F1分析|バーレーンGP圧勝フェルスタッペン、それでもかなりの余裕残しか? 昨年以上の強さの予感
2024年のF1開幕戦バーレーンGPを圧勝したレッドブルのマックス・フェルスタッペン。そのレースペースの推移を見てみると、昨年以上の強さを手にしているように思える。
2024年のF1開幕戦バーレーンGPを完勝したレッドブルのマックス・フェルスタッペン。2位でチームメイトのセルジオ・ペレスに22.457秒をつけるまさに圧勝であり、ドライバーズタイトル4連覇に向けて死角なしといった状況だ。
そんな大差をつけたフェルスタッペンだが、レース中のペースを見ると、まだまだ全力を出し切っていない、余裕残しのレースだった可能性があるというところがいくつか見えてきた。
F1開幕戦バーレーンGPレースペース推移グラフ:トップグループ
Photo by: Motorsport.com / Japan
上のグラフは、バーレーンGP決勝の上位5チームのレースペース推移を、折れ線グラフで示したモノである。この中の紺色の実線が、フェルスタッペンのペースを示した線で、一番左が1周目、右がチェッカーを示している。
今回のレースは、全車がソフトタイヤを履いてレーススタートに臨んだ。その中で、フェルスタッペンのパフォーマンスは頭抜けている(グラフ上赤丸の部分)。
スタート直後、フェルスタッペンは後続と1秒以内の差を築くために1分36秒台前半のペースで飛ばした。この効果はすぐに現れ、2周目を終えた段階では後続に1.5秒差をつけた。
当初は、フェラーリのシャルル・ルクレールを抜いて2番手に上がってきたジョージ・ラッセル(メルセデス)が食らいついてきたため、フェルスタッペンはその手綱を緩めることはなかったが、ラッセルのペースは4周目に1分37秒台後半にダウン。これを見たフェルスタッペンは、翌周から1分37秒ちょうどにペースを落とした。
圧巻はここからだった。
ペースを落としたとはいえ、1分37秒ちょうどというペースは、全車の中で当然最も速いもの。しかもフェルスタッペンは、このペースでコントロールしていたのは間違いない。
フェルスタッペンの5周目からのペースを並べると、以下の通りである。
5周目:1:37.173
6周目:1:37.092
7周目:1:37.038
8周目:1:37.024
9周目:1:37.229
10周目:1:36.960
11周目:1:37.085
12周目:1:37.045
13周目:1:37.030
14周目:1:37.028
15周目:1:37.011
16周目:1:37.168
線を引いたかのように、ピタッとラップタイムが揃っている。ラップタイムがピタッと揃っているということは、タイヤのデグラデーション(性能劣化)の傾向が見られないということを意味する。この傾向はFP2(フリー走行2回目)の時点から見てとれたが、デグラデーションが起きないようにペースをコントロールしつつも、全車中で最も速く走る……圧巻のパフォーマンスだったと言えよう。
フェルスタッペンが余裕残しだった証拠は、最終スティントにも見られる。
最終スティントでフェルスタッペンは、他の多くのマシンがハードタイヤを選択する中で、ソフトタイヤをチョイス。これはチームメイトのペレスも同じ選択となったが、彼らには新品のソフトタイヤが1セットずつ残っていたため、当然と言えば当然かもしれない。
しかしこの最終スティントの1周目でフェルスタッペンは、1分32秒608というファステストラップを記録(グラフ青丸の部分)。その後は2秒ほどペースを落として、淡々と周回を重ねた。
昨年の開幕戦では、ファステストラップを記録した後、2秒ペースを落とすという傾向は見られなかった。それを考えれば、今年の方がより抑えたペースで走っていた可能性も十分にある。
F1バーレーンGP決勝ラップタイム推移
Photo by: Motorsport.com / Japan
あくまで簡単な計算であるが、もしフェルスタッペンが全力で飛ばしていたらどうなっていただろうか? 2秒×18周……つまりあと36秒後続を引き離していた可能性もあるという計算となる。
フェラーリのフレデリック・バスール代表は、昨年の開幕戦と比較すれば、その差を半分程度に縮めることができたと喜んでいる。しかしこの36秒という数字(もちろんペースを上げればデグラデーションも大きくなるはずなので、実際に36秒引き離せたとは思わないが)をプラスすれば、フェラーリは昨年以上にレッドブルに差をつけられているということになってしまう。決勝レースに限って言えばだが。
なおそのフェラーリに関して言えば、デグラデーションの傾向はかなり小さくなっているように見受けられる。この部分では進歩ということができるだろう。
メルセデスは、ハードタイヤを履いた第2スティントと第3スティントでデグラデーションの兆候がはっきりと見て取れ、マクラーレンも比較的似た傾向に見える。
アストンマーティンのフェルナンド・アロンソは、ソフトタイヤを履いた第1スティントこそデグラデーションの予兆が見られるが、ハードタイヤを履いた第2、第3スティントに関しては、ほとんどデグラデーションなく走った。ただ絶対的なペースの面で言えば、他の4チームには差をつけられている感があり、現時点では昨年のような表彰台の常連というところにはいないように見える。
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