F1
ストレート途中でパワー半減? 電動化進む次世代F1パワーユニットが抱える“不安要素”。チームは分析の強化をFIAに要求
F1の新時代が始まる2026年が近づく中、既に確定している次世代パワーユニットレギュレーションについて、新たな懸念が指摘されている。

Jonathan Noble
編集: 2023/07/06 17:36
Copy link
Viberでシェア
Google検索でmotorsport.comをお気に入り登録

2026年シーズンに向けた新レギュレーションによる生みの苦しみで、本来の意図とは異なる“フランケンシュタイン”のようなマシンを生み出しかねないと一部チームから懸念の声が上がっている。F1とFIAは、新レギュレーションがもたらす影響の分析を強化するよう求められている。
F1がパワーユニット(PU)とシャシーの両テクニカルレギュレーションの刷新に向けて準備を進める中、次世代F1マシンが期待通りに機能しなかった場合、レースに悪影響を及ぼす可能性があるとの懸念が浮上している。
motorsport.comの調べでは、F1のステファノ・ドメニカリCEOも出席したカナダGPの際に行なわれたF1チーム代表者の定例ミーティングでは、既に確定している2026年のPUレギュレーションに関する不安要素が議題に挙げられたという。
レッドブルのチーム代表であるクリスチャン・ホーナーは以前にもF1委員会の会合でこの問題に言及したことがあり、内燃エンジンと電気モーターの出力割合を50対50にするというPUレギュレーションについてF1が再考する必要があるのではと発言したという。そしてトラブルのリスクを回避するために、電動領域への依存度を低く抑えることを検討すべきだと指摘したようだ。
ストレートでの懸念
2026年以降のPUでは、持続可能燃料を100%使うようになる他、高価かつ市販車への転用が難しいとされた熱エネルギー回生システム(MGU-H)が廃止される。
一方で電動化が今よりも推し進められることで、運動エネルギー回生システム(MGU-K)で扱う最大パワーは、回生・出力共に120kW(163PS)から350kW(475PS)に引き上げられ、エナジーストア(バッテリー)に充電できる電力量も、1周あたり2MJから9MJへと増加することとなっている。
2026年以降に参戦を予定しているPUメーカーが次世代PUの開発を進める中、チームによる初期分析によると、サーキットによってはMGU-Kで運動エネルギーを十分に回生できないため、マシンがデプロイメント切れ(走行中にバッテリーに充電された電気エネルギーが空になってしまう状態)を起こす可能性があるという。
このような事態が発生した場合、ドライバーはコーナー進入でより多くのエネルギーを回生しようと奇妙な行動を取ったり、ストレートで突如スピードが低下したりするおそれがある。
ある情報筋によると、仮にこのPUレギュレーション下で1周に十分な電力を確保できなければ、ドライバーは350kWのブーストを失うため、ストレートでスピードダウンを余儀なくされることすらあり得るという。
Sergio Perez, Red Bull Racing
Photo by: Red Bull Content Pool
あるチーム代表は言う。
「これには詳細な分析が必要だ。もし間違っていたら、ショーとしては良くない。バッテリー残量を気遣うために節約ドライブを強いられたり、ストレートでギヤを落としたりする可能性がある」
「レギュレーション本来の意図とは異なるフランケンシュタインのようなマシンを作り上げてしまわないようにする必要がある」
シャシー側の新テクニカルレギュレーションは未確定な部分もあり、これが次世代PUでの電動化促進に伴う懸念に拍車をかけている。
仮に空気抵抗が適切なレベルにまで下がらなければ、デプロイメント切れが発生するリスクは高まるだろう。
「我々はただ、この変更がもたらす影響についてより良く理解したいだけだ。ドライバーがストレート途中で突然減速するような事態は避けたいからね」
別のチーム代表はそう語る。
「レギュレーションが確定するまで待っていたら手遅れになりかねないから、仮に何か問題があるのなら、今すぐそれを解決する必要がある」
情報によると、多くのチームがFIAに対し、レギュレーション変更の影響に関する分析を強化し、2026年シーズンの展開をより明確に把握することを望んでいるという。
各チームが特に確認したいと考えているのが、次世代PUが各サーキットでどのような挙動を示すかについてだ。
これは、現行マシンと同等のパフォーマンスレベルを目指すという次世代マシンの全体的なラップタイム推移だけでなく、1周を通してどこでどのように回生できるかということも関係している。
シミュレーションでは、次世代PUがエネルギー回生に適したサーキットでは問題なく機能することが示されているが、そのパフォーマンスレベルが全てのサーキットで発揮されるという保証はない。
なお2026年からのホンダのF1プロジェクトを指揮する角田哲史ラージプロジェクトリーダー(LPL)も、この点は大きな問題だと認識していると明かす。そしてその対策として、ドライバーのスロットル操作に関係なく、ICE(エンジン)を常に全開に回し、推進に必要ないパワーを回生して電気エネルギーを充電する必要があると語った。
「エンジン出力が減り、どこから(その分の電気)エネルギーを取って来るのかというと、減速エネルギーになります。ただ(使う電気エネルギー量が増えたため)基本的にはそれだけでは足りません」
角田LPLはそう語った。
「いかに発電していくのかということになりますが、フルブレーキ以外はほぼエンジン全開で走らないといけません。フルブレーキをして、コーナーを曲がり始めたパーシャル(速度が一定の状態)の部分でもエンジンはほぼ全開です」
「ブレーキでトルクをコントロールして、コーナーを回っている最中もMGU-Kで発電してバッテリーに充電しないといけません。そのためエンジンの全開率はすごく上がります」
FIA、次世代マシンでも“スペクタクルなレース”の提供を約束
FIAがシャシーに関する新テクニカルレギュレーション作成を続ける中、上記のようなPUに関する懸念が浮上した。次世代PUで電動化を推し進めることで、シャシー側ではストレートでの空気抵抗を劇的に減らす必要があり、2026年マシンでもDRSのようなアクティブエアロの重要性が高まっている。
FIAは2026年のレギュレーション変更に全力を注いでおり、F1が素晴らしいレースを提供し続けられると確信している。
Max Verstappen, Red Bull Racing RB19 at the start
Photo by: Red Bull Content Pool
FIAの広報担当者は、motorsport.comに対して次のように語っている。
「2026年以降のPUレギュレーションは、エキサイティングなスポーツのスペクタクルを提供しながら、より環境的に持続可能な未来を促進する新技術の開発において世界的なリーダーであり続けるというFIAとF1のメイン目標に沿って明確に定義され、承認された」
「我々は、マシンが現在と同等のスピードで走りながらもより効率的になるパッケージの完成に取り組んでいる」
「そして当然ながら、F1は実力主義の世界であり、チームやPUメーカーは、設計から最終的に重要なパフォーマンスのポテンシャルを引き出すため、独自の技術革新に取り組むこととなる」
関連ニュース:
- F1 CEO、次世代マシンの“小型&軽量化”推進へ「重いマシンはF1の本質と異なる」FIA会長も支持
- パワーユニットがガラッと変わる2026年F1新規則は、復帰のホンダにとっても「かなりの痛手」。しかし“ゼロスタート”の第3期、第4期とは違う
- 常勝レッドブルのホーナー代表、2026年からの新たな挑戦“PU自社製造”を語る「皆は我々が顔面から転げ落ちると思っている」
- アストンマーチン、ホンダとワークス契約……2026年からのF1は、”ワークスPU”がないと勝てないのか?
- レッドブルとフォードの”業務分担”はどうなる? ホーナー代表「エンジンを我々、電動部分はフォードという単純な関係ではない」
あなたの意見が聞きたい!
Motorsport.comで何を見たいですか?
5分間のアンケートにご協力ください。
- Motorsport.comチーム
関連ニュース :
記事をシェアもしくは保存
Copy link
Viberでシェア
前の記事 ルクレール「中途半端な路面状況だとクレイジーなほど苦戦してしまう……」晴れ予報の決勝は表彰台行けると自信
次の記事 夢を見ることはできるけど……ハースF1、スプリントでヒュルケンベルグがトップ3圏内快走も「現実的にならなければ」

