F1 オランダGP
F1分析|代役参戦の角田裕毅、惜しくも入賞を逃す。しかし……ちょっと気になるレーシングブルズのペース。アストンマーティン、アロンソとの比較で見えてくるモノ
F1オランダGPのレースペースを比較して見ると、レーシングブルズのペースはそれほど秀逸ではなかったように見える。そんな中での角田の走りは、賞賛に値する。
田中 健一
編集: 2026/08/24 10:00
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Yuki Tsunoda, Racing Bulls
写真:: Eric Le Galliot
角田裕毅はF1オランダGPにレーシングブルズから急遽参戦し、11位と入賞にはあと一歩及ばなかった。そのレースペースはどんなものだったのか、分析してみたいと思う。
レッドブルのアイザック・ハジャーが夏季休暇中のトレーニングで手首を負傷し、オランダGPを欠場することになった。その結果、今季はレーシングブルズのマシンでレースを戦ってきたリアム・ローソンが代役を務めることになり、ローソンが抜けたことで空いたレーシングブルズのマシンを、急遽角田がドライブすることになった。
角田にとっては昨年のアブダビGP以来8ヵ月ぶりのF1参戦。しかしこの8ヵ月は普通の8ヵ月ではない。
F1は2025年から2026年シーズンにかけて、レギュレーションが大きく変更された。これにより、マシンも全く別物になった。パワーユニットのエンジンと電動モーターの出力比は昨年までの8:2から5:5に変更されたため、いかにエネルギー回生をするか、そしてバッテリーに蓄えられた電気エネルギーをいかに効率的に使うかという点で、エネルギーマネジメントの重要性がより高まった。空力面でも、グラウンドエフェクトカーではなくなったことで、ダウンフォースの発生の仕組み自体が変化。タイヤのサイズも小さくなっている。コーナリング中とストレート走行中の空力負荷が変わる”アクティブエアロ”が採用され、オーバーテイクを支援するためのDRSも、”ブーストモード”と”オーバーテイクモード”に姿を変えた。
つまりいずれの年の車両も同じように”F1マシン”と呼ばれるが、内実は”まるで別物”なのである。それを角田は、僅か1日だけシミュレータに乗っただけで、サーキットで乗りこなし、他のドライバーたちとバトルを繰り広げなければいけなかった……書いているだけでも「なんて無理難題だ」と気が遠くなってしまう。
今シーズンはじめの頃、多くのドライバーはそのドライビングスタイルのあまりにも大きな違いに不満を口々に訴えた。エネルギーマネジメントの戦略の差によってスピード差が生まれ、危険な事故も起きた。
しかし角田は、そのマシンを初日から乗りこなしてみせた。周囲はテストとその後の11戦でこのマシンを存分に駆ってきているし、シミュレータだって十分に乗っているだろう。そんな現行マシンでの経験豊富なドライバーたちを相手にだ。
ただ、決勝レースのペース推移を見ると、特に8位となったニコ・ヒュルケンベルグ(アウディ)と10位のピエール・ガスリー(アルピーヌ)には、若干の遅れをとっていたように見える。
F1第12戦オランダGP決勝レースペース推移(中団グループ)
写真: Motorsport.com Japan
こちらのグラフは、入賞を争う位置を走っていた中団グループ各車のレースペース推移を折れ線で示したものである。
今回のレースに限って言えば、グラフを見ていただければ一目瞭然であるものの、ヒュルケンベルグ(赤線)のパフォーマンスは抜きん出ていた。
最初のスティントではガスリーと角田の間に挟まれていたが、平均的なペースはこのふたりよりも速かった(グラフ赤丸の部分)。実質的1回目のピットストップを終えると、ガスリー共々アービッド・リンドブラッド(レーシングブルズ)に抑え込まれた。しかし一瞬の隙を突いて前が開けると、一気にペースアップ(グラフ青丸の部分)。後続を置き去りにし、ここで8位争いは決着したと言えるだろう。
それだけ今回のヒュルケンベルグは、中団グループの中で一歩抜け出た存在だった。
これに続いたガスリーも、ほんの少しずつではあるが、角田よりも速かった。最初のスティント(グラフ赤丸の部分)でも、リンドブラッドを攻略した後(グラフ緑丸の部分)も、そして最後のスティント(グラフオレンジ色の丸)でも同様であった。
とはいえ、角田がヒュルケンベルグやガスリーに劣ったのは、何も角田のドライビングのせいというだけではなかったように思える。マシンが本来持つレースペース自体が、今回はそれほど優れたモノではなかった、そんなように読み取れるデータがあるのだ。
そこで参考となるのが、アストンマーティン・ホンダのフェルナンド・アロンソである。
アロンソは予選がうまくいかずに18番グリッドからスタート。そして実質的に1ストップ作戦で決勝レースを走り切り、9位入賞を果たした。
これはアロンソにとって、今季2度目の入賞。前回のモナコは幸運すぎる10位であったが、今回はまさに戦い抜き、勝ち抜いてもぎ取った2ポイントであった。アストンマーティン・ホンダは、確実に進歩している。
そのアロンソは、ソフトタイヤでレースの半分以上を走り、後半にハードタイヤを履くという実質的1ストップであった。そしてそのいずれのスティントでも、ほぼデグラデーション(タイヤの性能劣化によるラップタイムの低下)のない、安定したペースを刻んだ。ペースそのものも秀逸で、”1ストップを選択したから9位になれた”というだけではなく、しっかりと強さを兼ね備えている。
実はもうひとり、実質的な1ストップでレースを走り切ったドライバーがいる。それがリンドブラッドだ。
リンドブラッドは1周目の最終コーナーでマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がクラッシュした時、減速が十分ではなかったとしてドライブスルーという重い罰則が科され、後方に沈んだ。そのため、1ストップを選択したわけだ。
その道中にはピットインを遅らせ、ヒュルケンベルグとガスリーを抑え込み、角田にこの2台を狙わせる手助けをするという徹底したチームプレイも披露した。
ただそのペースは、アロンソには敵わないものであった。特に後半スティント、アロンソもリンドブラッドも、同じ新品のハードタイヤを履いていた。リンドブラッドの方がタイヤ交換したのが2周ほど遅かったため、本来ならばリンドブラッドの方がペースが良くて当然である。
しかし先のグラフを見ていただければお分かりいただけるだろうが、緑の折れ線で示したアロンソのペースの方が、水色の点線で示したリンドブラッドよりも上にある。つまり今回のコンディション、しかもレースペースという面で言えば、アストンマーティン・ホンダ+アロンソの組み合わせの方が、レーシングブルズよりも速かった可能性がある。
そんな中でも堅実に走り、入賞間近というところで走った角田は、賞賛に値するだろう。
しかし角田は、43周目の最終コーナーでオーバーランしてしまい、グラベルの上を走った。即座に順位を落とすことはなかったが、その時点でガスリーにつけていた約8秒の差が一気に消えてしまい、後にオーバーテイクを許してしまうきっけかとなった。タラレバが禁物なのは重々承知ではあるが、そのオーバーランがなければ、レースペース的に若干苦しい中でも十分入賞可能だっただけに、残念でならない。
とはいえ皆さんお感じになっただろう。日本人ドライバーがひとり走るというだけで、いつも以上にF1に熱中できたということを。
角田にまた次のチャンスが訪れること、そして角田を追いかけるように次々と若い日本人ドライバーがF1に挑み、そしていつか表彰台の頂点に日の丸が掲げられる日が来ることを願っている。
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