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F1分析|角田裕毅”5位”の可能性を奪った戦略ミス……なぜストロールのペース推移から、1ストップを想像できなかったのか

F1中国GP決勝での、レーシングブルズの戦略を検証してみた。ストロールのペースを見ていれば、1ストップの可能性も考えられたように思うが、なぜ……。

Yuki Tsunoda, RB F1 Team

Yuki Tsunoda, RB F1 Team

写真:: Red Bull Content Pool

 レーシングブルズは、F1中国GPでまたしても大量ポイントを自ら手放すことになってしまった。これは避けられないことだったのか、検証してみることにしよう。

 今回の中国GPは、事前の予測ではタイヤのデグラデーション(性能劣化)が激しいため、2ストップ作戦が主流になると言われていた。それでもギリギリで、場合によっては3ストップになる可能性も指摘されていた。

 しかし実際には1ストップが正解。多くのマシンが1ストップで決勝レースを走り切った。これに対応しきれなかったのがレーシングブルズだ。

 角田裕毅は1周目にチームメイトのアイザック・ハジャーを抜いて8番手。11周目に1回目のピットストップを行なってミディアムタイヤからハードタイヤに履き替え、メルセデスのアンドレア・キミ・アントネッリをアンダーカットすることに成功。実質的な7番手の座を手にした。このピットストップは、大成功と言えるだろう。

 その後の角田は、同じくアントネッリをアンダーカットしたエステバン・オコン(ハース)を従えて、周回を重ねていた。しかし前述のように今回のグランプリは2ストップになると考えられていたため、いつ2回目のピットインをするのかということに、注目が集まった。

 しかしこの時、実はあるひとりのドライバーに目を向けるべきだった。それが、アストンマーティンのランス・ストロールである。ストロールは、多くのマシンがミディアムタイヤを履いてスタートに臨んだ中、僅か3台しかいなかったハードタイヤスタート組の1台。他車が1回目のピットストップを行なっても、ピットインせずにひたすら走り続け、7番手を走っていた。

 注目すべきは、ストロールの当時のペースの推移にあった。

F1中国GP決勝レースペース分析:中団グループ

F1中国GP決勝レースペース分析:中団グループ

写真: Motorsport.com Japan

 上のグラフは、中国GPの決勝レースにおける、ハードタイヤでスタートしたストロール(濃い緑)とオリバー・ベアマン(ハース/ピンクの点線)、そして実質的な7番手を争っていた角田(水色)、オコン(ピンクの実線)、アントネッリ(薄い緑)のレースペースの推移を示したものである。上が速く、下が遅いという形だ。

 ここで注目していただきたいのが、赤丸で示した緑色の線……ストロールのレースペースである。この時点でストロールは、まだスタート時に履いたハードタイヤのまま周回を続けていたが、ペースがみるみる上がっているのが分かる。ピットストップに入る直前には、既にタイヤ交換を済ませていた角田、オコン、アントネッリと同等のペースで走っているのだ。

 もう少し視野を広げてみると、レース序盤は確かにストロールのペースは周回を重ねるごとに落ちている。しかし20周目を迎えようという頃からこの傾向に変化が見え、ペースが上がり始めているのだ。つまりハードタイヤは、最初はパフォーマンスが低下するものの、ある段階でパフォーマンスが回復し始めるという傾向にあったということだ。

 なおベアマンもハードタイヤでスタートし、26周でタイヤ交換を行なったが、彼もペースが回復しているような傾向が見て取れており(グラフ青丸の部分)、本来ならばもっと1回目のストップを遅らせてもよかったかもしれない。

 これを裏付けるように、角田が2回目のピットストップを行なった後、オコンとアントネッリのペースは、第1スティントのストロール同様に上がっていった(緑色の丸の部分)。