More from
Jonathan Noble

大きく前進を果たせなければ、F1タイトル5連覇は目指せない……フェルスタッペン、レッドブルに警鐘鳴らす
F1
F1
2024/12/29
大きく前進を果たせなければ、F1タイトル5連覇は目指せない……フェルスタッペン、レッドブルに警鐘鳴らす

ハミルトンのメルセデスF1最終年度での苦戦、その原因は? エンジニアリング統括が明かす
F1
F1
2024/12/27
ハミルトンのメルセデスF1最終年度での苦戦、その原因は? エンジニアリング統括が明かす

僕にできることはある……ボッタス、“最悪のシナリオ”でF1シート喪失も闘志は消えず。酒の勢いで始めたおバカ挑戦で再認識
F1
F1
2024/12/25
僕にできることはある……ボッタス、“最悪のシナリオ”でF1シート喪失も闘志は消えず。酒の勢いで始めたおバカ挑戦で再認識
最新ニュース

FIA、ロシアとベラルーシのドライバー/チームへの制裁を限定解除。今後はそれぞれの国旗を使っての国際レース出走が可能に
機能
General
ライブテキスト
評価
機能
General 13 時間前
FIA、ロシアとベラルーシのドライバー/チームへの制裁を限定解除。今後はそれぞれの国旗を使っての国際レース出走が可能に

F1参戦開始からたった半年で代表交代、さすがに早すぎでは? なぜ“今”なのか……キャデラックCEO、新代表の言葉から真意を探る
機能
F1
ライブテキスト
評価
機能
F1 15 時間前
F1参戦開始からたった半年で代表交代、さすがに早すぎでは? なぜ“今”なのか……キャデラックCEO、新代表の言葉から真意を探る

予選ではレッドブルのセカンド史上最もフェルスタッペンに肉薄するハジャー。しかし本人は「驚いていない」と冷静……レースペース改善を誓う
機能
F1
ライブテキスト
評価
機能
F1 16 時間前
オランダGP
予選ではレッドブルのセカンド史上最もフェルスタッペンに肉薄するハジャー。しかし本人は「驚いていない」と冷静……レースペース改善を誓う

海外F1記者の視点|デカいエンジン音は正義なのか!? V8回帰に向かおうとするF1……その是非を考える
機能
F1
ライブテキスト
評価
機能
F1 21 時間前
ベルギーGP
海外F1記者の視点|デカいエンジン音は正義なのか!? V8回帰に向かおうとするF1……その是非を考える
Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.
フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。
次の 2 つのオプションがあります。
- サブスクライバーになります。
- 広告ブロッカーを無効にします。
購読中 すでに購読していますか? ここからサインインします
広告ブロッカーを無効にしましたか?
ページをリロード
お知らせの管理
登録