1万2000回転までキッチリ回せ! ハイブリッドによるアシストが消え、難しくなるF1のスタート。各チームはどう対処するのか
2026年のF1では、新規定のパワーユニットがレースのスタートをより難しくすると予想されている。各チームは今後、どのように対処していくことになるだろうか。
車体とパワーユニット(PU)が刷新され、新時代を迎えた2026年のF1。バーレーンでの公式プレシーズンテスト1回目を終えて、次回のF1委員会で議論されるであろうテーマが浮き彫りとなった。それが“スタート”だ。
新規則下のパワーユニットでは、ターボを適切な作動領域に入れるため、エンジンを長時間にわたって非常に高回転まで回す必要があり、スタートがより難しくなっている。この問題は、開幕戦オーストラリアGPを前にチームがレギュレーション面での介入を求める段階にまで達している。
これまではドライバーがスタートに向けた準備を行なう際、ターボチャージャーと同軸に繋がれているMGU-Hが加速をアシストしていた。MGU-Hは熱エネルギーを電気エネルギーへと変換する役割を担う一方、バッテリーに貯まった電力を使ってターボを回すことで、エンジンに過度な負担をかけることなく、素早く必要な圧力まで到達させる役割も担っていたのだ。
しかし2026年からのPUではこのMGU-Hが廃止に。ターボを回すための外部のエネルギー源は存在しなくなった。つまり、今やその役割はエンジンのみに委ねられており、十分なスタートを切るにはエンジンを高回転で長時間回す必要がある。
バーレーンテストで行なわれたスタート練習では、スタート手順に入ってから実際に発進するまで10秒……もしくはそれ以上かけてエンジンをふかしていた。これは理想的な回転数を探るため各チームが様々な実験を行なっていることも関係しているだろう。同じドライバーでもスタートごとに大きなばらつきが見られ、エンジニアはターボ側の準備ができるまでどれだけエンジンを回すのが最適なのか探っている。もっとも、これは内燃機関として明らかに望ましい状態ではない。
データを見ると、テスト3日目最後に行なわれたスタート練習では、メルセデスのアンドレア・キミ・アントネッリのエンジン回転数が13,000rpmに達していた。これは極端な例だが、多くのマシンは平均して12,000rpmをやや上回るあたりで安定している。参考までに言えば、これらの回転数は昨年までの旧PU時代では最大出力時にのみ到達していた数値であり、スタート時に出すようなものではなかった。
以前はMGU-Hの助けにより、スタート時の回転数は大幅に低く、メーカーによって異なるものの平均9,000〜10,000rpmの範囲に収まっていた。そのため現在、事前に回転数の範囲を定める案などが提案されている。
現在はMGU-Hが廃止されたとはいえ、ハイブリッドの機構は言うまでもなく残されている。それが運動エネルギーを回生するMGU-Kだ。しかし現行規則において、グリッド上で停止している状態では、信頼性上の理由などの特例を除いて、MGU-Kから電気エネルギーを放出することは禁止されている。電動モーターは時速50km未満では使用できないため、スタート準備や実際の発進はさらに難しくなっている。
したがって、スタート時のMGU-Kの使用を認めることもひとつの案として考えられる。ただそうなった場合、貴重なエネルギーを費やしてしまうことになるため、スタート直後のストレートではパワー不足に陥る可能性がある。
マクラーレンのオスカー・ピアストリもこのような状況を憂慮しており、「昨年はスタートの良し悪しといっても、少しホイールスピンするかリアクションタイムが遅いか程度だった。でも今年は、F2のレースのようにアンチストールに入ったりするかもしれない。単に5メートル遅れるという話ではなく、失敗すれば6〜7ポジションを一気に失う可能性がある」とコメントしている。
現時点で各チームは設定された回転数の範囲内で手順を進めているが、実際にシグナルが消灯した瞬間に万全の状態が整っているかどうかは未知数だ。
メルセデスのジョージ・ラッセルはこう語る。
「今は決められた範囲内で手順を確認していて、発進できる状態に入ったときだけ発進している」
「でもレース本番では、ライトが消えたら行くしかない。自分のターボが理想的な状態になるのを待ってはいられない」
さらに今年はギヤ比も変更される。ドライバーはコーナーでより低いギヤを使い、ターボラグを抑えつつバッテリーを充電する必要がある。たとえそれによって燃費が悪化してもだ。バーレーンではPUメーカーごとに大きく異なるアプローチが見られた。
ラッセルは、フェラーリがライバルより小型のターボを使用している可能性を示唆している。小型であれば低回転域から作動領域に入るまでの時間が短く、スタートで有利になるかもしれない。
レッドブルはギヤ比に関して非常にアグレッシブなアプローチを採用し、低いギヤまでシフトダウンすることで、バッテリーを充電しつつストレート終盤でも最大限エネルギーを活用することを狙っている。一方フェラーリはそこまで極端ではなく、バーレーンでは1速の使用頻度も比較的少なかった。
ラッセルは「他のメーカーがどうなのかは分からない」とした上で、こう付け加えた。
「フェラーリは他より高いギヤを使えているように見える。おそらく小型のターボを搭載しているのだろう。だからスタートに関しては、少し楽な立場にいるのかもしれない
「ただし安全面の懸念さえなければ、の話だけどね。僕たちも、バルセロナ(シェイクダウンテスト)ではおそらく懸念があったけど、その点については大きな進歩を遂げている」
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