秒台前半のペースを連発。これにより、ハミルトンとの差が一気に5秒近くにまで開いた。一方対するハミルトンは、SCが解除された直後こそ1分22秒台前半で走ったが、その後はペースが1分22秒台後半に下落し、そのペースを6周続けることになってしまった。

 フェルスタッペンは差を開いたと見るや、そこでペースを一旦落ち着かせ、1分22秒フラットのペースを7〜8周にわたって続けた。ハミルトンも徐々にペースを取り戻し、1分22秒台前半から1分21秒台、そして1分20秒台へと、ペースをどんどん上げていくことになったが、フェルスタッペンはそのハミルトンのペースに合わせるかのように周回を重ねていく……つまり差をコントロールしながら、タイヤをマネジメントすることに集中すればいいレースに持ち込むことができた。レース終盤に赤旗からの再スタートという事態も起きたが、それを除けば、比較的楽なレースだったのではないだろうか?

 さて、SC解除直後のハミルトンのペースが上がらなかったのは、メルセデスのトラックサイド・エンジニアリング・ディレクターであるアンドリュー・ショブリンの「ルイスは難しいレースをうまくドライブし、タイヤマネジメントと防御の間の絶妙なバランスを見つけなければいけなかった」というコメントから推測すれば、レースの最後までタイヤをしっかりともたせるために、走り出しで無理しなかった……ということだろう。

 ここでハミルトンは無理しなかったおかげで、タイヤはレースの終盤まで保ち、後方からプレッシャーをかけ続けたフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)を抑えることもできた。とはいえ、開幕戦と第2戦では、アストンマーチンにまったく太刀打ちできなかったメルセデスが、今回互角の走りを見せたということは、彼らにとっては今後に向けた光明ということになるだろう。

 ただ逆に今回のタイヤ選択は、比較的コンサバな組み合わせだったと言えなくもない。今季ここまで、上位勢ではメルセデスとフェラーリがタイヤのマネジメントに苦労していた。中でも特にフェラーリは大いに苦労し、開幕2戦で苦杯を舐めてきたわけだ。しかし今回は、カルロス・サインツJr.のレース中のペース推移も、ハミルトンやアロンソとほぼ同じだった。

 そういう意味では、本来ならばもう1段階柔らかい組み合わせのタイヤを持ち込むべきグランプリだったのかもしれない。そうなっていたら、やはりフェラーリやメルセデスは苦しんでいたのだろうか? また、よりタイヤに厳しいコースだったらどうなるのか? これは今後のレースで見極めたい部分だろう。

F1オーストラリアGP決勝レースペース分析:トップ3以下+フェルスタッペン

F1オーストラリアGP決勝レースペース分析:トップ3以下+フェルスタッペン

Photo by: Motorsport.com / Japan

 そしてもうひとつ、アルピーヌが上位勢に匹敵するペースで走ったという点についても触れておきたい。

 アルピーヌは開幕戦ではピエール・ガスリーが9位入賞を果たしたものの、アルファロメオの後塵を拝する結果だった。ただ第2戦ではトップ4チームに次ぐ戦闘力を見せ、そして今回のオーストラリアGPではフェラーリに匹敵するレースペースを見せた。

 上のグラフは、サインツJr.、ガスリー、ランス・ストロール(アストンマーチン)のペースを示したものだ。ピンク色のガスリーのペースは、赤色で示したサインツJr.のペースと常にほぼ互角。つまりガスリーは終始サインツJr.にプレッシャーをかけていたというわけだ。アルバートパーク・サーキットがオーバーテイクが難しいコースであること、また前述のように今回はタイヤのタレが少なかったということは、サインツJr.にとって追い風になったとも言えそうだ。

 結果的にアルピーヌは、レース終盤の再スタート直後にガスリーとエステバン・オコンがまさかの同士討ちでリタイアしてしまったため、ノーポイントに終わった。しかし、今後に向けては実に有望な結果を示したグランプリだったと言えるだろう。

 

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