F1 ベルギーGP

レッドブルが現在使う旧式風洞は、あの音速旅客機コンコルドの開発にも寄与……ピーキーなマシンの原因はここにあるのか?

レッドブルが苦戦する原因は、70年前に設置されたと言われる超旧式の風洞にあるのか? 元F1エンジニアのパット・シモンズが考察する。

編集: 2025/08/09 11:04

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Red Bull Racing wind tunnel

Red Bull Racing wind tunnel

写真:: Red Bull Content Pool

 2021年から2024年まで、4年連続でドライバーズタイトルを獲得、そのうち2年はコンストラクターズタイトルをも獲得したレッドブル。しかし2025年シーズンは大いに苦しみ、第14戦ハンガリーGPを終えた段階でコンストラクターズランキングでは4番手、マックス・フェルスタッペンのドライバーズタイトル5連覇も、難しくなりつつあるように見える。

 レッドブルのマシンは、年々扱いが難しくなっていると言われる。フェルスタッペンこそなんとか乗りこなしてきたが、昨年中盤戦以降はセルジオ・ペレスが苦しみ、今季から開幕2戦はリアム・ローソンがまったく乗りこなせなかった。ローソンの後を受け継いでレッドブルのシートを手にした角田裕毅も、ポイントを獲得するレースもあったが、それでもフェルスタッペンと同レベルの活躍ができているとは言い難い。

 レッドブルのマシンがそれほどまでに気難しくなった理由については、いくつかの推測が語られている。エイドリアン・ニューウェイなど、これまでチームの屋台骨を支えていた人材が流出したからだというのが、最も声高に言われていることではあるが、もうひとつ主な原因ではないかと言われているのが、彼らが使っている風洞設備である。

 レッドブルの風洞は、1950年代に建設されたもの。今や70年も前の冷戦時代の代物だ。

「レッドブルが使っている風洞は、第二次世界大戦後に設立された王立航空研究所の跡地にある」

 かつてベネトンやウイリアムズなどでエンジニアとして活躍した、パット・シモンズはそう語る。

「敷地内には多くの風洞があったが、その中の13フィート×9フィートの風洞を、現在もレッドブルが使っている」

 この風洞は、超音速旅客機コンコルドの風洞実験でも使われたものだという。

Concorde

Concorde

写真: Philippe Collard / Unsplash

「風洞の寸法とは、実験用の模型が設置される作業セクションの幅と高さを指す。理想的には、模型の後方や横方向に発生する後流が、風洞の壁と干渉しないようにする必要がある」

 シモンズ曰く、この風洞には当初から、地面が動くように”ローリングロード”と呼ばれるベルトが取り付けられており、これにより航空機の離着陸時の空力性能を試験していたという。しかし現在は、このローリングロードがリニューアルされて、F1マシンの実験に使われている。そのほか、様々なシステムが最新のものに置き換えられている。

「風洞の主要な部分は、レッドブルによって置き換えられていて、最先端のモノとなっているだろう」

 ただ古い風洞で難儀するのは、その気温をどうするかということだ。レッドブルの風洞はコンクリート製であり、熱のコントロールという面では欠点がある。

「模型の周りを通過する空気の質について考えねばならない。これには一貫性が求められる。作業エリア全体で気流速度が一定であること、乱流が少ないこと、静圧が一定で境界層が薄いことが求められる」

 そうシモンズは説明する。

「1回の風洞実験を行なう間、常に同じ気温に保つのは非常に難しい。また、冬と夏で同じ気温を維持するとなればなおさらだ」

「良質な風洞であれば、それは比較的容易だ。さらに、気温を一定に保つのは簡単ではない。風洞内部の空気を動かすファンの駆動力は、速度が上昇すると熱に変換されてしまうからだ」

 気温が変わると空気密度が変わってしまい、計測される空力効果も正しいモノにならない可能性もある。

 シモンズはさらに、次のように続ける。

「確かに今の風洞は、理想的ではないかもしれない。しかし特に欠点があるわけではない。新しい風洞を建設すれば、改善できる点は多くなる」

 ただこれらが真の原因ということではないかもしれない。レーシングブルズも、レッドブルと同じ風洞施設を使っているものの、VCARB02はRB21のように扱いにくいマシンにはなっていないからだ。

 シモンズはこう締め括った。

「VCARBのマシンは、RB21ほど圧倒的な空力性能を備えていないかもしれない。しかし一見すると、良好な空力特性を持っているように見える」

「新しい風洞は良いモノだ。しかしレッドブルは、他の選択肢を検討する必要があると思う」

 レッドブルは、現在新しい風洞施設を建設中。ただ稼働するのは2026年からと言われる。新風洞が完成すれば、現在の問題の一部を解消することに繋がるだろう。しかしそれだけが全てではないのかもしれない。

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