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鈴鹿サーキット社長に訊く、F1日本GP開催延長、決断の”決め手”は?

鈴鹿サーキットを運営するモビリティランド社長に、F1日本GP開催契約の延長を決めた理由を訊いた。

Pierre Gasly, Scuderia Toro Rosso STR12

Pierre Gasly, Scuderia Toro Rosso STR12

Steven Tee / Motorsport Images

 F1イタリアGPの金曜日、鈴鹿サーキットでのF1日本GPの開催契約が3年延長されたことが、公式記者会見場にて発表された。

 当サイトではこれまで度々、鈴鹿サーキットを運営するモビリティランドの山下晋社長にインタビューにお答えいただいてきた。当初は開催延長の可能性について”50%”と語っていた山下社長だったが、お話を聞く度に60%、80%と上がり、FOM側との交渉が進んでいることを感じることができていた。しかし、最終的に契約締結を決めた要因は何だったのか? 改めて、山下社長に訊いた。

FOMからの提案は意味があり、画期的なモノだった

「100点ではありませんでした。しかし、なんとか合格点というか、我々がある程度納得できるところには辿り着くことができました。我々が求めていた全てのことが受け入れられたわけではありませんが、これならば3年間、もう一度チャレンジしようかというところまでの内容にはできました」

 そう山下社長は語る。

「我々が主張した条件の中で、FOMが『それでは困る』と主張して最後まで合致しないところもありました。でも、それでは我々は契約に踏み切れない。そんな中、我々が大きな要素だと考えていたことに対して、この権利を渡すから受け入れてくれと、FOM側から答えがありました」

「FOMからの提案は意味があるし、画期的なモノでした。ですので合意することにしました。その詳細は契約事項なのでお話できませんが……もう少し言うと、彼らの提案は、今年の日本GPにも適応されます。4年間ということを見れば、価値があると判断しました」

 詳細は明かされなかったものの、FOM側の譲歩により、将来に向けた見通しが立ったという。ただこの見通しとは採算ではなく、集客だと山下社長は言う。

「まず大切なのは集客です。集客力があれば採算も付いてくるだろうという意味ではなく、集客ができないイベントなら、例え儲かったとしてもやる意味はないと思っているからです。お客様に評価されるイベントをやるのが我々の使命です」

「採算は二番目ですが、重要なことには変わりありません。でもF1の魅力が高まり、そして我々が頑張れば、その譲歩された権利はお金に変えることができます。F1の魅力が高まらなければ、それはお金には変わりません。ただ、そうなる可能性は確保できたと思います」

「例えば来年レッドブル・ホンダが誕生してそのチームが活躍するとか、有力な日本人ドライバーがデビューするとか……そういうことが起きれば、集客も良い数字になるかもしれません。でも、それは我々にはどうすることもできないことです。でも今回の契約内容で、自分たちの努力でなんとかできるかもしれないというところには来ることができました」

今年、開催30回。ホンダとしての”お祝い”

 発表の中でもうひとつ驚かされたのが、今年の日本GPのタイトルスポンサーに、ホンダが就任したことだ。これについて山下社長は、次のように説明する。

「ホンダとは、(鈴鹿でのF1日本GPの)30回記念大会を共に盛り上げるための議論をしていました。その中にタイトルスポンサーの話は入っていませんでした。でもある時点でタイトルスポンサーの話になったのです。ホンダとしては、これまで来ていただいたお客様に対する”感謝の表し方”だということです」

「開催30回に対する、ホンダとしてのお祝い、そういうスタンスです。そして今年のトロフィーは、ホンダが用意することになっています」

「ただ、ホンダのタイトルスポンサーは今年限りです。それは明確に言われています」

 ホンダの山本雅史モータースポーツ部長は、タイトルスポンサー就任の会見で「様々なコンテンツを検討する」と発言した。これについて山下社長は「詳細はホンダに聞いてほしい」と話したが、ホンダに関連したものが展開される予定だと言う。

 なおほぼ同時期に、メルセデス・ベンツも、来季ドイツGPのタイトルスポンサーになることが決まった。しかし、この2社のタイトルスポンサー契約は、お互いに全く関係ない話だったようだ。

「(ドイツGPやメルセデスとの)すり合わせなどは全くしていません。想像でしかないですが、おそらく契約の構造なども全く違うと思います」

鈴鹿サーキットはチャレンジし続けなければいけない

 契約を延長したことの感想を最後に改めて尋ねると、山下社長は表情を引き締め、次のように語った。

「正直に申し上げると、来年以降3年間、当社及び当社の社員は、チャレンジし続けなければいけません。それは大変なことです。でもその結果、得られるものはあるという枠組みはできたのかなと思います」

「実現できるかどうかは我々次第ですが、我々のメンバーは、それを実現させるだけの力を付けつつあると思います」

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