今のレッドブルに、昨年のような強さがない理由……テクニカルディレクターのワシェ「ライバルがもっと早く近付いてくると思っていた」

レッドブルのテクニカルディレクターであるピエール・ワシェに、2024年前半戦のレッドブルRB20について訊いた。

Max Verstappen, Red Bull Racing RB20

Max Verstappen, Red Bull Racing RB20

写真:: Zak Mauger / Motorsport Images

 今季開幕直後は圧倒的な速さを見せ、連戦1-2フィニッシュを飾っていたレッドブル。しかしその勢いは突如削がれ、シーズン前半最後の4戦は、いずれも勝利を手にすることができなかった。しかしレッドブルのテクニカルディレクターを務めるピエール・ワシェは、もっと早くライバルに追い付かれるだろうと考えていたことを明かした。

 2023年は22戦中21勝を挙げ、F1の歴史を振り返っても最強と目されたレッドブル。今シーズンも開幕すると開幕戦バーレーンGPと第2戦サウジアラビアGPで連続1-2フィニッシュ、第3戦オーストラリアGPではマシントラブルでリタイアとなり土がついたが、第4戦日本GPでまたも1-2フィニッシュ、第5戦中国GPではマックス・フェルスタッペンが優勝、セルジオ・ペレスが3位とダブル入賞……昨年同様の強さでシーズンを席巻するかに見えた。

 しかしその後はマクラーレンやフェラーリが台頭し、さらには前半戦の後半4戦中3戦でメルセデスが勝利……夏休みまでの14レースでの勝利数は7勝に留まった。勝率5割だからそれでも十分強いわけだが、それでも昨年、今シーズン開幕直後の強さと比べると、物足りない部分もある。

「期待していたような結果ではなかったと思う。昨年に比べて改善したことは間違いないが、いくつかの部分では、期待していたほどの成果を得ることができなかった」

 レッドブルのテクニカルディレクターであるワシェは、そう語った。

「特に高速コーナーでは、もう少し期待していたんだ。競争力についてではなく、我々の基準に基づき、ツールでの数値からすればもう少し期待できると思っていた」

「いくつかの部分は、(実際の走行とデータの)相関関係に関連していると思う。我々はかなり古い風洞を使っているし、昨年のランキングによる作業量の減少とも関連している可能性があると思う」

 前述の通り、開幕戦バーレーンGPが終わった段階では、メディアセンターでさえ「今年もレッドブルが圧勝か」という空気になった。全勝すら可能かもしれない……そう考えた人もいた。

「残念ながら、我々のポジションはここだね」

 そうワシェは笑いながら語った。

「もちろん冗談だけどね。でも正直に言って、ライバルはもっと早く近づいてくると予想していたと思う」

「(現行レギュレーションが導入された)2022年シーズンが始まった時、我々は最速のマシンを持っていなかった。フェラーリが最速だったんだ。だから、2023年は激戦になると考えていたんだが、そうはならなかった」

「2024年も、多かれ少なかれ、ライバルが近づいてくると予想していたんだ。同じレギュレーションの下では、マシンのパフォーマンスは当然制限されるため、他チームが接近してくると予想したんだ」

「実際、最初の4〜5レースを終えた段階では、他のチームが近づいてきた。チームによる差とか、少し遅れたチームもあったけど、我々は正直に言って、それを最初から予想していたんだ」

George Russell, Mercedes F1 W15, Carlos Sainz, Ferrari SF-24, Fernando Alonso, Aston Martin AMR24, Esteban Ocon, Alpine A524, Max Verstappen, Red Bull Racing RB20, the remainder of the field at the start

George Russell, Mercedes F1 W15, Carlos Sainz, Ferrari SF-24, Fernando Alonso, Aston Martin AMR24, Esteban Ocon, Alpine A524, Max Verstappen, Red Bull Racing RB20, the remainder of the field at the start

写真: Sam Bloxham / Motorsport Images

 ライバルが伸びたのか? それともレッドブルが伸び悩んだのか? そう尋ねると、ワシェは次のように説明した。

「私は両方の要素があると思っている。現在のレギュレーションではかなり制限が厳しく、一歩踏み出すために何を見つけるかは、とても難しくなっている。同じレギュレーションが続けば、ライバルがいつかは近付いてくることはほぼ確実だ」

「我々にとっては限界かもしれないが、それが全体にとっての限界というわけではない」

「この業界では、他の人たちのアイデアも取り入れる。過去2年、ライバルたちは我々のアイデアを取り入れてきた。しかし基本的には、大きな一歩を踏み出すためには、ライバルたちも何かを見つける必要がある。今、それが起こり始めているんだと思う」

 ライバルが追い上げてきた一員は、フロントウイングにあるのではないかと、ワシェは考えている。

「現在のマシンは空力に大きく依存しているので非常に難しい。バランスを調整するのが難しい場合もある」

「そのバランスを取るために、マシンに何らかの機械を取り付ける必要がある。彼らが何を使っているかは分からないが、注意深く見てみる必要があるだろう。フロントウイングは、我々のモノとは少し違う動きをしている。とても興味深いね」

 ハンガリーGPで投入した新型のフロントウイングは、他チームからのインスピレーションも得たものだと、ワシェは認めた。

「もちろん、我々は他の全てのチームのことを見ている。他のチームのアイデアを使うのは、この業界では当然だ。他のチームも非常に賢いから、それを使わなければいけない」

Max Verstappen, Red Bull Racing RB20

Max Verstappen, Red Bull Racing RB20

写真: Erik Junius

 RB20の長所と短所はどこなのか? そういう問いにワシェは「もう、長所なんてあるか分からないよ!」と笑いつつも、次のように続けた。

「マシンの全体的なパフォーマンス……特に中速と低速では、昨年に比べてかなり改善されたと思っている」

「ただライバルと比べると、昨年に比べて高速コーナーのパフォーマンスは少し弱かったようだ。昨年はその点では、我々はとても優れていたんだけどね」

「一方で縁石は弱点だ。それについては、昨年もそうだった。期待したほどの改善はできなかったと思う」

 

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