ニューウェイが去るレッドブル……しかし何も変わらない? 「我々はグループだ。各個人の名前を売るためにここにいるわけじゃない」
エイドリアン・ニューウェイが離れることになったレッドブル。しかしテクニカルディレクターのピエール・ワシェは、それにより何かが大きく変わるわけではないと語る。
Adrian Newey, Chief Technology Officer, Red Bull Racing
写真:: Red Bull Content Pool
長くレッドブルで手腕を振るってきたエイドリアン・ニューウェイが、同チームを離れることが決まった。このことについて、レッドブルのテクニカルディレクターであるピエール・ワシェに尋ねた。
ウイリアムズやマクラーレンなどで数々のチャンピオンマシンを手がけ、2006年にレッドブルに加入すると同チームがトップチーム入りを果たすのに大きく貢献した稀代のレーシングカーデザイナー、エイドリアン・ニューウェイ。しかしレッドブルは5月1日に、ニューウェイがF1のプロジェクトから離れ、2025年3月を持ってチームからも完全に離れることを明らかにした。そのニューウェイを獲得しようと、複数のチームが働きかけを行なっていると伝えられている。
レッドブルのテクニカルディレクターを務めるワシェが、ニューウェイの離脱について語った。ワシェはニューウェイの存在は非常に大きかったものの、今のチームはニューウェイがいなくても、これまで通り機能していくことができると自信を見せた。
「エイドリアンのフィードバックやアドバイスは、我々にとって非常に有益だった」
そうワシェは語る。
「全てのビジネスや人生と同じように、前を向かなければいけない。でも、彼がチームのため、私個人のためにしてくれたことはとても重要だった。彼は非常に経験豊富だし、常に賢かった。そして成功体験を多く持っていた」
「しかし今、我々はここにいる。我々の日々の仕事は、もう誰も肩越しに『ねえ、あれやこれについて考えた?』と尋ねてくることがなくなったことを除けば、根本的には何も変わっていない。根本的に、やっていることは何も変わらないんだ」
今季マシンRB20に、ニューウェイはどれほど関与していたのか? そう尋ねると、ワシェは次のように説明した。
「以前よりは少なかったと思う。でも、RB20にも彼は関わっていた。チームの一員だった。でもチームなので、誰がどれほどのことをしたかということは数えていない。グループとして何かに向かい、共通の目標に向かって動いている」
「それはどの会社でも同じだ。この人が10%の仕事をし、この人が20%の仕事をしたと言うことはない。そういう形で働くわけではないんだ。誰もが良いクルマを作ろうという意思を持ち、自分の仕事と会社内での立場に基づいて、最善を尽くそうとする。それが我々の働き方なんだ。誰かがいなくなっても、仕事は続いていくんだ」
「(ニューウェイがいなくなっても)組織は変わっていない。すでに彼の意見がなくても対処できるように組織されていたからね。彼の関与が薄いことも、過去にはあった」
「過去を振り返るのではなく、現状に対処して前を向くために、完全な技術チームが組織されているんだ」
現在の技術チームで、全ての役割をうまくカバーできているはずだと、ワシェは言う。
「何かに満足できていない場合には、それを変え、それを補おうとする。私の立場から言えば、その役割において完璧というわけではない。完璧な人など誰もいないのだ。重要なのは、自分が完璧だとは決して思わないことだ」
「自分の弱点を補うために、周囲の人たちに助けてもらう。そうあるべきだ。自分の部下全員が、私ができないことを補うためにそこにいる。そしていくつかの点で私よりも優れていることを望んでいる。そのために、我々はともに働いているんだ」
「我々はグループであり、絆がある。誰かが他の人たちより劣っているということではない。誰もが長所を持っており、その全ての長所を持ち寄って共に働くことが最も重要な側面だ」
「誰か一人で全てをこなすようなグループは存在しない。全ての人たちが共に働くことが重要なんだ」
マシン開発という面では、これまではニューウェイにばかりスポットライトが当たってきた。しかしワシェは、他の技術スタッフは自分の名前が記事に出るために仕事をしているわけではなく、あくまで速いマシンを作り上げるため、レースに勝つために仕事をしているんだと断言する。
「我々は、自分の名前が記事に載るためにここにいるわけではない。マシンを速くするためにここにいるんだ」
「チームから給料をもらい、勝つことに意欲的だ。最高の報酬は、シーズン中全レースに勝つことだ。昨年はその目標に1レース届かなかった」
「最高の報酬は、我々が作ったマシンが大成功を収めるということだ。ドライバーやチームの全員と一緒にね。そのために、我々はここにいるんだ」
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