F1

2026年のF1”持続可能燃料”は、技術開発の大戦争に! 分子レベルまでクローズアップして開発……マシンの軽量化にも繋がる?

2026年からF1は、持続可能燃料を使うことが義務付けられる。ただガソリンを置き換えればいいというモノではない。そのエネルギー密度が、パフォーマンスを分けるきっかけとなるかもしれない。

Gianluca D'Alessandro 田中 健一

編集: 2026/02/21 3:38

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Maintenance sign denoting that a car is fuelled in the Haas F1 garage

 2026年から始まるF1の新しいレギュレーションは、エンジンと電動パワーの出力比が均等になるということが最大の焦点となっている。しかし燃料が持続可能燃料となり、その流量の計測方法にも変化が加えられることも、パフォーマンスを分ける重要な要素となるだろう。

 2026年もこれまで通り、エンジンに送られる燃料流量の上限が制限される。しかしこの値は物理的な”量”ではなく、送られるエネルギー量の上限が設定されるということになる。

 計測はこれまでと同じように、1時間あたりの重量で行なわれる。しかし各チームが使う持続可能燃料が持つエネルギー量が事前に計測され、1時間あたりのエネルギー流量として算出される仕組みになっている。規定されたエネルギー流量の上限値は3000MJ/hである。

 このことは実は、燃料開発においてこれまで以上に多くのリソースが必要となる理由になっている。

■燃料で使える素材

 持続可能燃料は、従来のガソリンの基となっていた化石燃料を一切使用できない。その結果、化学組成は従来よりもはるかに複雑であり、どの分子を使うことができるのかを理解するためには、広範な研究が必要である。

 もはや既存の製品を最適化させるわけではなく、分子レベルから全く新しい燃料を作り出すことが目指されている。この状況では、燃料そのものの開発に加え、添加剤の研究・開発が、イノベーションの主な舞台となりつつある。

 そしてまさにこの点において、FIAは極めて重要な区分を設けている。持続不可能な素材由来の添加剤の使用は認められているものの、その条件は非常に厳しく、不適切に燃焼に変化を加えて”隠れた性能向上”をもたらさない範囲のカテゴリーに限られている。これは小さな問題ではない。なぜなら、最も優れた特性を持つ添加剤の多くは、一般的に持続不可能なモノだからだ。

 一方で持続可能な添加剤については、事情が異なる。認証を受け、サプライチェーン全体にわたって追跡管理が行なわれている場合ならば、持続不可能な添加剤に課されるような制限は適用されない。サプライヤーは安定性、耐ノック性、燃焼品質を向上させるための、先進的で持続可能な分子の開発に注力している。

 燃料メーカーは、最適な組み合わせを見つけるために、100万回にもおよぶシミュレーションを実施しているとされる。

 これは実に複雑な作業だ。全ての素材が持続可能性基準を満たし、入手可能性が保証され、材料との適合性も確保されなければいけないからだ。しかしその一方で、これは大きな可能性を秘めた分野であり、燃料メーカーは特定の分野における高度な専門知識を持つ外部の企業との提携も模索している。この結果、製造・開発のコストは鰻登りに高騰していて、1リットルあたり250ユーロ(約4万6000円!)にも達すると見込まれている。

 価値を持つのは燃料そのものではない。その背後にある研究開発、そして原料の調達からライフサイクル全体における炭素排出量に至るまで、FIAによって監視・認証される、完全に”グリーン”なサプライチェーンを構築することにある。このことは、メーカーやブランドのイメージアップにも繋がるだろうし、将来に向けて市販化される際の技術開発にも繋がるだろう。

 ただ燃料の品質向上という側面もある。例えば、同じエネルギー量を、できるだけ少ない質量(重さ)で得られるようにするということも目指せる。前述のように2026年シーズンからは、燃料流量制限が質量ではなく、エネルギー量で計測される。

 もし燃料の質量あたりのエネルギー量を増やすことができれば、レースを戦う上でマシンに搭載する燃料の量を削減することができるということを意味する。

 新シーズンに向けては、多くのチームが車両の重量を最低重量付近まで軽量化することに苦労していると言われる。そんな時代においては、特に見逃せない利点と言うことができるだろう。

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