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F1は再び、走る実験室になる……”時速300km”で切り開く、自動車の未来

2026年からのF1では、100%カーボンニュートラル燃料を使うことが義務付けられる予定だ。このカーボンニュートラル燃料は、EVと並ぶ自動車の未来を支えるかもしれない。その普及に向け、F1をはじめとしたモータースポーツが、”走る実験室”の場を担い始めている。

昭和62年にアイルトン・セナが乗ったロータス99Tと、令和5年にマックス・フェルスタッペンが走らせるレッドブルRB19。いずれもエンジンはホンダ製

写真:: LAT Photographic

 ブームから約35年。F1が今再び、「走る実験室」としての脚光を浴びつつある。

 ホンダエンジンを搭載する黄色いロータスに、新進気鋭のアイルトン・セナと、日本人初のフル参戦F1ドライバー中嶋悟が乗り、テレビでの全戦中継が開始、日本GPも復活した……昭和62年は、日本におけるF1の歴史を語る上で、なくてはならない年である。

 セナはその後ホンダと共にチャンピオンに輝き、中嶋に続き鈴木亜久里、片山右京と、日本人ドライバーが次々にF1の世界の門を叩いた。F1の人気は年々加速していった……F1ブームの到来である。

 ドライバーたちの人気もさることながら、F1は「走る実験室」とされ、注目を集めた。

「走る実験室」と最初に言ったのは、ホンダ創業者の本田宗一郎。その本来の意味は「レースで走ることで、市販車の技術を向上させよう」というモノだったはずだ。しかしF1をはじめとしてモータースポーツは、レースのための技術開発に腐心しすぎたという傾向もあったように思う。市販車には活かせない重箱の隅を突くような開発……勝つためにはそれが必要であり、市販車の技術とは乖離する部分も多くなっていった。

 ただ近年のモータースポーツは、再び走る実験室としての役割を取り戻そうとしている。

■自動車が進む先はEVだけではない?

電気自動車のF1こと、フォーミュラE

電気自動車のF1こと、フォーミュラE

Photo by: Alastair Staley / Motorsport Images

 今や地球温暖化への対策としてカーボンニュートラル化が急務だと叫ばれている時代。自動車はエンジンで化石燃料を燃やして多量の二酸化炭素を排出するため、業界は真っ先に槍玉に上げられた。そして世界中が電気自動車(EV)へのシフトを打ち出し、エンジン車の販売を禁止する方針を打ち出した国もある。

 モータースポーツもその流れには逆らえず、EVのF1とも言われるフォーミュラEが誕生し、多くのメーカーが参入した。F1もハイブリッド化を果たし、環境への配慮を見せたが、それでは不十分だと言われた。

 ただし、すべての自動車をEVとするのも性急すぎた。EVで使う電力を火力発電に頼っていては元も子もないし、バッテリーの製造やリサイクルのことを考えれば、期待されたほどの二酸化炭素排出量を達成するのも簡単ではない。インフラ面でも、充電設備は増えてはきているもののまだ十分な数とは言えないし、フル充電するには時間がかかる。そもそも、現在世界中で走るすべての自動車を電気自動車に置き換えることが可能なのかという問題もある。

 そこでカーボンニュートラル実現に向け、もうひとつの選択肢と目されているのが持続可能燃料だ。その持続可能燃料の開発に、F1をはじめエンジンを使うモータースポーツが寄与し始めている。

■モータースポーツが切り開く、自動車の未来

2026年からカーボンニュートラル燃料100%を使うことになるF1

2026年からカーボンニュートラル燃料100%を使うことになるF1

Photo by: Erik Junius

 持続可能燃料は人為的に合成された、ガソリンと同じように使える燃料のこと。究極的には、水と空気があれば作り出すことができる、まさに霞を食べて生きる仙人のごとき燃料だ。

