F1 イタリアGP

F1分析|モンツァの新路面でデグラデーションが激化! ハミルトンのロングランに”正解”へのヒントが見えた

F1イタリアGPは、路面の改修に伴い、タイヤのマネジメントが特に重要なレースになりそうだ。

Lewis Hamilton, Mercedes F1 W15

Lewis Hamilton, Mercedes F1 W15

写真:: Steven Tee / Motorsport Images

 F1イタリアGPの舞台であるモンツァ・サーキットは、今年のグランプリ開催に向けて大改修が施され、路面が全面的に再舗装された。これによりタイヤにどんな影響を及ぼすのか、初日を終えた段階でもまだ未知数の部分が多いと、ピレリのモータースポーツ・ディレクターであるマリオ・イゾラは語る。そしてルイス・ハミルトン(メルセデス)のFP2でのロングランに、タイヤの使い方のヒントが見て取れた。

 F1イタリアGPの初日は、メルセデスのルイス・ハミルトンがトップタイムを記録した。このハミルトンのタイムは1分20秒738。昨年のFP2の最速タイム(カルロス・サインツJr./フェラーリが記録した1分21秒355)よりも0.6秒速いタイムであり、昨年のポールポジションタイムにも0.5秒差まで迫っている。

 もちろん、ラップタイムが速くなったのには、マシンの性能が上がったことも関係しているだろう。しかし、それ以上に路面が再舗装された影響の方が大きいのかもしれない。ただその結果、タイヤにかかる負荷も増しているようだ。

 そのため、FP2でのロングランを見る限り、ソフトタイヤには顕著なデグラデーション(性能劣化)の傾向が見て取れ、1ストップが主流と考えられる決勝レースでのタイヤとしては使いにくいはずだ。ただミディアムタイヤでも、デグラデーションの傾向があるマシンも多数あり、そのタイヤの使い方にはコツが必要であるようにも見える。

「金曜日には、興味深いことがたくさんあった」

 イゾラはそう語った。

「今週末を迎えるにあたっての最も大きな未知数な部分は、新しい舗装の状態だった。今日見た限りでは、概ねシミュレーションの結果通りであり、非常に高いレベルの粘着性グリップが得られたと言える」

「このことと、このコースでは空力負荷が低いことが相まって、両方のコンパウンド(ソフトとミディアム)で顕著であった、グレイニング(ささくれ摩耗)が強調された可能性がある」

 モンツァでは、平均速度が高いことからピットストップでのロスタイムが大きい。そのため、決勝レースは1ストップが主流になることが予想される。しかしグレイニングが予想よりも酷い場合に備えて、各車ともハードタイヤを温存しているのではないかと、イゾラは予想する。

「このコースでは、ピットレーンの長さとタイヤ交換にかかる時間を考えると、2ストップ戦略はかなりのリスクを伴う。そのため、最も可能性が高いシナリオは、ミディアムとハードでペースをマネジメントして、ピットストップを1回だけにすることだ」

「グレイニングによるデグラデーションがとても大きかった場合に備えて、2番目のハードタイヤをプランBとして残してある」

「つまりグレイニングが大きな問題になる。F1マシンと他のカテゴリーのマシンが数多くの周回を走り、コースにラバーが載っていく。それによってコースがどう変化していくかを見なければいけない」

「考慮すべきもうひとつの要素は気温だ。初日は非常に暑く、理論的には日曜日の決勝レース中の路面温度は54度にも達すると考えられている。こうなると、タイヤのデグラデーションにさらなる影響を与える可能性がある」

 なお残りタイヤを見ると、ほとんどのマシンがハード2セット、ミディアム1セットを現時点で新品のまま残している。これと異なるのは5台のみ。レッドブルとメルセデスは、いずれもハードとミディアムを2セットずつを残している。またRBの角田裕毅は、FP1でハードタイヤを1セット使った分、他の多くのマシンとは逆にハード1セットとミディアム2セットを残すという選択。これが功を奏するのかどうかに注目が集まる。

 また、ミディアムタイヤでのロングランのペース推移でも、気になる部分がある。

2024年F1第16戦イタリアGPフリー走行2回目ロングラン分析

2024年F1第16戦イタリアGPフリー走行2回目ロングラン分析

写真: Motorsport.com Japan

 上のグラフは、FP2での上位勢のロングランペースの推移。マックス・フェルスタッペン(レッドブル)、ランド・ノリス(マクラーレン)、ジョージ・ラッセル(メルセデス)は、ロングラン開始早々から1分25秒台前半のペースを記録し、その後1分24秒台までペースを上げている。ただその後、フェルスタッペンとノリスは徐々にペースダウン。1分26秒台まで落とした。

 これとはまったく逆のペース推移となったのはハミルトンだ。ハミルトンはロングラン開始直後は1分26秒台だった。この時点では、「今回はマクラーレンやレッドブルには太刀打ちできないか」とさえ思われたが、徐々にペースアップ。8周目に1分24秒5、10周目に1分24秒1を記録している。

 このハミルトンのペースと、イゾラの説明から想像するに、今回のレースではスティントの走り出しのタイヤマネジメントが特に重要になりそうだ。つまりハミルトンのように、グレイニングを発生させずしっかりとタイヤを扱っていけば、長く使うことができるのではないだろうか。

 メルセデスのトラックサイド・エンジニアリングディレクターであるアンドリュー・ショブリンは、次のように語っていた。

「レースでは、タイヤのマネジメントが課題になりそうだ」

「新しい路面はタイヤのデグラデーションがかなり激しく、強くプッシュしてしまうとすぐにタイヤのパフォーマンスが落ち始める。オーバーテイクされるリスクを冒さずに、適切なマネジメントを行なうのが簡単なコースではない。興味深いレースになりそうだ」

 

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