F1分析|レッドブル、実は予選パフォーマンスは昨年後半よりも改善? 問題はレースペースか?

F1の2024年シーズン前半戦の、各チームのパフォーマンス推移を分析してみた。これを見ると、昨年よりも厳しい戦いを強いられるレッドブルは、予選の面だけで言えば昨年よりも改善しているように見える。

Max Verstappen, Red Bull Racing RB20

Max Verstappen, Red Bull Racing RB20

写真:: Glenn Dunbar / Motorsport Images

 2024年のF1も前半14戦が終わり、来週には後半戦がオランダGPからスタートする。

 今シーズンは開幕直後こそレッドブルが昨年に引き続き優勢と思われたが、フェラーリやマクラーレン、そしてメルセデスが徐々に戦闘力を身につけ、気付けば4チームによる大混戦(前半戦の終盤こそ、フェラーリが若干遅れたが)となった。

 では各チームの戦闘力は、どのように移り変わってきたのだろうか? その推移を振り返ってみよう。

 本稿では、各グランプリで各チームの各セクター最速タイム(2台のマシンのうち速い方)を抽出し、最速チームからの遅れを数値化……それを基に記事化した。

2024年F1予選パフォーマンス推移

2024年F1予選パフォーマンス推移

写真: Motorsport.com Japan

 予選パフォーマンスでは、シーズン開幕から第7戦エミリア・ロマーニャGPまではレッドブルが毎戦トップもしくは僅差の2番手というポジションだった。特に第2戦サウジアラビアGPから第6戦マイアミGPまでは他チームを圧倒。後続に平均0.318%の差をつけていた。ラップタイムが1分30秒のサーキットならば、0.286秒の差がつく計算である。

 ただ第8戦モナコGP以降ではレッドブルの勢いに翳りが見え始め、ライバルに先行されるレースが多くなった。モナコでは4番手チーム、カナダでは2番手チームながら最速のメルセデスに0.4%の差をつけられた。また第12戦イギリスGPでは、ふたたびライバルの先行を許すことになった。

 ただレッドブルがライバルに大きな後れをとったのは、この3戦のみ。それ以外は首位もしくは僅差の2番手だった。

 実はこの結果は、昨年後半戦と比べると、レッドブルは改善していると言ってもいい。昨年は22戦中21勝と圧倒的な強さを発揮したレッドブルだが、実は今回と同じ計算方法で算出した予選パフォーマンスに関しては、7戦でライバルの後塵を拝していた。しかもそのうち6レースは、第14戦イタリアGP以降の9戦に集中している……予選の勝率33.3%である。一方今年前半戦の予選の勝率は57.1%。明らかに改善の傾向が見て取れるわけだ。

2024年F1決勝パフォーマンス推移

2024年F1決勝パフォーマンス推移

写真: Motorsport.com Japan

 しかしその一方で、今年のレッドブルはレースのパフォーマンスは大きく落としている感がある。

 レッドブルは2023年シーズン、予選で最速ではなくても、圧倒的なレースペースで挽回というシーンが少なくなかった。実際、22戦中10戦でレッドブルが最速。それ以外のレースでも2番手7回、3番手3回……レース終盤にタイヤ交換を行なうほど順位が上がる傾向にあるこの数字でこれだけ上位を記録し続けたのは、それだけレッドブルが強かったという証拠といえよう。

 しかし今季前半前14戦でレッドブルが決勝最速だったのはわずか3戦のみ(上のグラフ参照)。ここが昨年とは大きく違う部分である。

 つまりデータ上で言えば、今季のレッドブルは予選パフォーマンスは改善したものの、レースペースでは相対的に後退したと言うことができるかもしれない。

 レッドブルでテクニカルディレクターを務めるピエール・ワシェは、「昨年に比べて改善したことは間違いないが、いくつかの部分では、期待していたほどの成果を得ることができなかった」と語っている。特に期待に届かなかったのは「高速コーナー」のパフォーマンスだと言うが、データを見る限りではレースペースで後れをとっているのは事実といえよう。

 ただそれでも、マックス・フェルスタッペンのドライビングに寄与する部分も十二分にあるが、やはりレッドブルはまだ最速のマシンを持っているということだろう。そう考えれば、シーズン後半にレースペースが改善されることとなれば、再び最速の座をほしいままにする可能性もあろう。

 さて決勝のペースでは、実はメルセデスが4回も最速をマークしている。しかもいずれも、彼らが勝利を手にしていないレース(エミリア・ロマーニャ、モナコ、カナダ、ハンガリー)でのもの。これは、ライバルよりも多くの回数タイヤ交換を行なったり、ライバルよりも遅く最後のタイヤ交換を行なったりしたためだった。一方で勝ったオーストリア、イギリス、ベルギーの3戦は、レースペースの面では4番目か5番目だった(イギリスでは予選は最速ではあるが)。

 ここから考えるに、さすがはメルセデス……最速のマシンを持っていなくても、戦略によって勝利をもぎとる。そんな能力は最近までタイトル争いの中心にいたメルセデスだからこそだろう。

 もしマシンの戦闘力が伴えば、ライバルにとっては恐ろしい存在になることをまざまざと見せつけた……メルセデスにとってはそんなシーズン前半だったかもしれない。

 

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