 ガソリンは地中深くから掘り出してきた、太古の生物や植物由来の化石燃料、つまり原油を精製したもの。これを燃やすと、何億年も前に生物や植物が体内に取り込み、地中深くに封印されていた炭素が大気中に戻ってしまうため、二酸化炭素量が増えて地球温暖化につながる。持続可能燃料も燃やせば二酸化炭素を大気に放出することになるが、そもそも原料が大気中の二酸化炭素であるため、その総量は増えない……つまり±ゼロとなり、カーボンニュートラルに貢献できるわけだ。しかも、成分的にはガソリンと同じモノを作ることができるため、既存のインフラ、既存の車両でそのまま使うことができるのだ。

 当然課題もある。水から水素を分解する際には電力が必要だし、それも含めて現時点では製造コストが非常に高い。そこに登場するのがモータースポーツである。

 モータースポーツで使うこととなれば、ある程度の量が必要となってくる。そのためには早く、効率的に持続可能燃料を作れるようにならなければいけない。効率的に作れるようになればなるほど、製造コストを引き下げる道筋につながるはず。持続可能燃料をよりうまく使うための、エンジン側の開発も進んでいくことだろう。

 すでに持続可能燃料の使用を開始したシリーズもあるが、F1は2026年からこの持続可能燃料100%で走ることが義務付けられることになっている。

■F1だからこそ、脅威の開発スピード。実現へ近づく最短ルート

カーボンニュートラル燃料を先行投入したマシンで2021年のチャンピオンに輝いたマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

カーボンニュートラル燃料を先行投入したマシンで2021年のチャンピオンに輝いたマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

Photo by: Zak Mauger / Motorsport Images

 勝たなければいけないF1。その技術開発のスピードは非常に速く、市販車の開発とは比べものにならないほどだ。その速さで持続可能燃料の開発も進んでいけば、自動車産業に大きな福音を授けることになるだろう。

 しかもこの2026年からは、F1のパワーユニット(エンジンとハイブリッドシステムを総合しての呼称)で扱う電力量が増えるため、電動化の技術開発に寄与することもできる。持続可能燃料と電動化、ふたつの開発を同時に行なうことができるのだ。しかも前述のとおり、“勝利のために”迅速な開発を強いられる……EVの性能も、急進的に進歩していくかもしれない。

 そんな次世代のF1には、多くの自動車メーカーが注目している。アウディは同社の歴史上初めて、F1に打って出ることを決めた。またフォードはレッドブルと組んでF1に復帰……彼らは電動化技術を開発する場として、F1を使いたいようだ。

 また2021年限りでF1を撤退したホンダも、F1復帰に向けた予備的な登録を済ませた。ただホンダはフォードとは異なり、”電動化の部分だけやる”という関わり方には消極的。エンジンも含めたパワーユニットのすべてを開発することを見据えて予備的な登録をしたと、ホンダのレース活動を担うHRC(ホンダ・レーシング)の渡辺康治社長も断言している。

 しかもホンダは、F1活動最終年の2021年に、使用義務のないカーボンニュートラル燃料を先行して実戦投入していた。ライバルの一歩先を行っている。しかもこの燃料は、燃料メーカーに開発させたわけではなく、ホンダ内で開発していたというから驚きだ。

 またホンダは飛行機も製造・販売している会社であり、この飛行機にカーボンニュートラル燃料(SAF)を使うというプロジェクトも進行している。航続距離の長い飛行機のエネルギー源としては、エネルギー密度の高い液体燃料が適しており、F1での開発はこの航空機燃料の開発にも転用することができるはずだ。

 F1は今また”走る実験室”となり、未来のモータリゼーションを支える技術を開発するための場となりつつある。もしかしたらF1の担う重責は、選手権が立ち上げられて以来最も大きいかもしれない。

 昭和に換算すると101年となる2026年、F1が自動車の未来を担う新たな時代を迎える。

(この記事はmotorsport.com 日本版とYahoo!ニュースによる共同連携企画です)

 
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