佐藤琢磨「応援したくなる、魅力的なドライバーが育つ過程を手伝いたい」

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佐藤琢磨「応援したくなる、魅力的なドライバーが育つ過程を手伝いたい」
執筆: 田中健一
2018/11/08 10:30

鈴鹿サーキット・レーシングスクールのカート部門、そしてフォーミュラ部門のPrincipalに就任した佐藤琢磨が、その重責についての思いを語った。

 佐藤琢磨が鈴鹿サーキット・レーシングスクール(SRS)のカート部門(SRS-K)とフォーミュラカー部門(SRS-F)のPrincipalを務めることになった。25年の歴史を数えるSRSの、再出発とも言える。

 佐藤が率い、そして中野信治がVice Principalとしてサポートする新生SRS。佐藤はどんな未来、そして育成プランを思い描いているのか? 話を訊いた。

「これまで、SRSは日本のモータースポーツやホンダに大きく貢献してきました。僕もSRSを卒業して、その後の後輩たちの中にも非常に優秀なドライバーがいます」

 そう佐藤は語る。

「しかし、海外や世界で活躍できるドライバーは、この25年の中で数えるほどしか出てきていない。その現状を変えたいというお話をホンダさんからもらった時、現役ドライバーの僕にはできないこととできることがありますが、精一杯サポートしたいと思いました」

「僕と中野さんという現役ふたりをトップに持ってくることで、カリキュラムも含め、今までやってきたことを一歩引き上げ、そしてサポートしていきたいです。僕らなら、今のレースの世界を、ダイレクトにお伝えできるのではないかとの思いもありました」

「僕もまだ一生懸命現役をやっていますけど、後進のこともずっと気になっていました。次の、すぐにバトンを渡せるドライバーもそうですし、その先にいる子たちがいかにして今後のホンダや日本のモータースポーツを支えていくか、そこに貢献したいと考えたのです」

 佐藤は、現状を打破するための”方程式”は無いとしながらも、人間力を培うきっかけを与えたいと語った。

「これをやったら(世界に)行けるという方程式は無いです。ある程度のきっかけは作れるかもしれないけど、最後は本人の気持ちや、人間力だと思います。マシンをコントロールする能力は、教えられる部分もありますが、自分で吸収するしかありません。たくさん失敗して、自分で考え出さなきゃ分からない……そのためのスクールです。そして最後(に大切なの)は、転んでもただでは起きないという人間力だと思います」

「僕も中野さんも、成功した部類ではありますが、それでもたくさん挫折してきました。もうダメかもしれないと思った時でも、絶対道はあるはずだともがき苦しんできました。今もその最中です」

「大切なのは”腕”だけじゃないです。訴えかける力とか、求心力になれる力。今のルイス・ハミルトンを作ったのも、環境だと思うんですよね。そういう意味で、速さ、強さ、人間的な魅力を培える環境を与えてあげて、次世代を担えるドライバーが、SRSから出て欲しいなと思います」

 F1にも10代のドライバーが参戦するようになるなど、近年は若年齢化が進んでいる。佐藤も若年化が進む可能性は認めつつも、20代のドライバーにもチャンスを与えたいと語る。

「年齢の話をすれば、僕は20歳でSRSに入ったので、最後発なんです。でも、20歳から始めたって、F1まで行けるんですよ。もちろん、小さい頃から経験を積んだドライバーの可能性が大きいのは分かりますが、それだけじゃない。人間力を培うには、いろいろな経験を積まなきゃいけませんから、一番上の年齢だからといって、切りたくはないです」

「とは言え、SRS-Kは11歳から始めることができますから、一種の教育の場にもなります。『あの子は、ちゃんと将来のことを考えて、しっかりやってるよね』と言われるような生徒に育って欲しいですよね。そこからアドバンスクラスに上がって、SRS-Fに16歳くらいで上がって、そのままヨーロッパに行く可能性があるわけで……そうすれば今の(世界の)潮流と全く変わらないですよね」

 佐藤は自身の活動として、TAKUMA KIDS KART CHALLENGEと題し、小さな子供たちにカートやモータースポーツの楽しさを教える取り組みを行っている。その主題は東日本大震災の復興支援だが、この活動とSRSの繋ぎ込みも、やってみたいと語る。

「このチャレンジ(TAKUMA KIDS KART CHALLENGE)は、経験を0から1とか、1を2にするとか、そういうところです。SRS-Kになるとそのレベルは8とか9ですから、その間の繋ぎをどうするのか……それが課題なんですが、もちろんやってみたいですね」

 佐藤が見据えるのはF1なのか、それとも自身が現在参戦中のインディカーなのか? それについて佐藤は「全然決めていない」と語る。

「それについては全然決めていません。生徒本人がF1に行きたいと言ったら、『おおっ! 大変だぞ。でも目指すなら目指せ』と言います。すごく狭き門ですからね。そういう意味では北米の方が可能性は広がりますが、結局僕の後は誰もいないわけで……インディも簡単じゃないんですよ。だからそこは、選択肢を広げてあげたいと思います」

 どんなドライバーを育ててみたいか? そうぶつけると、佐藤は次のように語った。

「しっかりと自立して、自覚して、こっちが応援したくなるような、魅力あるドライバーを育てたい。育てたいと言うとおこがましいですが、そういうドライバーが成長していく過程を、最大限お手伝いしたいなという気持ちです」

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この記事について

シリーズ F1 , IndyCar
ドライバー Shinji Nakano , 佐藤 琢磨
執筆者 田中健一
記事タイプ インタビュー