ラッセル、アントネッリとの激戦経て現行PU擁護「あんなデュエルを実現するのはこの新しいPUだけ」
メルセデスのチームメイトバトルは、カナダGPを大いに盛り上げた。ジョージ・ラッセルはこのバトルを作り出したPUの規則をなぜ変えるのか理解できないという。
Andrea Kimi Antonelli, Mercedes, George Russell, Mercedes
写真:: Alastair Staley / LAT Images via Getty Images
メルセデスのジョージ・ラッセルは、カナダGPでチームメイトのアンドレア・キミ・アントネッリと激しいバトルを繰り広げた。ラッセル自身はマシントラブルにより決勝リタイアに終わったものの、この激戦を生み出したパワーユニット(PU)規則が変更される予定であることに異議を唱えた。
F1史上最大とも言われる2026年のレギュレーション変更は、開幕以来物議を醸しているが、すでに来季は電気エネルギーへの依存度を下げる方向性で調整することに原則合意がなされている。エンジンとモーターの出力比率を50:50から60:40へと変更することで、現状の問題点がある程度解決されると見られているのだ。
一方で、今季のレギュレーションはマイアミGPを前に一度調整されている。FIAは当初、予選での懸念には対処する必要があると判断した一方で、レースに関しては介入しないことを望んだ。50:50のパワーユニット(PU)が数多くのオーバーテイクを生んでいたからだ。
オーストラリアGPでは、ラッセルとシャルル・ルクレール(フェラーリ)の激しい攻防が繰り広げられ、中国GPでは、2台のフェラーリによる内部抗争が繰り広げられた。そしてカナダGPでも、メルセデスのドライバー同士による一騎打ちという、同じ構図が再び展開された。
この戦いは観客を熱狂させ、ある意味ではラッセルとアンドレア・キミ・アントネッリ自身をも”熱く”させた。もちろん、いくつかの物議を醸す出来事もあったが。
George Russell, Mercedes
Foto di: Guido De Bortoli / LAT Images via Getty Images
しかしながら、これらのグランプリすべてに共通する要素が一つある。それは、マシンのエネルギー面における制約によって、これまで以上に、長時間の激しいバトルを可能にしているということだ。前述したように、カナダGPはエネルギー回生に関して最も厳しいレースの一つであり、予選では1周あたり6MJまでエネルギー回生量が引き下げられたほどだった。
奇妙に思えるかもしれないが、予選においてエネルギーマネジメントが最も難しいグランプリの一つであるにも関わらず、レース中のマネジメントははるかに容易だった。なぜなら、4つの連続したストレートがあったにもかかわらず、ブレーキング距離が長く、1周あたりに回生できるエネルギー量が多かったおかげで、ストレートでバッテリーを有効活用する機会が依然として残されていたからである。
これは、カナダGPにおける追い越しが他のサーキットに比べて「不自然」に感じられなかった要因の一つであり、バトルをしているマシンの速度差が小さかったことも一因となっている。
もちろん、今のPUでは避けられない人工的な要素は依然として残っている。しかし、レース展開が予測不可能であることこそ、F1が特に一般大衆の目から見て目指していたことなのである。
ラッセルはレース後、チームメイトと激しいバトルを繰り広げたことについて言及した。
「気に入ったよ。最高だった。あんなバトルはここ数年なかった。2014年のバーレーンGPでのルイスとニコ(ロズベルグ)のバトル以来、あんなデュエルは見たことがないね」
「だけど今の新しいマシンはそれを可能にする。新しいエンジンがそれを可能にしているんだ。メルボルンでは素晴らしいデュエルがあったし、中国でも素晴らしいバトルがあった。キミと僕は今日と昨日、素晴らしいデュエルを繰り広げた。それはすべて、新しいPUのセッティングのおかげで可能になったことだ」
Andrea Kimi Antonelli, Mercedes, George Russell, Mercedes
Foto di: Steven Tee / LAT Images via Getty Images
ただ、ラッセルが公平な比較をしているとは言えないだろう。これまでの数戦で見られた追い越しの多くは、充電状態が大きく異なるために起こる、批判の的となっている「ヨーヨー」現象に分類されるからだ。実際、オーストラリアでも、バトルの決定的な瞬間にエネルギーが枯渇し、明らかにスーパー・クリッピング状態に陥るマシンが何台も見られた。
ラッセルが例に挙げた2014年のバーレーンGPは、使用していたタイヤが異なっていた他、ふたりが当時、異なるエンジンマッピングを使用していたことも明らかになっている。
ただ、どちらも新しい技術規則が導入されたシーズンに、それぞれのPUをめぐる不満が相当高まっていた時期だったというのは共通点だろう。
V8のNAエンジン+KERSというパワートレインから、V6ターボにMGU-HとMGU-Kを含むハイブリッドシステムを組み合わせるPUに変わった2014年当時、多くの人が信頼性の低さに懸念を示しており、テスト走行中にはピットから出ることさえ困難な車両もあった。
しかし当時も現在も、ドライバーたちはこれらのPUの複雑さを強調しており、2013年まで使用されていたKERS搭載のV8エンジンと比べると、概念的に大きな飛躍であると述べていた。
ラッセルの擁護があっても、F1の流れは止まらないだろう。中には少なくとも2028年まで変更を延期すべきだというメーカーもあるが、メルセデスも”60:40”化への動きを支持している。
そして長期的に、2031年までにPU規則は再び大幅な変更に直面することになるはずだ。今よりも小規模なMGU-Kを備えた、V8エンジンへの回帰がほぼ確実視されているのだ。
しかしF1の歴史が示すように、そうなったとしても追い越しを成功させるための何らかの補助手段が必要であり、レースが今日のような活気に満ちたものになる保証はまったくない。DRSの効果がほとんどなかった昨年までの状況を見ても、それは明らかだ。
F1カナダGPは、批判の多い現行PUから学ぶことは残っているという事実を浮き彫りにしたのかもしれない。
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