今年1月でホンダを退社、山本雅史が語る「ホンダ愛」

2022年の1月でホンダを退社し、今後は自身で立ち上げた会社でレッドブル・パワートレインズをサポートすることになる山本雅史元ホンダF1マネージングディレクター。その山本に、ホンダで担ってきた仕事について訊いた。

Masashi Yamamoto, General Manager, Honda Motorsport

 ホンダのF1マネージングディレクターを務めてきた山本雅史氏が、2022年1月限りでホンダを退社。今後は自身で立ち上げた新会社を通じて、レッドブル・パワートレインズをサポート……ホンダや日本との橋渡し役を務めることになるという。

 山本はインタビューの中で、「ホンダが好き」だと語っていた。彼がホンダに入社したのはなぜか? それを尋ねると、山本は次のように語ってくれた。

「実はホンダに入ったのは、F1とかモータースポーツとは全く関係ない理由からでした」

 そう山本は言う。

「親戚のおじさんがシビックに乗っていたり、中学生の頃に発売されたアコードのセダンを見て、『ホンダって良いクルマ作るな』と思ったんです。F1の仕事をしたいからではなく、ホンダの商品ってユニークだなと思って入社しました」

「入社した直後は、デザイン領域の開発部門に入って、社内のイベントのアイデアコンテストに出すクルマのデザインなどを、先輩とやったりしていました」

「長くデザイン室で開発をやって、途中からマネジメント職に移り、マネージャーを5年、シニアマネージャーを2年やった後、もっと勉強したいと思って栃木研究所に転勤するのに立候補したんですね。栃木では技術広報室で、室長もやりました。そこで本社広報と連携して、カーオブザイヤーを取るための仕事などに色々とトライさせてもらいました。その後で、本社に移ってモータースポーツ部長をやるということになりました」

 山本とモータースポーツの出会い、それはデザインの業務をしていた頃だったという。

「デザインの開発部門にいた頃、レーシングカートを見て、こんなに面白いモノがあるんだと思いました。その翌週にはカートに初めて乗って、そこそこ走れてしまいまして……それこそ1日中乗りまくりました」

 山本は当時をそう回顧する。

「その翌週にレースに出て、それでハマってしまいました。結局その年はレース漬け。翌年には地方選手権に出て、最終戦だけ全日本選手権にも出ました。そこから10年間、全日本選手権に没頭したんです」

「でも、その後にモータースポーツ部長になったのとレーシングカートをやっていたことは、あまり関係ないと思います」

「ホンダに入った時には、クルマ作りをしたかったんです。ホンダには『三つの喜び』というフィロソフィー(買う喜び、売る喜び、創る喜び)があります。喜びというのは世界中どこに行っても同じで、最後は喜んでいただける商品を作りたいと思っていました」

「結局商品を作ることはできませんでしたが、モータースポーツにはそれと共通する部分があると思います。商品を作ると、それを買って、使って、喜んでくれるお客様がいます。モータースポーツでは、我々が勝ったりチャンピオンを獲ると、お客様やファンが喜んでくれる。そういう部分は共通していると思います」

”喜ばせる”という、ホンダ入社以来の目標を、F1である意味達成した山本。仕事をする上で目標を達成するために大切なことについても、次のように語ってくれた。

「みなさん何をやってみたいとか、チャレンジしたいということは考えると思うんですよね。でもそう思うだけじゃ、達成できないと思います。ゴールを思い描く、最後の姿や青写真を描く……そういうことが大切だと思います」

「昨年のF1を例として挙げれば、みんなが感動して飛び上がっているシーンを毎戦毎戦描いて戦っていました。だからこそ、そのために何を積み上げていかなきゃいけないかということを考えさせてくれるんです」

「時には嫌われ役にならなきゃいけないこともあります。メンタル面を楽にしてあげるということも、マネジメントとしてはやらなければいけないです。もちろん、レッドブルやHRD Sakuraの皆の力があってチャンピオンを獲れたわけですが、ファンのみなさんが喜んでくれる、そういうゴールを描いて、そしてそれをエネルギーや糧としてやってきました」

「そしてゴールを描ければ色々なことが見えてきて、そこで見えてきた問題を潰していけばいいんだと思います」

 では山本は、自身が立ち上げた新会社でどんなゴールを思い描いているのか? そう尋ねると、彼は次のように語った。

「レッドブル・ホンダとして、昨年はマックス(フェルスタッペン)がチャンピオンを獲りました。なのでマックスが連覇を果たすべく、レッドブル・パワートレインズのために何か役に立ちたいなと思っています。そのために必要なことがあればきっちりとやり切って、フィードバックしていくのが今年の僕のタスクかなと思います」

 
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