 角田のペースも、ハードタイヤを履いた後は、決して悪いわけではなかった。ほとんどペースの落ち幅が見られなかったのだ。

 上海国際サーキットは、昨年全面再舗装されたが、普段はあまり使われていないコース。F1マシンが走れば走るほど路面にラバーが載っていき、改質されていった。それにより、初日や2日目に各車を悩ませたグレイニング(タイヤの表面がささくれたように削れていく摩耗のこと)の傾向が低減し、その結果デグラデーションも低減されたと考えられる。

 ストロールのペースを見ているだけでも、その傾向が見て取れるため、1ストップは考慮しなければいけない要素であったはずだ。それなのになぜレーシングブルズにはそれができなかったのか……疑問である。

 確かに、オコンが真後ろに迫ってきていた。このオコンにアンダーカットされるのを防ぐために、早めにピットインしたのだという言い訳はできるかもしれない。それならば、ハジャーよりも先に角田をピットに迎え入れるべきであり、ここもチグハグ感は否めない(確かにアジャーは、レッドブルのリアム・ローソンをカバーに行った戦略なのかもしれないが)。

F1中国GP決勝分析:角田vsオコンvsアントネッリ

F1中国GP決勝分析:角田vsオコンvsアントネッリ

写真: Motorsport.com Japan

 もうひとつの問題がある。それは、2回目のピットストップを終えた後の角田のペースだ。

 角田は2回目のピットストップを行なう前は、1分38秒前後のラップタイムで走行していた。しかしピットストップを行なうことで、21秒ほど後退する。つまり、タイヤを交換したことで、この21秒以上の”メリット”を生み出すことができなければ、タイヤ交換をする意味はないということになる。

 ピットストップを行なったのが35周目を終えた時点であったので、37周目からの残り20周でこの21秒以上のメリットを生み出すためには、デグラデーションの傾向がほとんど見られなかったそれまでのペース推移を考えれば、ピットストップ前よりも1周につき1秒以上速くなければいけない……本当のメリットを生むなら、1.5秒から2秒はペースアップしたいところで、コース上でライバルをオーバーテイクしなければならないのだから、さらなるペースアップが求められる。

 しかしピットストップ後の角田のペースは、1分36秒499が最速であった。つまり、1周につき最大で1.5秒しか速くなかった。確かに障害物やライバルマシンがいなければ、ピットストップを行なったことで最大9秒ほど速くチェッカーを受けられる計算にはなる。しかし、ライバルを抜かなければいけないことを考えると、もっともっと良いペースが欲しかった。

 しかもこの間、前述の通りオコンとアントネッリのペースは上がり、角田のペースと変わらないところまで伸びていた。これでは、角田が2回目のピットストップを行なったメリットはゼロどころかマイナス。ただ単にポジションを失っただけになってしまったわけだ。その後フロントウイングが壊れて万事休す……である。

 開幕戦で雨に翻弄された戦略ミスは、ある程度は理解できる。以前にも記したが、雨がどれだけ強く、どれだけ長く降るかは誰にもわからなかったため、真っ先にピットに飛び込んだとしても、ステイアウトしたとしてもいずれもギャンブル的な要素があった。しかし今回の件はそれとは違う。タイヤの傾向を読み取れなかった、チームとしての敗北と言い切ってしまってもいいだろう……もちろん、タイヤに何らかのトラブルを抱えており、ピットストップ”しなければならなかった”というならば話は別だが。

 レース後、フェラーリの2台が失格になった。もし角田が1ストップで走り切り、7番手を守り切ることができていたならば、5位を手にしたということになる。

 前回の開幕戦で6位8ポイント、今回の第2戦で5位10ポイント……合わせて18ポイントを、チームの判断ミスで失ってしまったということになる。この18ポイントを手にしていれば、角田は現時点でドライバーズランキング5番手に位置していたはず。また、ハジャーも1ストップで走り切っていれば8位フィニッシュだった可能性があり、これは4ポイント……つまりチームとしても、2戦で22ポイントを手放してしまったことになるのかもしれない。

 あまりにも痛すぎる、今回の失敗である。

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