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私を虜にしたニキ・ラウダ:motorsport.com編集長日記

5月20日に逝去した伝説的F1チャンピオン、ニキ・ラウダに思いを寄せる。

 Niki Lauda, Ferrari 312T2

写真:: Sutton Images

 新緑の5月にしては鬱陶しい雨と風が東京を襲った日に、哀しい報告が届いた。火炎の大事故から不死鳥のように甦り、3度の世界チャンピオンに輝き、航空会社まで設立し、自らパイロットとして操縦桿を握ってきたニキ・ラウダの訃報が届いたのだ。ショックで心が少しザワついた。

 私がF1グランプリの取材を本格的に始めたのが1977年だから、ラウダがニュルブルクリンクの事故で大怪我を負った翌年だ。当時、事故からすでに1年近く時間が経っていたのに、ラウダに関する武勇伝でF1界は持ちきりだった。死線を彷徨った事故から数週間後には頭に包帯を巻いたままレース(イタリアGP)に復帰し、そのレースで4位に入賞している。鋼の意志を持った男としてメディアが取り上げていたのを思い出す。

 鋼の意志とはレースに対する揺るぎない姿勢を指すが、実は私は76年の末にその姿に遭遇している。富士スピードウェイで初めて開催されたF1日本グランプリ(F1イン・ジャパン)。豪雨に見舞われ、スタート時のコンディションは最悪。このレースでジェームス・ハントとのタイトル争いに決着をつけるはずのラウダは、危険すぎると僅か2周でレースを棄権した。その決断に賛否両論渦巻いたが、ラウダは意志を曲げなかった。数ヵ月前のニュルブルクリンクでの事故を経験した彼ならではの決断だろう。

 しかし、この話には落ちが付く。早々にサーキットを離れたラウダは、空港へ向かうクルマの中でハントが3位に入ってその年のチャンピオンを決めたことを知り悔しがったという。ハントが5位以下ならそれまでの成績からラウダが無条件にチャンピオンに輝くはずだった。”あいつが3位に入るなんて”と言ったとか言わなかったとか。

 翌77年、ラウダは2度目の世界チャンピオンに輝いている(1度目は75年)。その後79年限りで引退して航空会社を立ち上げるも、82年には復帰して84年に3度目のチャンピオン・タイトルを獲得している。

 こうして彼の経歴を辿ると、その偉業に脱帽するしかないが、実は現役時代のラウダに関して、個人的な記憶はあまりない。存在自体が近寄りがたかったのかもしれない。そのラウダと言葉を交わすようになったのは彼が現役を引退し、フェラーリのアドバイザーに就いたりメルセデスAMG・F1チームの非常勤会長に就任してからだ。現役時代は近寄りがたかった存在も、引退してからは垣根が突然取り払われたようになり、気軽に(というほどではないが)声を掛けられるようになる。ラウダもそのひとりで、様々な機会に話が弾んだ。ただ、私たちの年代になると話題は病気の話が多かった。確か、ラウダは肝臓の移植もしていたかと。

 現役中、引退後を通じてインタビューも何度か行った。以前編集を担当していた「F1俱楽部」という雑誌でインタビューを行った(1995年Vol.4)ときは、次々と興味ある答を発してくれ、私は虜になった。答は実にストレートで、歯に衣を着せない。そのインタビューの中で印象深い個所があるので再録する。

ーー速く走るためには何が必要なんでしょう?

ラウダ:「それは才能だ。まず才能があること。ある人は絵を描く才能があり、ある人は歌う才能があり、またある人はクルマのことを感じ取る才能がある。そういうことだ。クルマの運転で最も重要なことは、ケツと脳ミソがいかに素早くリンクできるかということなんだ。レーシングカーを運転しているときは、クルマの動きを出来るだけ早くケツで感じとって、脳ミソで素早く動きを修正して、速く走らせるんだ。速い運転が出来るってことはそういうこと。これがもっとも大切。才能がないんだったら、家に帰っておとなしくしていた方がいい」

 最近は、といっても去年だが、体調が優れず、入退院を繰り返していた。しかし、まさか亡くなるほど危険な状況であるとは思いもよらなかった。それにしても70歳は若い。これから先、まだまだ何でも出来るというように見受けられたが、ラウダは自らやるべきことはやり尽くしたのかもしれない。

2019年5月21日・火曜日

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