まさに溢れ出ていたモータースポーツへの愛。小倉茂徳さんを偲ぶ
小倉茂徳さん。ありがとうございました。
DAZNのローンチ発表会でサインする小倉さん。「時代を変えろ!」と書く
写真:: Motorsport.com / Japan
小倉茂徳さんが亡くなった。あまりにも突然のことだった。
小倉さんと初めて仕事をさせていただいたのは、もう20年ほど前のことだったと思う。当時私はF1専門誌の編集者だったのだが、何かある度……特にトリビア的な記事を書いてもらおうとなった場合には、よく小倉さんに執筆をお願いした。F1クイズ集的な特別号を出版した際には、数多くの問題を小倉さんに作ってもらった。
そしてmotorsport.comの日本版が始動した後、DAZNでの仕事をご依頼いただくようになると、小倉さんと共に仕事をすることが増えた。セッションの実況・解説をご一緒させていただく機会も当然多かったが、忘れられないのはやっぱり「F1 LAB」である。グランプリの翌週、編集していただいたハイライト映像を見ながら、小倉さんと私で”あーだ、こーだ”と話をするという番組だった。
ディレクターさんからは「尺はあまり気にせず、好きに喋ってください」と言われていたので、我々は本当に好き放題喋った。尺を大幅にオーバーしてしまうこともあったが、そこはディレクターさんがうまく編集してくれた。小倉さんのモータースポーツ愛が溢れ、それが故に私もつい乗ってしまい、話が長くなってしまったのだ。
もうひとつ思い出されるのは、プレシーズンテストでご一緒に実況・解説を担当させていただいた時のことだ。2021年、DAZNで初めてF1プレシーズンテストの配信を行なった。今では毎年恒例となっているが、当時は初めてのことであり、まさに画期的なことだった。
この最初のセッションを、小倉さんと私で担当した。プレシーズンテストは、午前と午後でそれぞれ4時間ずつ。あまりにも長いので、配信開始前には「適当なところで少し休憩しましょう」と言っていたのだが、そのセッションで我々は、気付けばぶっつづけで4時間話してしまった……一切休憩せずにだ。
それもこれも、話題を振れば湯水のように小倉さんから溢れ出てくる知識とエピソードのおかげだった。
それはまさしく、小倉さんのモータースポーツに対する愛のあらわれに他ならなかった。その愛はとどまることを知らなかった。
実はスタジオ入りした際、配信に乗っていないところでも小倉さんの話は止まらなかった。顔を合わせてから、「また来週!」と言って別れるまで、話は尽きなかったのだ。小倉さんは誰かとモータースポーツに関する話をするのがたまらなく楽しかったのだろう。
夏休み企画で、子どもたちにF1のテクノロジーを解説する小倉さん。しかも実際のF1マシンを使って……送風機はご自身所有のモノ
写真: Motorsport.com Japan
またモータースポーツの楽しさを、正確に、そしてできる限り分かりやすく伝えようとしたのも、小倉さんならではだったと思う。特にお子様向けにモータースポーツのテクノロジーを伝えるイベントでは、なんとかして分かりやすく説明するために様々な手法を考えた。”空力”を可視化するために、自前で工業用の送風機を購入されていたのには驚かされた。
でも、そういう話をする時の彼の目は、キラキラしていた。そしてレーシングカーを見る時の彼の目も、キラキラしていた。まだ人の少ないサーキットで、ふたりでマシンのフロア下(確かスーパーGTの車両だったと思う)を地面に這いつくばうようにして見たこともあった。そして「やっぱりそこ見たくなりますよね〜」と言ってふたりで笑った。
小倉さんは、モータースポーツを心から愛していた人だった。愛しているから、好きだからこそ、みんなにその楽しさ、魅力を伝えたい……そういうオーラが出ている人だった。
残された我々は、彼が好きだったモータースポーツを、これからもずっと楽しみ、そしてその楽しさをもっと多くの人に伝えていかなければいけないのだろう。改めてそう思った。
改めて、小倉茂徳さんのご冥福をお祈り申し上げます。どうか安らかに。あっちで、古い友人たちに会えたかな……。
そしてありがとうございました。
小倉茂徳氏
写真: Motorsport.com Japan
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