F1 バーレーンGP

F1分析|開幕戦バーレーンGP FP2ロングランを検証。レッドブルのロングランベースはやはり驚異的……2番手集団は大混戦か?

バーレーンで開幕した2024年のF1。そのフリー走行2回目(FP2)の走行データから、各車のパフォーマンスを分析してみる。

Max Verstappen, Red Bull Racing RB20

 いよいよ2024年のF1が開幕。早速バーレーン・インターナショナル・サーキットでは、初日2回のフリー走行が行なわれた。その2回目のフリー走行(FP2)から、現状の勢力図を分析してみよう。

 もちろん、現段階では各車の燃料搭載量が不明であるため、正確な勢力図を導き出すのは至難の業だ。しかしFP2のロングラン走行のラップタイム推移を見ていくと、多少なりとも各車のパフォーマンスを読み取ることができる。

 なおこのFP2では、全20台がソフトタイヤを履いてロングランを行なった。そしてその中で最も印象的なロングランを行なったのは、やはりレッドブルのマックス・フェルスタッペンである。

2024年F1開幕戦バーレーンGPフリー走行2回目ロングラン分析

2024年F1開幕戦バーレーンGPフリー走行2回目ロングラン分析

Photo by: Motorsport.com / Japan

 フェルスタッペンはFP2で13周の連続走行を行なった。その1周目のラップタイムが1分37秒007だったのに対し、最後の13周目のラップタイムは1分37秒037……つまりラップタイムがほとんど落ちていないことがよく分かる。この連続走行中の最速タイムは1分36秒499であり、そこから計算すると、1周あたりのペース下落幅は0.018秒だった。

※F1マシンは走行距離を重ねれば重ねるほど、タイヤの性能は劣化し、ペースが落ちていくのが常(デグラデーション)。一方で走行を重ねれば重ねるほど、燃料搭載量が減ってラップタイムが速くなる(フューエルエフェクト)。本稿では便宜的に、デグラデーションとフューエルエフェクトを相殺した値をデグラデーションと表現する。

 この0.018秒/周という数値は、全車の中でも群を抜いており、タイヤを特にうまく使えているということ。予選ではライバルの後塵を拝したとしても、決勝での巻き返しは必至であろう。そういう意味ではタイムシートの1-2をメルセデス勢に明け渡したとはいえ、やはり現時点ではこのフェルスタッペンが優勝候補最有力と言わざるを得ない。

 チームメイトのセルジオ・ペレスも、ロングラン中のベストタイムは全車中最速の1分35秒946。その後若干ペースを落としていったが、それでもロングラン最後の14周目には1分37秒048を記録しており、フェルスタッペンにも劣らないモノだったという評価ができよう。

 やはり今季も、レッドブルは速そうだ。

 このレッドブルに続いて優れたロングランを記録したのが、マクラーレンのランド・ノリスである。絶対的なペースこそレッドブルには及ばなかったが、これは燃料搭載量の差である可能性もある。一方でデグラデーションを見てみると、1周あたり0.044秒。フェルスタッペンには差を付けられているものの、それでもタイヤの扱いには優れたマシンになっているようだ。

 なおチームメイトのオスカー・ピアストリは、ノリスと比べるとデグラデーションが少し大きい印象である。

 このマクラーレンに匹敵しそうなのが、フェラーリ勢である。カルロス・サインツJr.のデグラデーションは0.050秒/周であり、こちらもかなり良好。昨年までのフェラーリは、デグラデーションが大きいという特性が決勝レースを戦う上で足枷となっていたが、これは解消されているかもしれない。

 ただ、チームメイトのシャルル・ルクレールは1周あたりのデグラデーションが0.1秒以上であること、そしてサインツJr.もロングラン最終周の前に遅いラップを入れてタイヤを冷やしているように見え、その結果として前述の良好なデグラデーション値になっていることを考えると、若干疑問があるのも確かだ。ちなみにクールダウンする前のペースだけでデグラデーション値を算出すると、0.129秒/周に跳ね上がってしまう。

 それを考えると、メルセデスの方がロングランは安定している可能性がある。ルイス・ハミルトンとジョージ・ラッセルのふたりは、いずれも1周あたり0.1秒以内のデグラデーション値であり、まずまずというところ。ハミルトンはセッション後「ロングランのペースではレッドブルには及ばない」と語っているものの、マクラーレンやフェラーリと同じようなポジションにいるのは間違いないだろう。

 昨年大躍進を遂げたアストンマーティンは、現時点では上位4チームと比べるとデグラデーションが若干大きいという印象で、表彰台を争う位置にはいないように思われる。

 このアストンマーティンに続くのがRB。ダニエル・リカルドは、走り始めから6周程度は安定したペースで走ったが、その後一気にペースが下落。そのペースが落ちたところで再び安定したペースで走ることになった。

 角田裕毅のロングランはデグラデーションが非常に大きく、0.171秒/周という値。このままでは入賞を争うのは厳しそうである。ただ角田はセッション後のコメントで「予選までに状況を好転させることができる」と語っており、それに期待したいところだ。

 今季から小松礼雄がチーム代表に就任したハース勢は、1発の速さはありそうだが、デグラデーションが大きそう。ただキック・ザウバーやウイリアムズも同等のように見えるため、昨年よりは良いポジションにいるかもしれない。

 アルピーヌはデグラデーション値こそ比較的小さく、特にピエール・ガスリーは安定したペースで走った。しかしベースとなるペースはかなり遅いというのが気になるところ。かなり燃料を搭載していたということであれば問題ないが、他車と同レベルの燃料搭載量ならば心配だ。

 

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